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そっちじゃなくての

「まずは、おぬしの現状じゃな。これは他の事柄にも繋がってくるしの。」


 はい。


「おぬしは……」


 はい。


「……」


 ?


「……」


 春姫ちゃんが何かを言おうと口を開いては躊躇って口を閉じる、を繰り返している。どうしたのだろうか?


「その、こういうのは、他人に言われると傷付くかもと思うとの……。」


 ???

 どんな内容かは解りませんが、一思いに言っちゃって下さい。

 どの様な内容だろうと、私がお願いした事です。春姫ちゃんを恨むなんて事は絶対にしません。


「う、うむ。では、いくぞ?」


 はい。お願いします。


「おぬしは、童貞だったのじゃの。」


 は、はう。


「……それについて割り切っている部分と、ちょっと恥ずかしいと思っている部分、それから妾に言われた事を喜んでいる部分があるのぅ。やはり業が深いのじゃ。」


 声に出さないで下さい。お願いします。


「すまぬ。……じゃが、それについても少し喜んでおるじゃろ。」


 ぐふっ。申し訳ございません。


「心配して損した気分じゃ。」


 ご配慮頂いたことには大変感謝をしております。


「それについても伝わってきておる。良い。話を戻すぞ?」


 はい。


「結論を言うとじゃな、おぬしは『妖精』になったのじゃ。」


 えっ!?


「ほれっ、おぬしも試しておったではないか。海でファイアーボールしておったじゃろ?あの時考えておった妖精じゃ。」


 ひぃぃいいいっ!黒歴史ぃぃぃっ!!


「あれはなかなかに面白かったのじゃ。それはさておき、おぬしはかなり特別で特殊な事例じゃ。」


 特別と言われるとすごいのかな?と思えるが、特殊と言われると一体何があったのか不安になる。


「順を追って話していくぞ?まず、元々この神域内で誕生した事が一つ。」


 病院は神域外じゃないですか?


「いや、赤子として産まれたのは病院だから神域外じゃが、そっちじゃなくての。おぬしのお父さんとお母さんが夜に――――」


 ぐあああああああああっ!!!!!解りました!解りましたからそれ以上は言わないで下さい、お願いしますお願いしますお願いします!!!


「本気で嫌がっているの。ちょっと新鮮な気分じゃ。じゃが、まぁ、これ以上続けるのは止めるのじゃ。」


 ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。


「神域内で誕生した器はちょっとだけ強いんじゃ。人間の器も、妾達から見れば誤差の範囲じゃがそれでも確実に違うのじゃ。その中でもおぬしの器は飛び抜けておるの。普通の人間としては異例のものじゃ。が、あくまでも普通の人間としては、じゃ。霊力を操る一族なんかはもっと強大な器の者も産まれるし、ましてやこの里の者たちとなど比べるまでもないのじゃ。」


 すごいのかすごくないのかイマイチわからない。


「う〜む、この後掛け算や乗算をしていくにあたって、最初の数字が1と2では答えは大きく変わるぞとでも思ってくれれば良いのじゃ。ただ、霊力の界隈では、産まれたときに数十、数百だということじゃ。」


 何となく解ったような、解らないような。


「おぬし、幼い頃に山でキノコを取ってそのまま食べて苦しんだ事があるじゃろ?あのキノコは本来神域にしか生えていないはずのものじゃったが、何が原因か、現世側にも存在してしまっていての。それをおぬしが食べてしもうたんじゃ。」


 良く覚えていないのだが、山に出掛けて、親が目を離したすきに、見知らぬキノコを取ってそのまま食べた事があるらしい。親は突然苦しみ出した私に大層驚いたのだとか。聞けばキノコを食べたと言うから無理やり戻させたと言っていた。


「アレは普通の人間ならポックリ逝ってたじゃろうな。器が耐えきれずにの。まあおぬしも表向きは無事だが、器はヒビだらけになってしもうたがの。半死半生の様な状態じゃ。」


 うわっ、結構ギリギリだったのか。霊力の器が普通よりも強くて良かった……。


「ここで幸運が一つ。この時、すぐ近くにたまたま当時の神使がおったんじゃ。騒ぎを聞きつけて、何事かと駆けつければおぬしが丁度キノコを吐き出したところでの。そのキノコが本来神域だけの物だと見て、おぬしに回復術をかけたんじゃ。それもかなり念入りに。本来は人間へは最低限の事しかしてはいけないのじゃが、原因が神域のキノコだからの。これもおぬしの器の強化にかなりの影響があったのじゃ。」


 えっ!知らないうちに大恩人が存在したのか……。

 そのお方には今さらながら、お礼を言いたいな。お会いする事は可能でしょうか?


「今すぐには無理じゃのう。あの者は他の神域へと移って行ったのじゃ。」


 ……もしかして、私に回復術を使ったからですか?


「あぁ、いやいや、そうではない。ほれ、土地神が替わったじゃろ?タマモに。前の土地神の移動に付いて行ったんじゃ。」


 そっか、土地神に交代とかあるのか……。どういう仕組みなんだろうか。

 そして、それは、その、土地神の座を争ったりもあるのだろうか……。


「土地神の交代や仕組みについてはまたいずれの。土地神の座を巡って争いが起こる場合もないことはないのじゃが、ここの前土地神はむしろ進んで土地神の座をタマモに譲ったんじゃよ。じゃから心配せずとも良いのじゃ。」


 良かった……。

 助けてくれた神使さんが別の神域にあるのならば、会いに行く機会もあるかもしれない。


「いや、行かずともこの地で待っておればそのうち帰ってくるじゃろう。彼女はこの里出身じゃからの。年に数回帰ってくるのじゃ。帰ってきたら教えてやるわい。」


 おお!ありがとうございます。そのうち機会がありそうで嬉しい。

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