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それは大丈夫じゃ

 目に視えないものだから信じてくれと言っても難しい。ならば証拠を示すしかない。だが、今の私に出来る事と言えば、カッチカチやぞカッチカチくらいか。

 カッチカチを示すとして、どうしようか。

 自分で自分を攻撃となると、ギリギリの寸止めとか、ぶつかる瞬間に力を弱めるとかそういった類のもの、良くて一発芸みたいな感じに受け取られてしまうだろうか。ならば、思い切ったもの、包丁とかで自分を刺してみるとか?


「止めとくのじゃ。おぬしはまだ未熟じゃから身体強化は常時防御力向上、これはおぬしの言うカッチカチの事じゃな、それくらいしか使えぬ。まだ攻撃力の強化はしようと思っても発動できぬじゃろう。じゃが、未熟じゃからこそ、発動しようと思っていなくとも攻撃力強化が発動してしまうこともあるやもしれぬ。包丁を自分にぐさっとぶっ刺してしまう可能性もあるのじゃ。」


 ぐげっ!

 それは、ヤバい……。

 カッチカチにはリジェネっぽい追加効果もあるけど、痛いのは嫌だ。

 ……では、誰かに私を攻撃して貰うか?となると、姉一択だ。姉ならば普通に引き受けてくれるだろう。ただ、姉が手を痛めてしまうかもしれない。私を殴るにしても、棒か何かを使うにしても。いきなり全力で殴ってくる事はないと思いたいが、徐々に威力を上げて殴ってきたとしても、やはり姉の手の方にダメージがいくだろう。それに流石に普通ならば怪我を負うレベルの攻撃はたぶん姉にも出来ないだろうから、やはり証明となると難しいか。

 チェンソーや草刈り機を使うか?うーん、私が怪我を負わず、血が出なくても、視覚的に非常にマズイ光景となるだろう。精神衛生上良くないものを見せる事になるだろう。あと、チェンソーか草刈り機の刃が使えなくなるくらいならまだしも、弾け飛んでしまったら、近くで見ているはずの家族が危険となる。


「その、じゃな……。もし、そのカッチカチを見せて証明する事が出来たとしてじゃな……。それは、おぬしがビックリ人間という証明であって、霊力について信じさせる証明には些か弱いんじゃなかろうかの……。」


 あ……。

 そうか、私が霊力があるからカッチカチになっていると言っても、霊力とカッチカチがイコールで結ばれる、とならないもんね。霊力に目覚めた私でも解ってないのに、霊力に目覚めていない人に解れと言ってもい言うのは理不尽だよね。

 ……その、忠告してくれて、ありがとう。


「おぬしはたまにおかしな方向へ真剣に考え事をする事があるのじゃ。」


 そ、そうなんだ……。 


「ま、まあ、おぬしが考えている内容を解るのは、おぬしに入っている妾だけなんじゃし、良いと思うのじゃ。だから気にするでないのじゃ。その、おかしな方向なんて言って、すまぬ。」


 うん。良いさ。……本当に良いね!


「あ、落ち込ませてしまったかと思ったのじゃが、なんだかどんどん喜びに変化しておる。おぬしは……ほんに業が深い。」


 ありがとうございます!!

 ……話を戻すけど、そうだね、霊力の事を信じてくれたとしても、『視える』と『視えない』の差がでてしまう。

 それが、私が冗談で言った可能性を少しでも残しただけで、私が「『絶対』他では口にしないでね。」と伝えたとしてもその『絶対』の意味も変わってしまう。もちろん私の家族はわざわざ言いふらしたりしない人たちではあるが、向こうの家族や親戚の集まりで近しい人になら、ちょっとした話題として『私』の事だとは言わずに話してしまうかもしれない。匿名の掲示板に書き込むとかならバレないし良いだろと気が緩む事もあるかもしれない。


 春姫ちゃん、わかりました。家族に伝えるのは諦めました。妖精がバレる可能性を広げるのは理解しました。それに家族からしたら、いきなり目に視えない理解し難い事を信じろと言ってきて、それを絶対に他で口にするな、ですからね。「こいつ何言ってんだ?」「そこまで秘密にするなら、なんでこっちに教えてきたんだよ!」って事になるもんね。


「そこまでは言わぬが……。霊力の業界には、たまにじゃが異様に勘の鋭いやつがいるんじゃ。じゃから、今は、の……。いずれ、警備の体制を確率して、おぬしも霊力の知識や扱いを身に着けたなら……。家族に伝えるならばそれからにしてくれると助かるのじゃ。」


 はい。そうします。

 早く必要な事を身につけられる様に頑張ります。


「うむ。すまんの。」


 いえいえ!私個人のワガママだったので、謝らないで下さい。自己満足なだけで、家族にも、私を護ろうとしてくれる春姫ちゃん達にも迷惑が掛かる所でした。

 申し訳ございませんでした。


「おぬしにとっては、今までの常識と違う見知らぬ世界の様なものなのじゃ。深く考えようにもその土台ごと違ってくるのじゃ。……何かあっても、妾に対し、改まることも謝ることもしなくても良いのじゃ。」


 でも、あの、あーうー……わかった。

 ありがとう、春姫ちゃん。


「うむ!謝ることはしなくても良いが、感謝はどんと来いじゃ!!!」


 うん!

 ありがとう!!!


「くふふふっ。」


 ……そういえばここへ来て結構な時間が経っているけれど、もうご飯が出来ていて私達が起きるのをイズナさんが待ってる……とかになっていたりしない?


「それは大丈夫じゃ。ここはおぬしの夢の中じゃからの。現実ではそれほど時は経っていないはずじゃ。正確に何分とまでは解からぬが、まだ数分しか経っておらぬじゃろ。」


 あ、まだそんなしか時間経ってないんだ。良かった。

 

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