……ダメ?
イズナさんは一旦奥へといなくなり、お茶とお茶請けを持って戻ってきた。
お茶請けは海苔の巻かれたオカキとどら焼だ。しょっぱいのと甘いの、好きです。
イズナさんもここで一緒にお話するのかなと思ったら、「では私は夕餉の支度をしますね。」とまた奥の方へと行ってしまった。
私とタマモちゃんの二人きり。
これは、我慢できるだろうか?
いえいえ、決していかがわしい事ではありませんよ。
モフりたいだけです。だって目の前に尻尾!狐の尻尾!鼓動が速くなる。鼻息が荒くなる。これは、マズいぞ。
そうだ、タマモちゃんと話そう。いろいろ聞きたい事があったはずなので聞いてみよう。今回はそのために来たのだから。
……あぁ何を聞きたいんだったか思い出せない。尻尾で頭がいっぱいだ。
タマモちゃんは楽しそうに鼻歌を歌いながらどら焼を食べている。
尻尾を食べてはダメだ。何かを食べて気を落ち着かせよう。
今気付いたのだが、タマモちゃんを抱っこしているこの体制では飲み食いができない。煎餅の欠片をタマモちゃんの尻尾に落としてしまうかもしれない。……それはそれで背徳的で興奮してしまうかもしれないが、開かなくていい扉は開かなくて良い。むしろ厳重に施錠しておいた方が良いだろう。
う〜ん、お茶ならば横を向けば飲めるか。よし飲もう。
ずっ
美味いっ!イズナさんの淹れてくれたお茶美味い!!茶葉もいいやつかも。甘みとかとは違う、何というか暖かな味?を感じる。何処かの神域産だったりするかも?
よし、一口飲んだら大分落ち着けた気がする。タマモちゃんに質問をしていこう。……と思っていたら、
「おぬし。名前はケイと言ったな。」
タマモちゃんの方から話しかけて来てくれた。だがしかし、さっきまでと雰囲気が違う。『春姫』様と呼ばれたときのタマモちゃんか。
「は、はい。鷹山慶と申します。」
続けて、あなたはタマモちゃんなのですか?とか聞いてみたかったが、こちらから質問して良いのか解らない。何だかすごく雰囲気あるんだもの。
「あぁ、そんなに畏まらずに先ほどまでの様に話して良いのじゃ。タマモと同じ様に接してくれて構わぬ。こちらとしても今の状態では格好つかぬしの。」
抱っこ状態である。
「まずは妾の事じゃが、春姫と呼ばれておる。土地神の代行をしておるのじゃ。タマモは土地神としては申し分ない器を持っておるが、何分幼いのでの。タマモが知識と実力が身につくまでの代わりじゃ。」
なるほど、良くわからん。
「妾は本来、この龍穴の意思、に近い存在じゃ。肉体はないからの、龍穴の幽霊みたいに思ってくれれば良いぞ。タマモに宿って、タマモに出来ない事があるとこうやって表に出てくるのじゃ。お互いに見聞きしたことは共有しておるので、おぬしと神社で会ってお稲荷さん貰った事も知っておるぞ。」
「な、なるほど……。」
龍穴とか良く解らないけれどアニメとかの知識でいいのかな?地球の大いなるエネルギー的なのが流れるのが龍脈で、その龍脈からエネルギー噴き出している場所が龍穴とかそんな感じかな?
「おぬしは帰郷してきたら視える様になったと聞いておる。知らない事だらけで不安な面もあるじゃろう。だがタマモではまだ知識が足りずに十分な内容を伝えきれんでの。そこで早速妾の出番となったのじゃ。タマモはおぬしと一緒に遊びたいけれど、まずは不安を取り除いてあげてほしいのだと伝えてきた。」
遊びたいの我慢してこちらを優先してくれたのか。私なんてさっきまでタマモちゃんをもふりたいで頭いっぱいだったのに。
「タマモちゃん良い子だなぁ……。それでは宜しくお願いします、春姫ちゃん。」
「春姫、『ちゃん』……。」
「あ、え、タマモちゃんと同じ様にとのことでしたので、その、『ちゃん』なのかなって……。申し訳ござい――――」
「良い!良いぞ!!春姫ちゃん、か……くふふふふっ。」
あ、あれ?なんか笑いだしたぞ?
「これからも妾を呼ぶときは春姫ちゃんと呼ぶがよい。」
「わ、わかったよ、春姫ちゃん。」
するとまた、くふっくふふふふふふふっと笑い出した。何故か喜んでもらえた様で何よりです。
春姫ちゃんはひとしきり笑い通した後に、お茶を一口飲み、話し始めた。
「まずは、おぬしの霊力について調べたいのじゃ。……そもそもおぬしはなぜ霊力に目覚めたんじゃ?しかもその力は尋常ではなく、質も異様だと聞いておる。臨死体験でもしたのかの?」
「いえ、そういった経験は、ないですね。」
「ふむ、では――――」
次々と質問され、それに応えてゆく。産まれてこれまで特殊な体験はないか。何歳までこの地に住んでいたのか。学校はどこか。何故大学でこの地を離れたのか。そして何処に住んでいたのか。職歴。職場の場所。旅行に行った場所。食べたもの。などなど、様々な事柄について。
「う〜む……。関連しそうな事と言えば、以前住んでいた場所くらいか。あそこの神域はこの国最大級のものでの。おぬしの住んでいた場所も神域内に入るはずじゃ。とは言え、それだけで霊力に目覚めるなら数十万人が霊力に目覚めておるだろう。そこに住んでいた時は何も視えなかったと言うことじゃしな。まさにこの里に帰ってきた時に目覚めたのじゃろうが、目覚めたてで膨大な霊力……。」
春姫様はと言うと、数秒考えた後に、
「わからん!困ったの。……のう、おぬしよ。」
「は、はい。」
少し雰囲気が変わった気がしたので、ちょっと身構えてしまう。
「良いか?」
「何がですか?」
「……ダメ?」
抱っこ状態で私に寄りかかってきて、顔を上げて甘える様に聞いてきた。反射的に良いよ!と言って抱きしめてしまいたくなった。
だがここは一体何がなのか問わなければならない。負けてはダメだ。
「いいよ!!!!!」
そう言って春姫ちゃんをぎゅっと抱きしめてしまった。
……あれ?




