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耳や尻尾をもふれるわけではないぞ?

「まず考えられるのは……公務員にそういった部署がある話はさっきちょろっと話したじゃろ?公に知られた部署ではないが、国の上層部となればやはり皆知っておる。そしてその上層部の殆どは霊力に目覚めているわけではない人間じゃ。国の基本方針としては我ら神域の者と共存共栄を目指すとのことじゃし、我らに対し穏和に接してくるのじゃが……あの者達には派閥があっての。おぬしという妖精の存在が知られればどういう動きをしてくるか解らぬ。組織に取り込むか、派閥に付き合いのある神域に渡そうとするか。場合によっては外交の道具にされる事もないとは言い切れぬ。」


 リボンを巻かれた私が、外国の偉い人にプレゼントされてしまう姿を想像してしまった。

 プレゼントは四十路のおっさん。

 何じゃそりゃという事ではあるが、妖精のレア度はすこぶる高いようなので、可能性自体はあるのか……。


「他の霊力関係組織ならば、もっと露骨におぬしを利用しようとする者も出てくるじゃろう。おぬしを自分達の組織に所属させようとするくらいならまだしも、監禁や人体実験も有り得るかもしれぬ。」


 うわぁ……。


「その方法も直接的なものもあれば、間接的なものもあるじゃろう。相手に霊力があればおぬしにもいずれ感知できる様になるじゃろう。じゃが、霊力に目覚めていない協力者が仕掛けてくるやもしれぬ。その中には霊力の事を知らずに協力している者や、術か何かの手段で操られて仕掛けてくる者もいるやもしれぬのじゃ。」


 ……考えだしたら人間不信になりそうだけど、これからはそれが必要になってくるんだね。


「そうじゃの。……それから、おぬしの周りの人間、家族、親戚、友人が狙われてしまう可能性もあるのじゃ。」


 !!!!!

 そうか。そんな可能性もあるのか。

 それが……、一番、嫌だな……。


「幸い、現時点において、おぬしを妖精だと認識しておるのは妾だけじゃ。里の者もおぬしを目撃してはおっても、霊力が高い人間だからと言ってそれを=妖精と結びつける事はないじゃろう。妖精はあまりにレア過ぎるからの。」


 それは、ひとまず良かった。


「おぬしと関わったのは、妾、タマモ、イズナ、ラス、クロだけじゃ。霊力が強い事以外の、おぬしを妖精に結びつける可能性がある情報は広まっておらぬ。タマモは妾と常に一緒に動いておるし、イズナもこの里の幹部じゃ、問題ない。ラスは自身の名前の事もあり、他人の事をおいそれと話す事は絶対にない。クロはおぬしの霊力どうこうというよりも、車じゃな。車乗って楽しかったという話はしている様じゃが、おぬしらが一緒に車に乗っている姿は短い距離とはいえ、何人もが目撃しておる。中にはイズナ達が人間に誘拐されたと騒いだ者もおっての、おぬしの存在自体と車に乗せてくれるかもしれない、というのは里の中では有名になりつつあるのじゃ。」


 ふおぉ!!!

 いろんな獣耳さん達をとっかえひっかえ車で連れ回すのを妄想してしまった。

 動悸、息切れが治まらない。


「うぅむ。真面目な話からいきなり明後日の方向へ話がすっ飛んでしもたわい。」


 ごめん、本当にごめん!

 いきなりの事で受け止めるのがキツくて……いや、受け止めたくなくて現実逃避しちゃってるんだよね……。

 私の為に話してくれているのに、本当に申し訳ない。


「いいのじゃ。気持ちは解る、というか直に伝わってきているしの。霊力や妖精の事の理解や実感すると共にゆっくり伝えていければまた違ったのかもしれぬが、おぬしが妖精との情報がいつどこで外に漏れるか解らぬ。ならば、おぬしが戸惑うと解っていても今のうちに伝えるべきだと判断したのじゃ。」


 うん。私の事を考えての事だと解っています。ありがとうございます。

 ただ、私の覚悟が足りないだけ。覚悟が決まりきらないだけ。

 ……あっ!


「ん?あぁ、そういう事か。」


 うん、その、あの、春姫ちゃんは、ラスさんの本名の『ラスカル』の由来の事、知ってた……?


「うむ、そうじゃな。我は元々知っておったぞ。」


 そっか、良かった……とはならないよなぁ。

 たまたま春姫ちゃんが知っていたとはいえ、ラスさんの名前のことを広めないと言っておいて、その事をすっかり忘れて記憶読んでもらって興奮してたんだもん、約束を破ってしまった……。


「いや、相手は妾なんじゃし、記憶を見せるなんて普通は重大事件や犯罪者相手くらいのものじゃし、事情も事情じゃ、ラスも気にしないんじゃないかえ?」


 事情を話せばラスさんも許してくれるかもしれない。

 でも、今回は妖精の事もあるけれど、イズナさんへのプロポーズの事もあって記憶を見て貰ったから……。

 イズナさんとの事は考えて、ラスさんの事情に全く配慮しなかったというのは……申し訳なくて。ラスさんとも友人として仲良くなれたらなって思っているから、謝りたい。


「解からんでもないが、見方によってはラスは関係なくおぬし自身の心の問題にも見えるのぅ。」


 うん。実際そうなんだろうと、思う。自己満足なんだろうね。

 ……春姫ちゃんは私のために言ってくれてるんだろうって事もわかる。ありがとう。

 でも、年齢も性別も、生活してきた環境も全く違う相手だから、仲良くなりたいなら真っ直ぐに向き合える自分として相手に接したいんだ。


「何と言うか……若いのぅ。それに、ラスの耳や尻尾をもふれるわけではないぞ?エロい事になっちゃうからの?」


 し、ししし、しないよっ!!!

 妄想はしちゃうし興奮もしちゃうけど、実際にはしないよ!!

 ……私が妖精になったという事、イズナさん、ラスさん、クロに伝えてもいいかな?


「イズナは問題無い。今後おぬしとおぬしの家族に密かに護衛をつけることになるじゃろうし、そのためには幹部連中とは情報共有せねばならぬ。イズナは神使、この里の幹部じゃからの。」


 護衛!?

 それはありがたいです!非常に助かります!!

 ありがとうございます。


「ラスとクロは……。」


 『知っている』ということがラスさんやクロの負担になったりしちゃうかな……?


「いや、ありじゃと思うのじゃ。妖精の近くにいるというだけで恩恵はある。彼女達にも悪い事ではないのじゃ。それにおぬしにとっても、『妖精』に近付いてきたかもしれぬ者よりも、妖精だと知らず『おぬし』に近付いてきた者の方が付き合いやすかろう。」


 それは……うん、そうだね。

 私が自身を妖精だと知る前に出会ったのが彼女達三人とタマモちゃんだったというのは本当に幸運だった。

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