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自ら望むと申すのか……?

「頭を上げて下さい!イズナさんが謝る必要はありません。……それに私も謝られる立場ではありません。」


 イズナさんが頭を上げてくれたのを見てから私は言葉を続ける。


「私はあの時、自分の意思では止められず春姫ちゃんの耳をはむってしまいました。」


「ちゃ、ちゃん……!?」


「自分の意思ではなかったとしても、実際にそう行動してしまったのは私ですし、その、ダメだと思っていても、存分に味わってしまいました。イズナさんに謝ってもらう立場ではないのです。」


 私は変態ですという告白的なやつ。

 存分に味わったとは何だよと思うのだが、他に何と言えば良かったのか、咄嗟には思いつかなかった。存分にはむはむしてしまったというのは更にヤバそうなのでこうなってしまった。


「いえ、罪悪感とか諸々含めて、春姫様の術の効果の内だと思います。春姫様の所為です。そこは断言いたします。安心して下さい。」


 イズナさんはきっぱりと言い切ってくれた。けれど、存分に楽しんで、興奮までしてしまったのにここまでフォローされてしまうと、やはり申し訳ないと思ってしまう。

 でも罪悪感があるのまで見透かされた上で断言までされたということは、術とはそういうものなのだろうか?




 騒動が一段落すると、イズナさんは「春姫様はこれで十分です。」とすっかり冷めてしまったお茶を春姫ちゃんに注ぎ、私には新たに淹れ直すと言ってくれたのだが、是非ともそのお茶を下さいませと言ってその冷めたお茶を貰った。

 そしてイズナさんは料理の続きに戻って行った。

 長く中断していたが、煮物を煮込んでいる最中などは術を使って維持しているため、多少の時間離れたとしても問題がないのだそうだ。さすがに焼いている最中にこれだけの時間離れれば普通に焦げるそうだが、焼き物をしている最中ならばイズナさんはこちらへ来ないから大丈夫だろう、と。これはイズナさんが去った後に春姫ちゃんが教えてくれた。


「さて、ケイよ。改めて、申し訳なかったの。」


 今はもう抱っこではなく、炬燵を挟んだ正面に座っている春姫ちゃんが謝ってきた。


「いえ、私はいいのです。思った以上にとんでもない事をしてしまった様なのですが、全てが術の所為になってしまったのが、逆に申し訳なく感じてしまいます。」


「それはイズナも言っておったじゃろう。そういう術なんじゃ。おぬしの身体を動かすのではなく、おぬしにそうしたいと思わせると共に理性を働かせなくする術なんじゃ。おぬしが罪悪感を持つ必要はないんじゃ。」


 なるほど、それならば確かに術にかかってしまえばどうしようもないな。しかし理性は……


「最初は理性自体はあったのです。ただ、これはダメだと思っても全く身体が言うことを聞かなかったというか……。もちろん夢中になってはむってしまったのも間違いなく私で……。何というか、自分が二人いるような感覚だったんです。」


「ふむ。理性があってなおあのはむはむか……。おぬしの業は些か深すぎるのかもしれんの。イズナは受け止めきれるのかの……。」


 最後のって、私がイズナさんに変態プレイをするっていうことをだろうか。

 ……プロポーズについてハッキリさせないとだよなぁ。でも、イズナさんには今は聞きづらい、泣かせたくない。春姫ちゃんに相談したいけれど、タマモちゃんには聞かせられないなぁ……。


「あの、春姫ちゃん。その、タマモちゃんって、今どうなっているの?」


「今は眠っておるぞ。タマモにはさっきの修羅場は見せられぬからの、とっさに眠ってもらったのじゃ。……タマモには聞かせづらい相談でもあるのか?」


「……はい。その……イズナさんへのプロポーズの件についてです。」


「どうしたんじゃ?イズナから妾に乗り換えたくなったのかえ?ん〜?」


 タマモちゃんの肉体なので見た目は完全にロリなのだが、妙に色っぽい表情を向けてきた。うおっ!尻尾が増えた!!9本ある?九尾!?

 ぐふっ、正直たまらん。

 さっきコレをされていたら、いくとこまでイッていた可能性を否定できない。


「春姫ちゃん、ソレはダメ。本当にヤバい。脳が震える。」


「まんざらでもない感じなのかの?第二夫人にでもどうかの?」


「非常に魅力的な提案ではありますが、イズナさんが悲しむ事はしたくありません。」


「そうかそうか。」


 春姫ちゃんは満足そうに頷いた。尻尾が減った……というか元に戻っている。

 もしかして、試されたのかな?

 さらに言いづらくなったが、それでも聞くしかない。


「それで、イズナさんへのプロポーズのことなのですけれど、私のどの言葉がプロポーズになったのか解らないのです。」


「……。」


 春姫ちゃんが眉間にシワを寄せている表情になってしまった。


「先ほど、『記憶を覗く』といった内容の話しがありましたが、それをやって貰う事は出来ないでしょうか?」


「な、なんと、自ら望むと申すのか……?」


 今度は口を開けてびっくりな表情になった春姫ちゃん。


「はい。春姫ちゃん側に負担が無ければですが。私側に何か負担があるのなら、多少ならば我慢します。」


「いや、負担は特にないのじゃ。妾は単に乗り移るだけじゃ。おぬしの中に入って直接記憶を覗くんじゃ。短時間で済ませる為にはおぬしにはちょっと眠って貰った方が良いというくらいで、それだけじゃ。」


「では、それをお願いできないでしょうか?」 


「よ、良いのか?普通は嫌がるぞ?秘密や性癖、黒歴史も全部妾に見られてしまうのじゃぞ?あんな場面もそんな場面もじゃぞ?」


「春姫ちゃんになら、構いません。私の本性を見て、嫌われちゃわないかは不安ですが。」


「その辺は安心せい。今までにも数百人視てきたのじゃ。人の心の暗い部分にも理解あるつもりじゃ。」


「それに、自分が霊力に目覚めた原因も知りたいですが、それ以上にイズナさんへのプロポーズについてもちゃんと知っておかなければならないのです。……神域の風習や文化の観点から何かアドバイスを頂けないでしょうか。」


 春姫ちゃんが見たくもない場面もあるかと思うのだが、そこはまあいいか。最初は春姫ちゃんから見ようとしたのだし。


「そ、そうか……。うむ、わかったのじゃ。」

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