またね
やっちまったーーーーーっ!!!
ある格闘ゲームの投げをミスったときの実況が大音量で流れた様な錯覚を起こした。
私のはミスったのではなくて、むしろ撫でるのがヒットしたわけなのが、これはヒットしたらミスなのだ。ミスこそが正解だったのだ。
なぜ撫でたのだ!?あまりの可愛さに無意識で撫でてしまったのだ。
あまりの可愛さに頭を撫でたい衝動に駆られたがちゃんとそれまでは我慢していたのだ。我慢できていたのだ。でも霊力という単語が出てきて、「来ました霊力!」だなんて考えたもんだから、撫でたい衝動を抑える集中力が途切れてしまったのだ。
……などと現実逃避していても仕方ない。私の命運は狐耳幼女ちゃんが握っている。
って、あれ?狐耳幼女ちゃん、撫でられて嬉しそうにしている。
なら、いいのか。撫で撫でを続けよう。
はぁ、今この瞬間、私は世界で一番幸せである。間違いない。
くはっ、撫でたのが嬉しかったのか、狐耳幼女ちゃんはむしろ私の手にすりすりとしてきた。
何これ何これ!めちゃくちゃ可愛いんですけど!?
語彙が、とぶ。
意識も、とぶ。
……
……
……
……はっ!
夢か、夢だよな。夢に違いない。
っわーーーー!!狐耳幼女ちゃんが20cmの距離にいる!夢じゃない!とぶな、俺!頑張れ、儂!正気に戻れ、私!
……ふぅ。(意味深ではない。心を落ち着けたのである。)
「あのね、あたしタマモ。」
狐耳幼女ちゃん、改めタマモちゃんは名前を教えてくれると、再びすりすりしてくる。今度は手ではなく、私の胸元ですりすり。
抱きしめたい。抱きしめてこちらからもすりすりして思う存分に可愛がりたい。だが我慢だ、我慢しろ。事案だ。
私は何も出来ず、されるがままにすりすりされ続ける……脳が震える。
……
……
……
「おにいちゃん、またね。」
はっ!!いつの間にか離れていたタマモちゃんが私に手を振ってくる。正気に戻った私は慌てて手を振り返す。あっ、走っていっちゃった……めちゃくちゃ足速いな。
……えっ?さっきお兄ちゃんって言ったよね?おじちゃんじゃなくてお兄ちゃんって言ったよね???マジか!とても良い子だな。
さてどうしようか。
いや、まずはお茶をもう一杯飲んで心を落ち着かせる必要があるだろう。
敷物にした上着を着直し、お茶を注ぐ。
お茶が飲み頃に冷めるまではまた景色を楽しもう。
あっ、反対側の山の中腹に、獣耳さんの集団が何かしている。巫女服じゃないな?作務衣かな?あ、男の獣耳さん達っぽいぞ。昨日は女の獣耳さんしか見なかったが、そうだよね、当然男の獣耳さんもいるよね。
双眼鏡でもあれば観察してもっといろいろ判るのかもしれないが……、そこまですると変態っぽいよな。眺めるだけに留めよう。
せっかくだし、イズナさんかラスさんかクロがどこかにいないか探してみよう。
う〜ん、いないなあ。あ、あの人は、獣耳が丸いかな?……でもラスさんではなさそうだ。たぶん。
私の視力では判断に時間がかかるし、正確ではない。お茶も冷めたし、飲んでそろそろ家に戻ろうかな。
家でお昼を食べたら午後にはお墓参りもしておかないとな。
そういえば姉と妹は起きただろうか?昨夜は私が買って来た酒を呑みきった後もビールとか出して来て飲み続けていた。私は途中で自室へ戻って寝たから何時まで呑んでいたかはわからない。普段ここまで羽目を外す機会もないだろうし、良い息抜きにはなったのかな。
姉と妹に、良かったら墓参り一緒に行こうぜと誘ってみようかな。……まあ、姉は行かないな。妹はもしかしたらついて来てくれるかも。
家に着くと姉と妹が起きてきており、おにぎりとお稲荷さんを食べていた。これは彼女たちの朝ご飯、というよりお昼ご飯だろう。
食べながら二人で夕食を何にするかという話をしている。「帰ってから(夕飯を)作るのめんどいから寿司でも買って帰るかなぁ。」「キノコ採ってきたし、鍋にしようかと思ってたんだけど今日は温かいからねぇ。私も何か買って帰ろうかな。」とかそんな感じに。キノコは昨日私が帰ってくる前に山へ行って採ってきたらしい。
二人が食べ終わりお茶を飲見出したタイミングで話を切り出す。
「ねえねえ、この後暇だっらさ、一緒に墓参り行かない?」
ナンパではない。姉と妹相手にナンパしてたまるか。
「行かぬ。」
「何時に行くの?ご飯は?」
やはり姉は行かない様だ。妹は一緒に行ってくれるのかな?
「いや、そっちの都合次第でいつでも。ご飯のつもりじゃなかったけど、ついさっきデカいおにぎり食べたばかり。」
「じゃあ、お茶飲んで一休みしたら行こっか。寝たらごめん。」
妹は一緒に行ってくれるらしい。まぁ寝ちゃったら寝ちゃったでかまわない。誘っておいて何だが、たまのゆっくり出来る時間なんだからゆっくりしていればいいのだ。
まあこれでたぶん一人で墓地へ行かなくて済むはずだ。
昼ご飯は、墓参りから帰って来てからでいいや。いや、むしろおやつに何か食べればそれでいいかな。




