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あっ、北海道ですね

 とりあえず、帰ってきてからの謎はすべてとけた。あとは、何かあるかな。あ、神域について聞いてみよう。神域はいつもひとつ、というわけではなさそうだ。


「神域についてもう少し聞いてみていい?この神域の広さってどれくらい?帰って来たとき、ガード下を通過したら桜とか浮島とかが見える様になったんだ。あの辺からかな?」


「はい、その通りです。あちら側はあのガードが神域と現世の境界に設定されています。他の方面は全てこの集落の周囲の山までが神域の範囲となっています。」


 設定ということは、神域は自然に発生するなではなく、神様が創るものということなのかな。


「神域とは土地神様が龍穴の力を利用し作り出すものですので、その範囲を自由に変化させる事ができます。ですが、土地神様の無意識下ではどうしても神域の範囲が変動してしまうのです。そこで自然や地形、建造物などを要とすることで固定化させるのです。これにより無意識下だろうと範囲が変動する事がなくなります。また、燃費も向上するそうです。」


 なるほどなるほど。神域の範囲はこの集落+周りの山で固定されているけど、変動させることも可能、と。一方向だけ山じゃないのは、まぁ、山がないからだろう。(道は集落を突き抜け隣の市へも続いているのだが、そちらは山越えだ。)


「そう言えばさっき、浮島の事を『他の神域にはない』って言ってたけど、神域って他にも沢山あるのかな?」


「はい。日ノ本全体で50ほどの神域が存在しています。県内にはここの他にももう一ヶ所存在していますよ。」


「ラスはそこからやって来たんだよね!」


 最後のはクロ。

 ラスさんは他の神域から来たのか。今度ゆっくり話せる時があったら他の神域の話を聞いてみたいな。

 ラスさんがクロに「えぇ。」と頷いた後にこちらを向いて話を続けた。


「この神域は常春で暖かく過ごしやすいですし、土地神様も温厚で優しい。大変人気のある神域なのです。私の故郷だけでなく、全国各地の神域から集まって来ています。」


 「へぇ、全国各地の神域か。いろいろな神域の話を聞いてみたいな!」


 ……まぁ無理か。私にそこまでの社交性はない。

 それに、集落各地で独り言を言う事となり、それを目撃した人から集落中に話が広がる可能性もある。集落中の人が幼い頃から見知っている為あまり悪く言われる事はないだろうが、気の毒そうに対応されたり励まされたりするだろう事は想像できる。そうなったらとても居た堪れない気持ちになるだろう。

 などと考えていると、今度はイズナさん。


「私も他の神域出身ですよ。私は蝦夷ヶ島の神域から…あっ、北海道ですね、すみません。」


「里の重鎮には数百年生きている方も少なくないので、地名などは古いものを使う方もいるんです。イズナは神使ですからそういった方々とのやり取りも多く、うつっちゃうんだそうです。私たちも普段は現代の地名を使っていますから、ケイさんも気にせず普段使っている地名を使って下さいね。」


 慌てて言い直すイズナさんと、補足説明してくれるラスさん。ありがとう、助かる。イズナさんも視線でラスさんにありがとうと伝えている様子。

 そう言えば、イズナさんはさっきも『日ノ本』と言ってたな。昔の地名だと知らない地名もかなりある。現代の地名使えて良かった良かった。

 イズナさんは気を取り直して、さっきの続きを話してくれる。私がいろいろな神域の話を聞いてみたいと言ったから、それに応えてくれているのだろう。ありがたい。


「私は北海道に三つある神域の一つ、冬の里出身です。場所は旭川から少し南の辺りですね。冬の気が強い神域なので一年中雪が積もっているのですよ。」


「おお!冬の里!!でも一年中雪があるって、すごく大変そうだなぁ。」


「ふふふ、神域内では吹雪く事がないので、慣れてしまえば『そういうもの』なのですよ。通路の除雪は術を使えば大した手間ではありませんし。私も当時はまだ幼く、拙い術ながらもお手伝いしておりました。」


 そうか、術か!なるほどなるほど。それにお手伝い、偉い偉い。幼い頃のイズナさんもさぞかし可愛かっただろう。


「それになんといっても、冬の里には神域内に温泉があるんです!神域内の温泉だけあってその効能は大変素晴らしく、ありとあらゆる効能があり、万治の湯と名付けられています。若者の間ではエリクサーの湯だなんて呼び名もあるんですよ。」


 おお!温泉!!!エリクサーの湯、そのセンスはちょっと好き。


「一面の銀世界を眺めながらの温泉、最高の一時ですね。」


「おぉぉ、それすっごく良い!憧れる!!いつか行ってみたいなぁ……!」


 あ、すっごく良いのは雪見温泉の事ですよ。イズナさんが温泉に入っている姿を想像してすっごく良いと言っているわけではないですよ。一瞬頭によぎってしまったが、ほんの一瞬だけ。


 本当、いつか行けたらいいなぁ。……私は他の神域って行けるのかな?現世のその土地へは行けるだろうけれど、神域側への進入というか入場は出来るのかな?


「そういえば、私は他の神域へ行くことって出来るのかな?」


 もしかしたら、そこら辺も土地神様と会った時に教えてくれるかもしれないけれど、気になって聞いてみた。


「おそらく可能、だと思うのですが……。土地神様からケイさんの状況や状態をお聞きしてからではないと判断しかねます。すみません。」


 そっか、可能性はあるのか!

 雪見温泉には憧れていたが、冬場にまとまった休暇なんて正月くらいのものだった。正月は実家に帰るか、帰らず寝正月の二択(近年は後者が多かった)だった。憧れは憧れのままになっていたのだが、憧れが叶う可能性が出てきた。正月だけでなく年がら年中雪見温泉なのだ。行きたいなぁ。

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