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私は霊力の存在を知ったばかりだ。
霊力という言葉自体は漫画とかで知っている。その漫画にハマっていた当時は霊丸とか撃ったよね、心の中で。
だが、現実でそれを知ったのは一昨日なのだ。
霊力で身体能力向上できると聞いても、漫画とかじゃあるまいし、そんなまさかと思うのは仕方ない、いやむしろ当然と言えるだろう。
……
……
……いや、だが、イズナさんが言ってるのだから信じなければならない。だってイズナさんだもの。自分の今までの人生の常識よりもイズナさんを信じたい。
玄関から道中の分岐や階段に脇目も振らず真っ直ぐ進んでいたが、丁字路に突き当たる。ここで廊下が左右に別れる。窓から見るに、この先には中庭があり、そこを左右に迂回する形になっている様だ。私達は右に進んで行く。
「ビックリしました。……私は霊力自体を良く解っていないのですが、すぐに可能なものなのでしょうか?」
あの青年のあの目を見た限り、修行して習得する前に事件が起こりかねない。
「ご自身の霊力を自覚することが出来れば、後は呼吸をする様なものかと思います。土地神様のお話の後にちょっとやってみましょう。きっとすぐにできますよ。」
あれ?結構簡単な感じなのかな?修行編はないのかな?それは非常に(私の命が)助かるが、何かちょっと拍子抜けでもある。
ふと右側の窓から外を見たら、鳥居の連なる曲がりくねった山道が見えた。千本鳥居とかそんな感じのやつ。
「修練を積むとかもなく、そんなにすぐできちゃうことなんですか?」
「はい、単純な身体能力の向上だけならば。ケイさんの霊力ならば、それだけで十分に防衛が可能です。」
「私には武術の心得とかも全くないのですが……。」
「防御に関しては、ケイさんの霊力ならば全く防衛行動を起こさなくても、あの者の攻撃ならば無傷で済むはずです。例え不意を突かれようが、寝込みを襲われようが、あの者にケイさんを傷付ける手段はありません。」
なんと!
速報・私、めっちゃ硬い!
カッチカチやで!
いやまだ硬くないけれど。
そうこうしているうちに中庭をぐるっと半周した反対側に着いた。朱色と白の建物はここまで。すぐ隣に一軒の趣きのある家が建っている。神社と古民家の中間みたいなデザイン。
一瞬、靴を置いてきちゃったぞと思ったが、今いる朱色と白の建物からその家まで渡り廊下で繋がっているので必要なさそうだ。
「あちらの建物が土地神様のお住まいです。私もあちらに部屋を賜り暮らしております。」
イズナさんの部屋を見たい!……とは口が裂けても言えない。変態っぽい発言はできない。イズナさんから変態扱いされたら生きる気力を失くすかもしれない。
いや、一回くらい呼ばれてみたくはあるかもしれない。
「見たi……事のないデザインの建物ですね。この建物とも大分違います。」
あっぶねーーーっ!!!見たいって言っちゃうところだった!
「今いるこの建物は100年くらい前に建てられた、比較的新しいものなのだそうです。そしてあちらの土地神様のお住まいはこの神域に残っている建物の中では最古の建物とのことで、建築年代が二千年以上違うのだそうです。資料によると、当時の土地神様が未来視で見た建物を形にしたとのことです。」
えっ、二千年以上??
これどう見ても木造だよね?石造りとかじゃないよね?うっほーー!!法隆寺すらぶっちぎるほどの古さだ。神域クオリティってことか!?
「そんなに昔の建物が今も残っているなんて……。ここが神域だということも関係しているのでしょうか?」
「はい、神域側だけに存在している木を使っているので、半永久的に痛むことも壊れることもないのだそうです。と言っても、内側は改築してあるんですけどね。時代の生活様式に合わせてあります。」
二人で渡り廊下を進んで行く。そして土地神様の住居の前に到着。
「到着いたしました。では、入りましょう。」
玄関は引き戸となっている。ピロピロという明るい音が鳴り出す。引き戸を開ける音がピロピロという音。何これ?
「ピロピロと聴こえました。面白い音が出ますね。」
「この建物の完成時は完全無音だったのだそうですが、それだと誰かが出入りしてもわからない、ということで後から追加した機能なのだそうです。ちなみにこのピロピロとした音は、当時の土地神様が自作の横笛を吹いた音を使用したのだそうです。かなり特徴的なので『ピロピロ館』という愛称で呼ばれることもあります。」
ハイブリッド車が静か過ぎて接近がわからなくて危ないから音を後付した、みたいな感じか。
それにしても、ピロピロ館か……そのセンスよ。
そういえば、土地神様の演奏を面白いとか言っちゃった……。あと、和の楽器だと縦笛のイメージだったけど、横笛なのか。
「只今戻りました。」
「お、お邪魔、させて、いただき、ます……。」
ピロピロピロピロ、と玄関を閉める音。
玄関に入ったわけだが靴を脱ぐことはない。すでに靴を履いてないから。安心して下さい、(スリッパを)はいてますよ。
すると、ザーッと勢い良く近くの部屋の襖が開く。そしてそこから小さな女の子が飛び出てきた。昨日神社にいたあの女の子だ。タマモちゃんだ。狐耳ロリである。すごい笑顔だ。可愛い。
たたたっとこちらへ駆けて来た。
「ただい……」
イズナさんが言葉を発しようとした、その時。
たたっ、ぽすっ!
タマモちゃんが私に飛びついてきてくれた。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
声にならない叫び。
状況的に喜んでいると思われるかもしれないが、そうではない。
私はまだそこまで高みに到達していない。
ではどういうことなのか。
そう。そうなのだ。
タマモちゃんが飛びついて来たとき、私の私にクリティカルヒットしてしまったのだ。




