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ごめんね

「ねえねえ、お部屋行こ?」


 タマモちゃんの声にハッとして、我に返る。身の丈に合わないセリフを言うのは少しトリップしなければならなかったのだ。


「そうですね、参りましょう。」


 そう言ってイズナさんが先導してくれる。

 もう手繋ぎは無しだ。残念である。とても残念である。非常に残念である。


 右手が寂しい……だなんて考えていたらちっちゃい手が握ってきた。タマモちゃんが手を繋いできたのだ。これは良い。

 二人で手をぶらんぶらんしながら歩く。といってもさっきタマモちゃんが出てきた部屋なので数メートルの距離だが。


 スリッパを脱いで整え、部屋に入る。

 畳の部屋だ。広さは、二十畳くらいだろうか。床の間の様な場所もあり、そこには秋の絵の掛け軸がある。あ、もしかしたら外の季節に合わせた掛け軸だったりするのかも?この神域は常に春みたいだし。

 そして中央には……炬燵!しかも、二つもある!!

 ここは常春だから炬燵は必要なさそうだが、寒がりなのかな?


「座ってお話しよ!どっちが良い?こっちは普通のでね、こっちは掘り炬燵なの。」


 タマモちゃんに誘われるが、残念だがここは断らなければならない。土地神様に会わなければならないのだ。心の中で血の涙を流しながら断りを入れる。


「ごめんね。これから土地神様にお会いしなければならないんだ。」


「?」


「あ!」


「私の為に時間を割いて会ってく……」


「うん!頑張って終わらせた!」


「え?」


「ケイさん、先程お伝えしそびれてしまったのですが……こちらの方が土地神様でいらっしゃいます。」


「えっ!!!!!」


 ちょちょちょ、ちょい待って

 勘違いしたら大変なので、ちょっと今の会話の流れを思い返してみる。


①タマモちゃんに座ってお話しようと誘われる。

②土地神様に会うからと血涙を流しながらも断る。

③タマモちゃんがちょっと良くわかんない的な顔をする。

④イズナさんが何か思い出した様子。

⑤土地神様は私の為に時間を割いてくれると言っている途中で、

⑥タマモちゃんが頑張った!と言葉を被せてきた。

⑦イズナさんがタマモちゃんを土地神様だと教えてくれる。


 う〜ん。これは間違いないだろう。

 タマモちゃんが土地神様だったという事である。冗談とかの可能性もないだろう。

 ええええええええええええええええっっっっ!!!!!!


「ええええええええっっっ!!!」


 心の中で叫んだけれど、心の中だけで収まらなかった。

 土地神様に不格好になったお稲荷さん上げたり、なでなでしちゃったりしたよ!!ついでに言うとなでなでもされちゃったよ……!


「ねえねえ、どっちに入る?」


「あ、はい。えっと、では、こちらで。」 


「じゃあ入って入って〜。」


「で、では、失礼いたします。」


 驚きの余韻に浸る時間もなく、待ち切れないかの様に催促されたのでとりあえず向かって左側の炬燵を選ぶ。こっちは何の炬燵だっけ?あぁ、普通の置き炬燵だ。

 あぁ、これは良い。秋に炬燵……いや、ここは春だった。どっちにしろ季節的に炬燵は時期がズレているかなと思ったけれど、これは良い。たぶん、ただの炬燵じゃなくて、先程の回復術に近い様な癒し効果を感じる。これは、素晴らしい。欲しい。


「正座じゃなくて、足崩して。言葉遣いも戻して欲しいな……。」


「ですが……」


 タマモちゃんが土地神様だと判った今、さっきまでの言葉遣いじゃあまりにも不敬過ぎるだろう。相手はマジな神様なのだ。あっ、ちゃん呼びはダメだ。様だ、タマモ様。

 とは言え、あまりに畏まった言葉は私が無理だ。かしこみかしこみ申すとか漫画とかでしか見たことないもの。


「……ダメ?」


 ぐぅ、首を傾げて可愛くダメって聞かれてしまった。

 おじさん何でもお願い聞いちゃう!的な気持ちになってしまう。

 さて、どうしたらいいだろうか。困ってしまい、イズナさんの方を見る。

 するとイズナさんは笑顔で頷いてくれた。


「どうぞ、畏まらずに先ほどの様に対応して下さい。土地神様ではなく、『タマモ』として接してあげて下さい。」


 そうだ。そうだった。ゆるい感じで良いって言われてたんだった。おじいちゃんかおばあちゃんみたいな感じだと思っていたらタマモ様……タマモちゃんだったから、ちょっと混乱してしまった。


「そうでした。近所の家に遊びに行くみたいなゆるい感じとの事でしたもんね。……ん、んっ。わかったよ、タマモちゃん。」


 軽く咳払いで気持ちも切り替える。足を崩して良いのは、かなり助かった。長時間正座は痺れてしまうもの。胡座をかくのは楽だ。


「むふ〜!」


 タマモちゃんは満足そうに笑ってくれた。

 そして私の上に座ってきた。ぐふっ。

 あ、いや、顔面に座ってきたとかじゃなくて、胡座をかいた足の上に座ってきたのだ。

 これは、イイ……!しかも、もふもふの尻尾付きだぞ。

 なでなでしておこう。可愛がっちゃおう。


「春姫様。ご報告があります。本日、警邏隊見習いは向こう山で訓練のはずですが、さきほど境内にて虎族の虎威電人(とらいでんと)を確認。ケイさんに敵意ある眼差しを向けておりました。」


「虎威電人というと、虎族族長の長子だったか……。わかった。手の者に調査をさせよ。」


「畏まりました。……では、私はお茶の用意をしますね。あっ、まずはケイさんのお荷物を返しておかなきゃですね。」


 イズナさんの雰囲気が急に変わったが、それよりも『春姫』って何だ?それにタマモちゃんが応えたからタマモちゃんの事だろうけど、どういうことだ?

 しかしタマモちゃんの変化はイズナさんの変化の比ではなかった。何というか、圧力が変わったし、何よりも人格が変わった様な印象を受けた。

 ん?いや、もしかしたら、本当に別人格だから『春姫様』なのか???

 考えていたらイズナさんが預かってくれていたお土産を出してくれた。


「あっ、これ、手土産代わりに持ってきたお土産です。以前住んでいた所の名産品を使用したプリンと焼き菓子です。」


 紙袋から出して渡す。座った状態で立っている相手に差し出すのはちょっとアレだが、上にタマモちゃんが座っているから立ち上がることが出来ない。


「まあ!ありがとうございます。タマモはプリンが大好きなんです。タマモ、焼き菓子とプリンいただきましたよ。」


 イズナさんがタマモちゃんにも見えるように持つ。


「やったあ、プリン!いつ食べる?今?」


「せっかくだから冷やしてからいただきましょうか。ご飯の後のデザートにしましょう。」


「楽しみ〜!」


 良かった、喜んでくれた。

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