呪いを受けていたんじゃの
「おぬしが大学入学を期に一人暮らしを始めた地はの、この国で最大級の神域と重なる土地なんじゃ。そこで暮らしている内におぬしの器に特殊な変化が起こったのじゃ。」
特殊?どんな変化なんだろう?そもそも霊力の器というのが良くわからないけれど。
「霊力が湧き出て、それを留めておける場所と言えばいいかの……。水の湧き出るコップだったり、風船の様なイメージだっりするのじゃが、その辺は教える者によるのぅ。ちなみに妾にはないのじゃ。」
何となくなら少しイメージしやすくなった様な気がしなくもない様な……。
あと、そうか、春姫ちゃんは龍穴の妖精だったっけ?霊力は龍脈から直に受け取るみたいな感じなのかな。
「龍穴の『意思』じゃ。正確にはちょっと違うのじゃが、通称としての。霊力については、妾は一般的な術は使えぬぞ。龍穴から溢れ出す力を使えるのは土地神であるタマモじゃ。タマモの中にいるときは妾もその力を使えるがの。」
なるほど。
「それで、おぬしの霊力の器じゃがの。今までおぬしが頑なに霊力に目覚めるのを拒否した影響なのか、引っ越してからはおぬしの器自体が頑なに目覚めるのを拒否し始めたんじゃ!」
いやいやいや!私は頑なにどころか、拒否すらしていないよ!?
「そこはものの例えじゃ。」
ぐむむ……。
「おぬしがぐむむと言っても妾は可愛いなどとは言ってやらぬぞ?」
構いません。私はただ一方的に春姫ちゃんを愛でられればそれで大満足です。
「ぐむむ……。あっ、言ってしもうたのじゃ。」
ありがとうございますありがとうございます!
「もういい!続きじゃ!器の変化自体は珍しいというほどでもないんじゃ。多くはないが霊力に目覚めていない段階では起こり得る事なのじゃ。じゃがの、霊力に目覚めてもいない場合、通常は器が非常に未熟なのじゃ。1ミクロンの物が赤から青に変わろうが、硬くなろうが、二倍に膨れ上がろうが、結局我らにとっては無いと変わらぬ事柄なのじゃしの。」
なるほど。例えるならば微生物がそういった変化を起こしても私は気付けない解らないみたいな感じかな。
「そんな感じじゃの。じゃが、おぬしの器は人間としてはとんでもない物じゃったからの。器自体が目覚める事を拒否した結果、器が成長を始めたのじゃ。」
先日のイズナさんの話にあったんだけど、自然の霊力で自身の器の大きく、硬くする、みたいなやつ?
「そうじゃな。ただ、イズナ達は神域に溢れている霊力を少しずつ吸収しておるが、おぬしの場合は完全に自己完結型なんじゃ。目覚めていない器じゃから霊力を出すことも吸収することも出来ぬ。引っ越してからちょっと太ってしまったじゃろ?あれは器の成長の為に食物が必要だったのじゃ。しかし変換効率はすこぶる悪いからの、器としては量が必要じゃったんじゃが、身体としては過剰となり、結果太ってしまったんじゃ。」
あぁ、全部知られているので当たり前なのだが、一番太っていた頃も知られてしまっている。恥ずかしい……。
「その様な事を気にするでない。」
そうですね。もっといろいろ知られてしまっているわけですしね。
「ま、まあの。……一瞬で落ち着く様にちょっとビビるのじゃ。続けるぞ?頑なに霊力に目覚めるのを拒絶するようになった事についてはじゃの、結果的にはかなり幸運じゃったと言える。おぬし、海外に行ったことが何回かあったじゃろ。その中で一回病気になって寝込んだことがあるのを覚えておるか?」
はい、ヨーロッパへ行ったときに一週間近く寝込みました。40℃くらい熱が出ましたね。医者に行っても原因が判らないと言われました。
「アレはの、現地の悪霊の仕業じゃ。おぬしは呪いを受けていたんじゃの。」
え!ま!?
「マジじゃ。滅多に遭遇することはないのじゃが、丁度お祭りの時期じゃったじゃろ?いろいろなものが集まってきていた様での、その中に悪霊もおったのじゃ。あやつらは霊力があるものはご馳走としてパクっ、目覚めていないものには呪いをかけて強引に目覚めさせてから美味しくパクっじゃ。」
私は食われそうになってたって事!?
「そうじゃ。おぬしの器が頑なに目覚めるのを拒否したお陰でおぬしは助かったのじゃ。」
うひーっ!こっわ!!
それで、その悪霊は諦めたの?私はまだ狙われているとかはないよね?
「その悪霊はもう退治されておる。おぬしがなかなか霊力に目覚めないもんだから、悪霊は躍起になっておぬしに呪いをかけていたのじゃ。じゃが、それが目立ってしまっての。現地の土地神に見つかって討伐されてしもうたのじゃ。」
そういえば、ある朝目覚めたらそれまで辛かったのがウソかの様に治まってた。
「おまけに呪いによる負荷でおぬしの器は更に強固な物へと高まったのじゃ。」
霊力に目覚めずにどんどん強化されているのは、今の私の状態に繋がっているの?
「そうじゃの。『妖精』になるにはいろいろ条件があっての。その内の一つとして、人並み外れた器が必要なんじゃ。土地神になる者と同等レベルのな。」
……じゃあ、今、私が妖精になって皆に出会えたのは、悪霊のお陰でもある、という事になるのかな?
「いや、妖精になるだけならば五分五分といったくらいじゃ。例え悪霊に狙われていなくとも、おぬしの器は異常な成長をしておったからの、妖精に到った可能性も十分あったじゃろう。じゃが、今の様に『大』妖精には成りえんかったじゃろう。それに、妖精でなくとも霊力が強ければ皆に会うことは出来たじゃろう。まぁ、妖精でもなければ妾にここで会う事はなかったじゃろうがの……。」
そっか。じゃあ妖精で本当に良かった。ここで春姫ちゃんに会えて嬉しいもの。
……って、妖精の上に『大』がついちゃってる!
「くふふ、嬉しい事を言ってくれるのぅ。妾もじゃ。ちなみに、今のおぬしの霊力はタマモすら凌駕しているのじゃ。タマモはまだ成長期ゆえ、あと数年もすればおぬしに追い付くじゃろうがな。」




