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54 王国七剣ツキナvs蓋世の魔王

魔王「次はツキナだ!こうして鍛えてやるのは久しぶりだな」


ツキナ「っすねー。よろしくお願いします!」


魔王「おう!まず始めに言っとくが、お前に足りないのは防御力だ」


ツキナ「魔法や術式を使わない地力としての防御力。『起志生叛法・器下』っすか」


魔王「自分でも分かっているようだな。地力を鍛えるには攻撃を受けまくる他ない。だがそれだけじゃダメだ。身体能力を通常の人間程度まで封印しろ」


ツキナ「マジっすか・・・!」


魔王「マジだ。旅団長との戦いで私がやったろ?」


ツキナ「旅団長ならともかく魔王様の攻撃となると話が違う様な・・・」


魔王「甘ったれるな!お前の軟弱癖は昔から直ってないなー」


ツキナ「くっ!やるっすよ!身体能力指定封印99%」


魔王「それでいい。『魔力局所解放10%』」


ツキナ「!?」


魔王の拳に魔力が満ちる。魔力波で世界が振動し空間が揺れ理の秩序が崩壊していく。見学に来ていた一同は巨大な死に踏み付けられた様な錯覚に陥った。


梵創者「ア・・・ア・・・アノ魔力だ・・・!」


旅団長「うぐ!・・・さ、流石ですね。私の時は全く力を出していなかったという事ですか・・・!」


副旅団長「権能で少しでも迫ったと思いましたが、ぜ、全然だった様です!」


全身から魔力を解放するのではなく拳のみに魔力を集中している為、外部への影響が抑えられている。それでもある程度の地力を持たない者は恐怖に吞み込まれるには充分だった。他兵士達の、特に従軍経験が浅い者の中には思考が歪み頭を抱え込んでいる者や尻もちをついて涙を流している者もいる。


魔王「ツキナ、お前は反撃をするな。防御力を鍛える為に私の攻撃を全て受けきってみせろ」


ツキナ「・・・分かりました!」


ツキナは解放された魔力に気圧される様子が全くない。例え魔王が魔力を100%完全解放してもツキナは一切怯まず冷静かつ適切に判断を下し与えられた任務や対処しなければならない戦闘を最善の結果に導く事が出来る。王国七剣セブン・ソードの称号は伊達ではない。


魔王「いくぞ!気合を入れろ!」


ツキナ「はい!・・・・くっ!!」


数字で表すなら界分と呼ばれる回数をツキナは既に攻撃されていた。無量大数を更に超えた回数である。一発の拳がこの宇宙を言語で表せない程の数を滅ぼす力を秘めているが、それでもツキナの肉体はダメージを受けてる様子はない。攻撃された力を体内で流し肌の表面に体循環させ、魔王からの攻撃威力を激減させているのだ。口で説明するのは簡単だが王国七剣だからこそ可能な体術である。受けた攻撃一つ一つに身体を正確に使いこなす必要があるからだ。それを0秒に1界分回の拳が飛んでくる中行わなければいけない。これを見た一同もツキナの実力を再認識していた。


梵創者「マオウ様の動きが全くミエナイ・・・それを防ぐツキナ様、凄すぎる・・・!」


副旅団長「奇遇ですね、私も全く見えません!」


旅団長「なんで副旅団長はドヤ顔なのよ。まぁ私も見えないけど・・・」


一同が話してる間にも攻撃が進んでいく。激しい音が響いたり振動が伝わったりという事は全く無い。一切の無駄を省いてツキナに力を加えていく。それでも最初だけで段々と空間が歪む異様な音が鳴り出し、次元を打ち砕く亀裂が第三者の眼に見えるように影響を出していく。まるで世界の終わりを彷彿とさせる光景だ。


魔王「流石だなツキナ。まだ余裕か?」


ツキナ「はい!全然っす!」


魔王「よし、準備運動はこれくらいだな。速度上げてくぞ!」


ツキナ「うっす!・・・・ぐふぅぅ!」


宇宙船が無ければこの世界は言語で数え切れない程消し飛んでいる。その威力をツキナは身体操作で受け流しているが、時間が経過していくと限界が近付いていく。


魔王「魔刀攪拌『天堕とし』」


ツキナ「ちょま・・・!?」


魔王は魔力で刀を練り上げ上段から下段へ刀を振り下ろし『天堕とし』を放つ。『天堕とし』は世界の全てを二つに分かつ剣術型の一つだ。文字通り理や法則、存在する元素や原子の全てを二つに分かち、間に己の介入余地を与え自らが望む思考に世界を置き換える。そうする事でツキナは一切の力量行使を無に還され防御の意味が無くなる。


