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くぅーん……

 やっちまった。

 考えている事と行動がバラバラである。……いやバラバラとは違うか。欲望のままに行動してしまった。理性が働く前に行動に移してしまったというか何というか。


「くふふ、そうか、それは良かった。ちゃんと同意を得たぞ?」


 一体何があるのか?何かをさせられるのか、何かをされるのか。

 抱きしめてしまった事については何も言われなかった。


 はむ。


 春姫ちゃんの狐耳をはむってしまった。

 いや、ここまでしたら後は一緒だ、やっちまえ!的な思考になったわけではない。何故か止まらないのだ。

 心のブレーキがぶっ壊れてしまったのかもしれない。


「はぅっ。」


 春姫ちゃんは狐耳が弱いのかもしれない。変な声を出した。

 ならば、はむはむはむはむ……


「お茶のおかわりをお持ちしました。」


 そこへイズナさんが声をかけてきた。襖の向こう側にいる。


「くぅーん……。」


「春姫様!?」


 ずしゃーっと襖を勢い良く開けて入ってくるイズナさん。

 そこに広がる光景は……


 狐耳ロリを抱きしめて狐耳をはむるおっさん。

 おっさんに抱きしめられ耳をはむられ顔を赤らめる狐耳ロリ。

 それを目撃する狐耳美少女。


 一瞬、時が止まった。


「……ケイさん、一体、何を、やっているんですか?わた、私に、プロポーズ、してくれたのに、何で……?」


 イズナさんが目に涙を浮かべながら私に訴えかけてくる。

 イズナさんを泣かせてしまった……。

 ……しかし、プロポーズ、だと!?おっさんが妹に変な事しているから泣いたとかではなく、プロポーズ……???


「いつまでも待つって言ってくれたけど、人間は、短命だから、土地神になるの、諦めるか、真剣に悩んでるのに……!」


 イズナさんの涙は決壊寸前になっている。


「違う!違うんじゃ!!イズナ、勘違いするな!妾なんじゃ、妾が魅了の術を使ったんじゃ!!だからこの者は悪くないんじゃ、落ち着くんじゃ……!」


 春姫ちゃんが慌てながらイズナさんに弁解を始めたが……、えっ???

 イズナさんを泣かせてしまった……からの、えっプロポーズ!?からの、魅了の術?

 ちょっと展開についていけないぞ。どういうこっちゃ?

 イズナさんのまばたきと共に涙が一筋溢れてしまう。それを見た途端、心がすっと静まった気がした。

 いつまでも春姫ちゃんを揉んだりはむったりしているままではいけない。

 春姫ちゃんは私から開放されると立ち上がり、イズナさんに近付いて弁解を続けた。


「すまぬ、まさかイズナとこの者の関係がそんなにも進んでいるとは思ってもみなかったんじゃ……。この者が霊力に目覚めた理由がわからぬから、記憶を覗こうかと思って、同意を得るためにやってしもうたんじゃ……。」


「……ケイさん。そうなのですか?」


 イズナさんは、涙を流しながらも真っ直ぐと私を見据えて質問してきた。

 こんな時になんだが、やっぱり綺麗だなぁ。

 何がなんだか解らないが、せめてこちらも真っ直ぐに向かい合おう。


「あの、魅了の術というのが解りません。でも、その、イズナさんを悲しませてしまったのは、申し訳ないと思っています。」


 そこで訳がわかっていない私に春姫ちゃんが説明をし始めてくれた。


「おぬしに魅了の術をかけたんじゃ。悪かったの……。おぬしが尻尾に強い関心を向けている事はわかっておった。ちらちらとイズナや妾の尻尾見ていたからの。」


 うわっ視線がバレバレでやんの。あれか、女性の胸をちらちら見る男みたいな感じか。そして相手にはバレバレなやつ。


「じゃが、尻尾で誘惑するのは……さすがに破廉恥過ぎるのじゃ。だから耳に誘導しつつ魅了の術を使ったんじゃが、その、少々効きすぎてしもうたんじゃ……。まさかあんなにはむはむされまくるとは思ってもみなかったんじゃ。」


 頬を赤く染めながらそんな事を言う春姫ちゃん。

 尻尾や耳はそんなにもあれなのか?エロい事なのか?


 魅了の術をかけられていた事に対する忌避感は無い。驚くほど無い。全く無い。正直、心のブレーキがぶっ壊れて変態行為をしてしまったという事実が、丸ごと術の所為にできたということで、むしろホッとしている。

 そのホッとしてしまっているという事実に自己嫌悪しているが、これは術は関係なく自分の性根の問題である。


「ちょっとした出来心だったんじゃ。人間に会うなんて久方ぶり過ぎて悪戯心が抑えきれんかったんじゃよ……。それに、それをネタに脅そうというつもりではなく、ほんのちょっとだけ断りにくくする、その程度のつもりだったんじゃ……。」


「春姫様、悪戯心にしても、いくら何でも非道が過ぎます。反省して下さい。」


「もしもちょっと術が効きすぎたとしても、その時はタマモの婿にキープ出来ればいいかとも思ったんじゃ……。」


「猛省して下さい!!いいですか、そもそも――――」


 イズナさんは春姫さんに説教を始めてしまった。涙は、止まっている様だ。良かった……。涙を流している姿も綺麗ではあったが、やはり泣いてほしくなどない。

 そして怒っている顔もまた綺麗であり、ちょっとゾクゾクもする。


 ……その後15分ほどが経過し、「解りましたか?」「はい、解ったのじゃ。」と説教もようやく終わりを迎えた。

 春姫ちゃんは少しやつれてしまったかの様に見える。

 そしてイズナさんはこちらに向き直り、


「ケイさん、疑ってしまって申し訳ございませんでした。」


 と深々と頭を下げてきた。

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