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妾じゃ妾

「ではタマモを起こすぞ。霊力に目覚めた原因を調べる為に記憶を見に行くとだけ説明しておく。」


「はい。」


 言うや否や、直に雰囲気が変わった。タマモちゃんだなあというのが私にも解った。


「わかったー!おにいちゃん、横になって。寝ても良いようにして。」


 最初のわかったー!は春姫ちゃんへの返事だろう。


「うん、わかった。」


 私が炬燵から出ようとすると、


「そのまま炬燵に入ってて。横になって、もうちょっと潜ってもいいよ。」


「わかった。」


 言われるがままに仰向けで炬燵に潜る。自分の家以外でこの体制になるのは始めての体験である。

 するとすぐ横にタマモちゃんが入ってきた。ぐふっ


「じゃあいくよー。」


 タマモちゃんは寝転ばずにそう言うと顔をどんどん近付けてきた。

 こ、これは!タマモちゃんと!?

 それは、ダメだよ!でも、そうしないといけないのか!?受け入れるしかないのか?いや、こんな幼い子の始めてかもしれないのに?

 なんてことを考えていると、額がコツンとぶつかった。







「む、おぬしもここに来たのか?」


 気付いたら目の前に知らない女の子がいた。

 狐っぽいけれど狐ではないような、良くわからない。金色の様な桜色の様な、綺麗な髪の毛をしている。尻尾は、9本ある!すごい!顔はタマモちゃんにちょっと似ているが、目尻に赤いラインがある。隈取みたいなやつ。可愛い上に色気もあり、正直ものすごくタイプである。

 この人もイズナさんの姉妹だろうか?


「違う違う、妾じゃ妾。」


 妾って、春姫ちゃん?一人称が妾の人は春姫ちゃんしか知らない。


「そうじゃ妾じゃ。」


 えっ、あっ、そうか。そうだった。私の記憶を見て貰う為に乗り移って貰ったんだった。

 ということは、この姿が春姫ちゃんの本来の姿ということなのかな?


「まあ、そうじゃの。『今は』ということではあるがの。」


 『今は』ということはどういうことだろうか?


「妾には肉体がないからの。元々は決まった姿など無かったんじゃが、それでも長い年月を得て少しずつ固定化してきておる。今は数年タマモと共に過ごしておるからの、だいぶ引っ張られている様じゃ。」


 そうか、とにかくこの姿が春姫ちゃんなのか。この姿で『ちゃん』呼びなのはどうなのだろう?


「構わぬ。そのまま春姫ちゃんと呼ぶが良いのじゃ。」


 ……そう言えばさっきから心を読まれている?


「それはそうじゃろ、ここはおぬしの中なんじゃ。考えた事は全てダダ漏れじゃ。」


 じゃ、じゃあ、さっき、ものすごくタイプであるとか考えたのも!?うわあああああああああ!!!!!


「今さら照れるでない。尻尾にもそれ以外にもエロい視線を向けているのはバレバレじゃ。」


 うわああああああああああああああああああ!!!


「ういやつじゃのう。」


 あァァァんまりだァァアァ……


 ……


 フ――――

 スッとしたぜ。

 泣きはしなかったが、叫んだら落ち着いた。

 そうだ。元々全部見て貰うつもりだったんだから今さらだ。それに……。


「うおっほーー!おぬし、心を読まれて恥ずかしい反面、喜んでもおるのか!!ほんに業が深いのぅ!!」


 やっぱりちょっと恥ずかしい。あまり声に出さないで下さい。


「う、うむ、それはそうじゃの。」


 いいです、いいのです、春姫ちゃん可愛いし。あっ……


「おぬし……。」


 ゴホン。それでは、早速お願いします、春姫ちゃん。


「……わかったのじゃ。普通ならばおぬしはただ眠っておるだけなのじゃが、何故かここに現れた。妾がおぬしの記憶を見ている間、少し待たせることになるが……大人しくしておるのじゃぞ?」


 はい。もちろんです。


「妾に触っても良いが、その時はちゃんと責任取らせるからの?」


 責任!?どういった意味なのだろう?そういった意味ならばむしろ取りたいのだけれど、イズナさんが悲しむ事になるなら出来ません。


「ふふ。」


 春姫ちゃんはそう微笑えむと目を閉じ集中しだした。


 ……今変な事を考えたら春姫ちゃんに伝わるのだろうか?

 私の記憶を見てくれているのだから、変な事を考えたい衝動を抑えて、心を無にしよう。


 ……


 ……


 ……


 ダメだ、素人がいきなり心を無にするなんて出来るわけない。どうしよう。

 そうだ、アレだ。昔4コマで見たアレだ。賢者が言っていた。誰もいない場所で木が倒れた。音はしたかどうかってやつだ。誰も聞いていないから答えは解らないとかいうやつ。考えているうちに心が無になるって勇者か誰かに教えてた。勇者は頑なに音はするって言ってたけど。

 私は勇者じゃないからいけるはずだ。昨日は妹と、賢者と狂戦士のパーティを組んだんだ。大丈夫だ、いける!

 木が倒れる所から想像しよう。

 めりめりめりめり、っどーん。

 想像でも音出してしまった。テレビで見た林業のやつでチェーンソー使って木を倒した時の映像がそのまんま頭の中で再生されてしまったから音も出てしまった。これではダメではないか。

 もう一度だ、もう一度映像を、違う!映像ではダメだ。さっき音が出てしまったではないか。

 一から想像するのだ。

 いざ!


「……終わったのじゃ。」


 あっ。


「余計な事を真剣に考え始めたからビックリしたのじゃ。……でも、邪魔しない様にという思いは本物じゃったから、怒るに怒れん。……ちょっと可愛くも思えてきたのじゃ。」


 ごめんなさい。本当にごめんなさい。この年になって可愛く思われてしまったのは、不本意です。が、春姫ちゃんにそう思われるのはちょっぴり嬉しくも思う。しかし嬉しく思う自分にちょっと自己嫌悪。


「人の心とは複雑なものなのじゃ。」


 以後気を付けます。……心の中までどう気を付ければ良いのかはわかりませんが、徐々にでも改善していけたらと思います。


 それで、本題に戻らせていただきますが、プロポーズの事と、霊力の原因はわかったのでしょうか?


「うむ。絶対とは言い切れぬが、まず間違いないと思うのじゃ。起きてから話すより、ここで伝えてしまおうかの。」


 はい。よろしくお願いします。

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