魔王「焼き断て『燎』」


ツキナ「くぅ!ハァッ!!」


魔王「いいぞ、防御で理を繋ぎ止めたな」


分かれた世界の狭間に刀を下段から上段へ振り上げる『燎』が放たれる。『燎』は世界の全てを焔で焼き断つ剣術型の一つだ。『天堕とし』から繋げることで焔を理へ返還し世界を永遠と焼き尽くす。だがこの焔をツキナは防御で受け止め我が身の理を繋ぎ止めたのだ。


ツキナ「まだ・・・余裕っす・・・!」


魔王「そうでなくては困るよ。剣速上げてくぞ!」


ツキナ「はい!」


魔王「ふっ・・・!」


全てを超凡した剣戟を繰り出す魔王、それを真正面から受け続けるツキナ。発生する魔力波や空間亀裂から見る者へ緊張感を漂わせる攻防が永劫と繰り返される。


ー・・・気付けば約1時間程が経過していた。


梵創者「コレいつまでツヅクの!?」


副旅団長「はっ!よく分かりません!」


旅団長「なんで自信満々なのよ。恐らくツキナ様が成長するまで止まらないでしょうね」


ツキナがその場で立ち止まり魔王の斬撃を受け止め続ける。しかし限界が来た様で傷跡が見え始め血が滲み始めている。もう一度解説するがツキナの身体能力は通常の人間と変わらない程度まで封印されている。その状態で宇宙を何度も滅ぼす攻撃を受け続けているツキナの実力が伺え、王国七剣の称号を顕著に表している。


魔王「時間収束『天堕とし』」


ツキナ「くっ、ぐううぅぅぅぅあああぁぁぁぁぁ!」


魔王「時間加速、はぁっ!」


ツキナ「このていどおおぉぉぉぉぉ!」


魔王の『天堕とし』が100億年程の結果を帯びてツキナを斬り伏せた。一つの斬撃を100億年という永い時を繰り返した結果が一つに纏まったのだ。それだけに留まらず打拳が2000億年程打ち続けた回数分、遅れてツキナを襲い掛かる。


魔王「限界はまだ先か?」


ツキナ「まだい、いけるっすぅぅ!」


魔王「なら威力上げてくぞ!」


ツキナ「はい!うぅ!」


魔王「肉体が削れて来てるぞ!やっぱ防御力が欠点だな」


ツキナ「くぅぅぅう!まだまだっすぅ!」


魔王「お前もう死んでるだろ」


ツキナ「死んだ程度なら大丈夫っすぅ!」


魔王「そうか。ならお前の意識へ攻撃をしよう」


ツキナ「くっ!ぐあがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


ツキナは既に生命活動を停止し死亡している。『起志生叛法』で肉体を動かしているのだ。それを読み魔王は攻撃意図を切り替えツキナの意識へ概念攻撃を行った。


魔王「お前の意識を燃やし尽くす!時間収束『燎』!」


ツキナ「・・・!?」


数字で表すなら最勝と呼ばれる時間が一つに成り『燎』を放ち続けた結果がツキナの意識を焼き払う。身体も灰に変わり、ツキナの意識はこの時点で消失した。


ツキナ「・・・」


魔王「根性だけで存在を防御してるな。いいぞ、ここからが本番だ」


ツキナは身体と意識が消失したが、存在だけが微かに残っている。概念攻撃から根性のみで存在を防御しているのだ。何も知らない第三者から見ると、魔王が無の空間に対し攻撃を行っている様に見える。


