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手を繋いでもらってもいいですか?

「ただいま〜。」


 市役所や警察署でいろいろやって帰ってきた。朝一の受付開始時間に合わせて行ったのに、なんだかんだで結構時間かかってしまった。

 これで手続きはだいたい終わっただろうか。

 あ、あとはこっちの銀行で口座作らないと。向こうで使っていた地方銀行はこっちにないからね。

 ん?そういえば、向こうへ行く前に使っていた口座ってまだ生きてるのか?20年以上使ってないが、どうなっているんだろう?まあそのへんは今度でいいか。





 そうそうそう、イズナさんが迎えに来てくれる前に、身体を綺麗にしておこう。神様に会うのだから、本来は冷水だったりするのかな?

 でも、結構ゆるい感じでいいみたいだからお湯でいいよね?相手は土地神様だ。締める部分はきっちり締めて行くべきだが、ここは締めてしまったら風邪を引くかもしれない部分なので許して貰おう。



 全身しっかり洗ってきた。歯も磨いた。髭は朝剃ったがもう一度念入りに剃った。

 服は新品ではないが、まだあまり着用していないやつ。パンツだけは新品があった。

 手土産は、好みがわからないからプリンと焼き菓子の両方。本来なら、これもお高いお店で最高級品を買ってくるべきなのかもしれないが……。土地神様はそういう事を望むわけではなさそうだし、これでいいだろうと思う。

 よし!準備OKだ!たぶん!!

 後はイズナさんが迎えに来てくれるのを待つだけだ。


 こちらから向かう、というのは止めておこう。神域の神社の正門?は昨日お参りに行ったところとは別との事だ。どちらの道で向かうかわからない。

 それにもしかしたら、迎えに来るときは神社から直線的に来るかもしれない。その場合は絶対にすれ違うことはない。

 やはり待ち一択だ。ガイルになった気持ちで……いや、蛇使いのバーボンになったくらいの気構えで待ち構えよう。

 とりあえず庭のベンチに陣取る。イズナさんがいつ来てもいいように。




「ケイさん、こんにちは。お迎えに参りました。」


 3時少し前にイズナさんが迎えに来てくれた。

 くっ、今日も可愛い……。


「は、はい。こんにちは。本日はお日柄も良く、じゃなかった、なんだっけ、えっと、よ、よろしくお願いします。」


 これからほんの少しの間といえど二人きりで一緒に移動すると思うと緊張してきた。落ち着け、落ち着くんだ、落ち着けねぇ。


「本日なのですが、ケイさんは夕方以降にご予定はおありでしょうか?」


 土地神様とのお話の後の予定ということだよね?もしかしてデートのお誘いか!?……などという可能性はない。知ってる。


「いえ、特には。帰ってきたらそのまま家で過ごすと思います。」


「でしたら、土地神様が夕餉も是非ご一緒に、とのことです。どうでしょうか?」


「え、えっと、あの……」


 ど、どどどどうしよう!?緩くお茶を飲むくらいならなんとかなるかと思ったが、マナーとかかなり怪しいぞ!?庶民としての普通に食べることしかできない。

 和食ですら、海原のやつが山岡さんに指摘したみたいにお茶漬けを箸のほんの先っちょだけで食べるなんて無理だ。洋食なら尚の事である。


「私の作る物なので普通の家庭料理なのですが……食材が神域産の物なので、ケイさんにとっては初めての食べ物もあるかもしれません。ダメそうな物は残していただいても構いませんし、その、良かったら、どうでしょう……?」


 ……えっ!イズナさんの手料理!?


『おお!すごく、すごく食べたいです!!!』


 って、あれ?考えている事と言葉が同時に出た。これが思考と反射の融合なのかもしれない。イズナさんの前だと私は超兵になれるのかもしれない。

 ……しかしこんなにがっついてしまったら、まるで女の子の手料理に飢えたモンスターの様ではないか。私は断じて違う事をここに宣言したい。私はイズナさんの手料理が食べたいだけである。いや、同じことではない。これには大きな違いがあるのだ。


「本当ですか!良かったぁ。土地神様も楽しみにしている様子だったので、きっと飛び上がって喜んでくれますよ。」


 飛び上がりたいのはこちらですよ!イズナさんの手料理、楽しみだなぁ。

 マナー的なやつも、行儀悪い事をしなければ大丈夫そうかな。


「私も夕ご飯楽しみです。そのことを家族に伝えてきますね。」


 家に戻り居間にいた母に今日の夕ご飯はいらないと伝える。蟹?いや、今日は元々違うでしょ。わかったわかった、今週中には蟹を買ってくるから。

 そしてイズナさんのもとへと戻る。


「では、参りましょうか。あっ、お荷物は異空庫にお預かりしますよ。」


 手土産というかお土産を持ってもらうのは少し奇妙な感じもしなくもないが、異空庫ならばありかな?


「ありがとうございます。ではお願いします。」


 そして出発だ!二人で列んで歩いて行く。

 そういえば、どの道を使って行くのだろうか。


「せっかくですから、表から参りましょう。」


 おお!あの謎の道だ!!神域側にしかない道で、ちょっと……いや、かなり危なそうな道だ!確か、落ちない様に何かの術がかかっているんだったっけ?あ、それに……


「でも、私があの道を通ると、他の人には私が宙を歩いている様に見えませんか?」


「あっ、確かにそうなっちゃいますね。失念してました。……認識阻害の術をかけましょうか。」


「それって、先日の結界みたいな感じになるのかな?」


「他の人から認識されない点ではそうですね。あの結界はケイさんの車を基点として術をかけたので車本体とその内部に効果がありました。周囲から認識されないのは車であり、ケイさんは車に乗っていたから認識されなかったのです。間接的に効果があったという事になるでしょうか。今からかける術はケイさんと私に直接効果があります。あっ、お互いのことはちゃんと視えるから大丈夫ですよ。」


 なるほど……。冷静に考えるとこちらからは視えるのに周りからは視えないって、なんだかマジックミラー……それ以上考えてはいけない。


「それでですね……神社に入るまで手を繋いでもらってもいいですか?」


 ぐふっ!!!

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