妾の見た目がもう少し若ければ
いや、あの、でも、その、頭によぎりはしたけど、あくまでも楽しいからであって、もふりたいのはついでというか何というか……。
あ、でもこれって、女の子と話すのはおじさん側が一方的に楽しいみたいな感じなのかな……。
「くふふふ、すまんすまん。大丈夫じゃ、わかっておる。ちょっとイジワルして慌てるおぬしを見たくなっただけじゃ。妾にとって、初めての殿方との逢瀬なんじゃ。好きなこにイジワルしちゃう小学生みたいなもんじゃ。許せ。」
それ男子が女子にやるやつだから逆じゃないかとも思うけれど、嬉しいからいいか。
「あとの、妾はおぬしの数十倍の時を過ごしておるでの。おぬしをおじさん扱いするのならば、妾はおばあちゃん扱いされなければならぬの。」
春姫ちゃんの方が圧倒的に年上なのは知ってはいるのだけれど、そのへんの感覚はどうしても視覚情報に引っ張られてしまう。
「妾の見た目がもう少し若ければ、おぬしの大好きな『ロリばばあ』だったのじゃが、残念じゃ。」
ぐほっ。
いきなり何てこと言うんですか!
「電子書籍というんじゃったか?あれで買っておるじゃろ。と―――」
ぐあぁぁぁぁぁあああああっ!!!
それはさすがに私でも恥ずかしいです!!
「妙なところで恥ずかしがるんじゃな。」
私にも恥ずかしい事はあるのです。
「それはすまん事をしたの。それじゃ、この話題は切り上げて話を元に戻すかの。」
こちらこそすみません、せっかく(先程『迂闊な提案』をしてしまい申し訳ない事をしてしまったと気落ちする)私を気遣ってくれたのに。興奮よりも恥ずかしいが勝ってしまいました。
精進いたします。
「そこは精進するでない!……妾は全く気にせん。おぬしが旅の記憶を見せると言ってくれた気遣いが、本当に嬉しかったんじゃ。もうおぬしも気にするでない。」
……わかった。気にするぐらいなら、その分も更に色々な体験をしてくる様に心掛けるよ。
「妾の為にと何かするより、楽しんで、それから無事に帰って来てくれたら、それだけで十分じゃ。」
ぐぅ聖。
わかった、存分に楽しんでくるよ。
って、まだ何処かへ出掛ける予定すらないんだけどね。
「うむうむ。じゃが、神域関連で何処かへ行くとなった場合、突発的に決まる事も少なからずあろうて。おぬしの存在が存在じゃからの。心構えは大事じゃ。」
そっか、そういう事もあるのかな?
「ないと思って突然その事態に遭遇するより良かろ。なかったらなかったで困る様な事でもないしの。」
そうだね。心構えはしておくよ。でも心構え以外の準備は何すればいいのかわからないや。そのへんも学んでいかなきゃ。
「うむ。まあ、何か特殊な準備が必要になる場合はこちらで用意するから大丈夫じゃ。ということで今度こそ話を戻すのじゃ。」
はい。
「え〜っと、なんじゃったか。波長の話をしてたんじゃったか?」
はい、霊気の波長は強弱があって、強いほど吸収しにくい。自我が強い生物ほど波長も強くなる。霊気自体も強くなる。ただし人間と妖精テメーらはダメだ。といった内容でした。
「うむ、そうじゃったの。『生物』の波長については、そんなところじゃな。では『無生物』はどうなるかというとじゃな、霊力が無いから当然波長も無いのじゃ。じゃが無生物は生物にとって欠かせない働きをするのじゃ。生物が放出した霊力が無生物を通過する時、波長を解きほぐしてくれるのじゃ。言ってみれば、波長のろ過装置みたいなものなのじゃな。長い時間をかけて固まった波長を解きほぐし、まっさらな状態へ戻し、やがてろ過された霊力は大気を、水を、大地を伝い、龍脈の流れに戻って行くのじゃ。大気中から霊力を吸収するというのは、主に龍穴から溢れ出したものかこの龍脈へと戻る途中の霊力になるの。植物の霊力も吸収は出来るのじゃが、弱かろうが波長が『ある』からの、『ない』のと比べれば効率的にやはり差が大きいのじゃ。」
霊力も循環しているんだね。そしてその途中に我々の吸収や排出が入り、無生物が元に戻す、と。
「うむ。霊力は大気中から吸収し放題といえば吸収し放題なんじゃが、いかんせん大気中の霊力は薄い。そこで妖精の話に戻るのじゃが、おぬしがさっき言っていたように、おぬしは吸われちゃうというやつなのじゃ。」
ごめんなさい。封印されしものを解き放たないで下さい。
「つまり、じゃ。莫大な霊力を持ちつつも、最も吸収効率の良い霊力を持つ存在。大気に霊力を放出しまくってる存在。それが妖精なのじゃ。」
うーん、歩く酸素ボンベ?給水器?無限お菓子の家?外付け霊力の器?どう表現していいか解らないけれど、今まで説明してくれた事を思い返すと、何と言うか、非常にアレな存在なんだなぁ、妖精って。
「表現としてはちょっとズレているが、何を言いたいかはわかるのじゃ。とにかく、おぬし自身は変わる必要はないのじゃが、周りはおぬしをどういった存在と見るかは、しっかりと理解しておくのじゃ。」
はい。
「なにも神域の者に限ったことではないぞ?霊力に関わる者全般じゃ。この里の者に他の神域の者、それから神域外にも霊力を持つ者の村はある。悪霊をはじめとした外れた者、そして人間もじゃ。」
そっか、霊力を持った人間も、いるところにはいるわけだしね。
「いや、それだけではない。霊力を持たない人間にも注意が必要となってくるじゃろう。」
……え?