副旅団長「旅団長、ツキナ様は既に死亡しているのでは?」


旅団長「うーん、それが私にも分からないのです。ツキナ様の存在の気配を僅かに感じるのですが・・・存在を防御している、という事だと思います。推測ですが」


梵創者「リョダンチョウの言う通り。ツキナ様は死の理を越えて気合と根性だけで存在の確立を守護してイル。ムムム!」


旅団長「どうかされましたか?」


梵創者「ボクの世界を簡単にチョウエツされると自信を失くす・・・」


旅団長「そうですか・・・」


副旅団長「大丈夫です!あの二人が可笑しいだけですから!」


魔王「聞こえてるぜ副旅団長!」


副旅団長「なぜ戦闘中なのに聞こえるのですか・・・」


魔王「戦闘中の周囲察知は基本だろ。それより旅団長も『起志生叛法』を習得しつつあるから、二人じゃなくて三人だ!先の戦闘で死んでるのに槍を打ち込んで来たよな?」


旅団長「そういえばそうですね。私も一歩進んだという事ですか」


副旅団長「じゃあ・・・真面なのは私と梵創者様だけ!?」


魔王「そういう事だ」


副旅団長「旅団長!置いてかないで・・・!」


梵創者「リョダンチョウ!」


旅団長「えぇ・・・」


魔王「人徳の高さが旅団長の取り柄だな。ツキナ!お前も速く成長しろ!」


ツキナ「・・・ぐぅっ!・・・・・あぁぁぁぁぁぁぁ!」


無の空間からツキナの身体が構築し始める。白光が身体のラインを形作り肉体を生成し始めた。気合と根性のみで理へ介入し時間遡行に似た現象を引き起こして肉体保持を防御していく。否、防御を超えて再生を行う。


ツキナ「ま・・・おう・・・!まだ余裕・・・っすよぉ!」


魔王「ツキナ!その感覚を無意識へ刻み込め。それまで私は攻撃を止めない!」


ツキナ「は、は・・・いぃ!」


魔王「更に加速するぞ!」


ツキナ「・・・!?」


称量と呼ばれる数字が0秒以下で攻撃としてツキナへ襲い掛かった。更に「時間収束」が使用され纏まった時間が降り注ぐ。それでもツキナは一つ一つの攻撃へ精密に反応を行い身体再生を着実に行っていく。僅か数秒足らずでツキナは感覚を無意識へ刷り込み身体再生を完了した。


ツキナ「くっ、ぐぅぅぅぅ!どうっすかぁ!物にしたっすよぉ!」


魔王「流石だな。じゃあ更に加速するぞ!」


ツキナ「・・・あれ?」


魔王「どうした?」


ツキナ「なんか攻撃が痛くも痒くもないっす」


魔王「そうか。ならここまでだ」


実の所、魔王の攻撃は効いている。だがツキナの無意識が攻撃を受ける度に世界の根幹へ介入し回復行為を行うのだ。これにはツキナ自身も疑問点が尽きない。


ツキナ「どういう事っすか・・・?」


魔王「防御の真骨頂は防御を消す事だ。受けた攻撃に対し法則改変を無意識化で行い攻撃を無かった事にする。ツキナはそれを行ったのさ」


ツキナ「つまり私の意識が身勝手に世界の根幹へ介入してるって事っすか?」


魔王「身勝手とは少し違うな。意識の強固さが一定以上まで達しその操作に長けた者は意識の次元が移動するのさ。正確には12次元である『回帰を原点とする全ての操作』を可能とする領域だ。つまり身勝手ではなく自由。なぜならツキナの意識が世界の上なのだから」


ツキナ「私の自由?あ、これが『次元相違理論』っすか」


魔王「その通りだ。分かっていると思うがその身体操作法に飲まれるのは愚か者のする事だ。12次元とはいえ所詮は12次元。掌の上でしかない」


ツキナ「分かってるっすよ」


魔王「そうか。『起志生叛法・器下』は身体操作であって真の身体操作ではない。王国七剣なら全てを正確に行う必要があるからな。攻撃を無意識化で解体しては受けるはずの攻撃まで無力化してしまう。それに技量の物差しで見ても操作してる様でしていないから褒められた物ではない」


ツキナ「その通りっすね。身体能力を解放した状態なら『起志生叛法・器下』を使えるっすけど、封印した状態でも使えなきゃ意味無いっす


魔王「ああ。求められるのは無意識を意識的に操作する事だ。必要とあれば12次元へ昇り、そうでない時は今次元へ留まる。それが出来て完璧だ。ま、ツキナならすぐ熟せる様になるさ。それまで稽古は続行だ」


ツキナ「分かりました!お願い致します!」


魔王「おう!じゃあまずは攻撃を受け続けろ」


ツキナ「え!?またっすか!?」


魔王「感覚を掴むにはそれが最善だ。いくぞ!」


ツキナ「ちょ!?まっ・・・!?」


ー・・・この後、稽古は数時間程続きツキナはボロボロになるのであった。

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