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あいつ……!

 おおぉぉぉ……。

 これは、すごい。

 大きな鳥居の向こうには朱色と白と黒の建物。それから咲き誇る桜。美しい。

 ずっと眺めていたい景色だ。


「美しいですよね。このあたりの建物を建てた時、この場所、鳥居の前から見た光景を一番美しいものにと意識して作られたそうです。」


 しばらく眺めていたが、私がふと、ここへ来た目的を思い出した時、イズナさんはタイミングを見計らって教えてくれた。


「これは、そうですね。素晴らしいですね。神社を外から見ただけで感動したのは初めての経験です。」


 建物の配色は柱などは朱色で壁は白、それから屋根は黒い。例えるならば平安神宮の屋根を黒くした感じだろうか。

 そんな建物が正面に大きなのが一つ。鳥居からそこへ向かう道が続いている。その道は十字に交わっており、道で別れた四つの土地にはそれぞれに社務所の様な建物が、計四つ建っている。

 そして周りには当然獣耳巫女さんたちがいる。

 素晴らしい光景である。素晴らしい光景である。素晴らしいので何回も言ってしまう。




 いつまでも眺めているわけにはいかない。土地神様の所へ行かねばならないのだ。イズナさんは私がこの景観を眺めているのを待ってくれている。


「お時間とっていただきありがとうございました。十分堪能いたしました。」


「では参りましょうか。」


 ぺこり。

 二人で並んで鳥居をくぐる。並んで通っても真ん中は通らずにすむ大きな鳥居。

 一歩入った瞬間、何かが決定的に変わった。空気というか清浄感というか、何と言えばいいのだろうか。初めての感覚。

 そのまま道を真っ直ぐ進んで行く。

 

 ん?何だか獣耳さんたちの視線がこちらに集まっている様に感じる。


「イズナさん。認識阻害の術は解いたんでしょうか?」


「はい。正確には『解いた』のではなく『解けた』のですが。鳥居から内側の境内は基本的に術の発動出来ない様になっています。聖域もありますし、土地神様もおわしますから、警備の面を考えてそういった術が施されています。」


「なるほど……。」


「土地神様から許可を受けた者はその証に神具を賜り、術の使用が可能となります。私も神使ですから神具を賜っているのですが、普段から使用するわけには参りません。職権濫用になっちゃいますからね。」


 やはり神使ってすごい立場なんだろう。土地神様直属的な立場とかそんな感じだろう。

 しかし、そうか。やはり認識阻害は解けていたか。人間がこの場所へ来るのは非常に珍しいのだろう。めちゃくちゃ見られる。

 あっ、あの猫っぽい耳の青年、すごい目でこっち見てる!「食べないで下さい!」と言っても「食べないよ!」とは言ってくれない系のガチのヤバい目で見てくる。そっちは見ない。そっちは見ない。今は襲ってくることは無さそうだが、後で襲われたりする可能性はあるのだろうか。

 人間に対する憎悪や悪意があったりするのかもしれない。もしくは、私は霊力がどうのこうので美味しそうに見えたりするのかもしれない。

 ここでイズナさんに頼るのはちょっと大人の男としてどうかとも思わなくはないが、ガチで命の危険があるかもしれない。クロの身体能力からの推測になるが、獣耳さん達の身体能力は人間よりかなり上なのだろうと思う。さらには術もある。殺ろうと思われちゃえば、その瞬間に私の人生は終わる。背に腹は代えられない、イズナさんを頼ろう。


「あの、イズナさん。左の奥の建物の影から、ものすごく睨まれてしまっているのですが……どうしてでしょうか?」


 それでもさすがに人間に恨みがあるのかとは聞けなかった。私は美味しそうなのかというのも、もしかしたら侮辱になる可能性があり聞けない。私は美味しそうに見える?→人間を食うんじゃないか?→肉食動物、みたいな。

 イズナさんは私が伝えた方向を見て立ち止まる。例の人物を見つけるとキッとした顔をする。


「あいつ……!」


 キッとした顔もすごくイイ。激烈に刺さりまくる。


「申し訳ありません。あの者はこの里きっての乱暴者です。本日は警邏隊見習いは向こう山で訓練しているはずなのに、何故……。」


 乱暴者かぁ……。下手したら、向こうとしてはちょっと絡んで小突いただけの認識でも、私の頭は破裂するかもしれない。戸愚呂弟のデコピンで豚尻さんの頭が吹き飛ぶみたいな、視覚的にはあんな感じのやつが起こりかねない。


「あの、私は、その、何か恨みを買ったりしたのでしょうか?情けない話なのですが、私は普通の人間なのでちょっと小突かれただけでも重傷、またはそれ以上の状態になってしまうのではないでしょうか?」


 それを聞いたイズナさんは目をパチパチ。そして何かに思い至ったようで、あぁ!と言った。


「ケイさんならその心配はいらないと思います。土地神様にも今回の事をお伝えするので、そちらについてもお話いただけると思いますが、道中でも軽く説明しますね。」


 そう言って、再び歩き出す。

 えっ?ええっ!?よくわからない。だが、私も一緒に歩き出している。

 心配ないということだし、それについても聞けるようだし、まぁいいか。


「こちらから中に入ります。」


 鳥居から見た時、正面にあった大きな建物だ。靴を脱ぎ、教えて貰った場所へ靴を置く。イズナさんは私に合わせて動いてくれる。スリッパも用意してくれた。そのスリッパを履き建物内を歩き出す。

 この建物、内部も朱色と白で構成されている。今は外からの光で明るいので点いていないが、暗くなったら点すであろう行灯が壁に付いている。そんな廊下を二人で並んで歩く。


「ケイさんは霊力が強いので、身体能力を向上させることができます。」


「え!?」


 先程の、心配はないというやつの説明だよね?

 いやいやいや、そんなまさか。私は普通の人間ですよ?

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