表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/259

次はいつ乗せてくれる?

 帰りもクロは楽しそうに乗っている。すぐに家に着いてしまうのは少々忍びない気持ちになる。神域の反対側の境界を見てみたいと提案しようかとも一瞬思ったが……、小さな山ではあるが峠を越えて境界まで行き、そこから再び峠を越えて戻ってくるとなるとさすがに時間がかかるか。やはりまた今度か。

 などと考えているともう家に到着してしまった。


「到着〜っと。そういえば皆は車酔いとか大丈夫だった?」


 聞くなら駅前の空き地に着いたときに聞くべきだったけど、皆元気そうだったから聞きそびれていた。

 今回はほんの数分の乗車だったが、次のドライブデート(ごめんなさい。ただの運転手です。はい。)の時の為に酔い止め薬を用意しておいた方がいいかな。


「大丈夫ーっ!」


「この車ならば車酔いとは無縁だと思います。もしも極端に乗り物酔いやすい体質だったとしても、この車内の霊力を浴びていれば我々が酔う事はないでしょう。」


「そっか、それは良かった。」


 クロが元気良く答えてくれて、イズナさんがこの車なら酔う事がないと教えてくれた。ならば酔い止め薬は不要か。もう自分の臭いの事は考えない。


「ねぇねぇケイ、次はいつ乗せてくれる?」


 車を降りようかとしたところでクロが袖を軽くくいっくいっと引っ張ってきた。ぐふっ。女の子に袖を引かれるの、すごくイイ。


「う〜ん、土地神様からお話を聞いてからになるかな?あと、車で出掛けるなら親御さんに話を通した方が良いかなと思うんだけど、その辺はどうなっているんだろう?」


 ニヤケそうになるのを必死に我慢しながらも、獣耳巫女さんたちの文化というか風習がわからないので聞いてみた。連れ出して良いものだろうか?四十路のおっさんの車に乗せていいものだろうか?安全運転は心掛けるが、絶対に事故らないとは言えないし。

 引っ越し(出戻り?なのだが、獣耳さんたちには他所から来た人物に等しいだろう)の挨拶とかを親御さんにして、そのついでに車乗りたがってたから乗せてもいいだろうか的な感じで聞けばいいだろうか。

 クロは「ん?」という顔をしたが、代わりにイズナさんが答えてくれた。


「問題ないと思いますよ。私たちは三人とも成人を迎えています。人間基準だとまだ中学生なんですけどね。」


 ごふっ。

 中学生か。何という破壊力。

 いや、見た目で若いのは解るけれど、『中学生』という言葉にしてしまうとヤバさが際立つな。


「でも、安全運転はするけど絶対に事故らないとは言えないし、もらい事故だって有り得るから、やはり挨拶くらいした方が良くないかな?」


 挨拶したら事故っても良いと思っているわけではない。

 事故ったとき親御さんから責められても、許可とっただろと言えると思ったわけでもない。

 問題はむしろ事故らずに無事の時こそ起こりうるかもしれない。獣耳さんたちは車に乗る習慣がなさそうなので、ただただ危ないものと思っているかもしれない。『話も通さず危ないものに乗せた』のと『先に話を通してから乗せた』では、先か後かの違いだが親御さんの心象は大きく変わるだろう。


「許可を頂けるのなら、車内の霊力を利用して防御結界を張りたいと思います。衝撃吸収を付けますから、何かにぶつかってもお互いに無傷です。例え崖崩れに巻き込まれたって大丈夫なはずです!」


「それはすごいな!!是非お願いします。」


 崖崩れも大丈夫ってマジか。時間を遅らせるのもびっくりしたが、防御性能もかなりヤバいな。さすがイズナさんである。さすイズである。

 でも、まぁ、それなら大丈夫なのかな?

 クロと二人で何処かへ行くのか、それともイズナさんとラスさんも行くのか、どっちなのかなと思っていたけれど、皆一緒みたいだ。良かった良かった。若い娘と一対一だと何を話していいかわからないもの。面白い話なんてできないもの。


 よし、車から降りようかね、と私がドアを開けて降りる。皆も続いて降りてくる、その時……


「ケイとのドライブデート楽しみ!」


 ゴンッ!

 ごふっ、げほっげほっ!!

 クロの言葉に盛大に吹き出してしまった。そして、


「だ、大丈夫?」


「大丈夫です。申し訳ございません。」


「いや、怪我とかなければ良かったよ。」


 ゴンッ!って音は、車から降りようとしていたイズナさんがクロの言葉に驚いて頭をぶつけた音だ。

 紳士として気付かなかったフリをした方が良かっただろうか?と後になって思ったが、音に反応してイズナさんを見てしまい、目が合ってしまったので仕方ない。


 しかし、クロのドライブデート発言にはドギマギしてしまった。

 いや、もちろん親密な男女がお出かけするあのデートの意味で言ったのではなく、車でお出かけする事をちょっとシャレを混じえた感じで言ってみただけとかそんな感じのやつだとは解っている。

 自分でも心の中で言っていた言葉ではあるが、女の子から言われた時の衝撃は超新星爆発にも匹敵するかもしれない。……しないか。でもとにかく凄い衝撃なのだ。


 というかイズナさんもドライブデートにもの凄い反応してたな。四十路おっさんと若い娘たちで出掛ける事をドライブデート呼びは彼女にとっても衝撃的なものだったらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