53 旅団長vs魔王
魔王「次は旅団長だ。掛かってきな」
旅団長「はい!」
魔王「っとその前に、身体能力封印99%。これで今の私は通常の人間と変わらない。魔法やその他も一切使わず相手をしてやる」
旅団長「・・・いきます!パーマラ・ズレイ!」
魔王「遅いな。お前は副旅団長との戦いで何を見てたんだ?」
旅団長「ぐぁっ!!」
旅団長は右手から聖属性と雷属性を混合させた魔力粒子弾を放つが、弾速より速く魔王に接近されボクシングで言う所のクロスカウンターを撃たれた。この弾一つで世界を数十個程破壊出来る魔力が含まれている。空振りした魔力粒子段が模擬戦闘室の壁に着弾すると、鼓膜を破る爆発音が鳴り響いた。
魔王「撃つ気配と動作がまる分かりだ。攻撃は当たらなきゃ意味が無い!」
旅団長「パーマラ・ズバースト!」
魔王「すぅぅぅぅここ!」
旅団長「カハ!こ、呼吸が・・・!」
接近した魔王に対してこの世界を数百回は滅ぼしてもお釣りが来る程の魔力粒子砲で範囲攻撃を行うが、魔王は円を描くように両腕を廻し武術によって攻撃を霧散させ魔力粒子砲を拳に流し、その力を旅団長のみぞおち辺りへ打つ。攻撃を逆に利用されてしまったのだ。
魔王「どうした?ただの人間にも勝てないのか!?」
旅団長「天門よ開け!パーマラ・ズレイン!」
魔王「ほう?別世界を作成して『私に命中する』という法則を持たせ魔力粒子弾を雨の様に降らせに来たか」
旅団長「っ!なぜ当たらない!?」
魔王「よく見ろ!当たっている。効かないように攻撃を流してるだけだ」
旅団長「パーマラ・ズバースト千門、ファイア!」
魔王「もう後ろにいるよ?」
旅団長「ここだ!パーマラ・ズガハズ!」
魔王「おお」
旅団長「ヒュー・・・ヒュー・・・づがまえまじたよ!」
旅団長の喉が潰れて血が噴水の様に噴き出している。「パーマラ・ズバースト」を放ったと同時に魔王に背後を取られ、拳で喉を打たれ手刀で頸動脈を斬られたのだ。だが旅団長は副旅団長との戦闘を思い出し背後に罠を設置して魔王を光の縄で捕まえた。
旅団長「セレー!・・・ハァ・・・ハァ・・・チェックメイトです」
魔王「通りで攻撃が弱いと思ったらこれが本命か。模擬戦闘室全てに魔法陣を作るとはな」
旅団長「範囲世界生成。法則付与。聖灼獄雷永続陣、起動!」
模擬戦闘室が旅団長の魔法陣で光輝いたと同時に、聖属性の焔と聖属性の雷で満たされた。オーブンレンジの様に急激に温度が上昇を見せ摂氏数兆度は下らない熱が充満し雷が破壊音を鳴らしている。模擬戦闘室は旅団長が作り上げた別世界と成り、「対象を焼き雷で断つ」という法則が魔王へ襲い掛かる。
魔王「旅団長、お前に足りないのは純粋な戦闘技術だ。地力は申し分が無い。だがそのままでは格上相手に勝利を収める事は難しい。よく見て学べ!」
旅団長「っ!?そんな馬鹿な!?」
魔王「法則を流し、拳へ転換し、打つ!」
旅団長「ぐっ!?」
魔王「パンチくらい避けろ。腹に穴が開いてるぞ」
旅団長「セレー!」
魔王「その回復が隙になる!はっ!」
旅団長「転移!パーマラ・ズカロード!」
模擬戦闘室の「対象を焼き雷で断つ」という法則その物を魔王は武術によって拳へ流し込み、その力を旅団長の腹へ打ち込んだ。腹から血液が噴き出しているが回復魔法で即座に治癒を行う。その隙を突かれ魔王からの拳を喰らいそうになるが転移魔法で逃れ旅団長の全範囲による魔力収束砲が模擬戦闘室を満たす。
魔王「流し・・・いや、受けてやる。来い!」
旅団長「くらえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
魔王「うっ・・・ぐっぅ・・・!」
旅団長の「パーマラ・ズカロード」が魔王を焼き鳴らした。身体能力を封印して通常の人間の、それも少女並みの者が世界を数千回滅ぼしても余りある力を秘めた魔力収束砲を喰らえばどうなるか。それは死である。
旅団長「ハァ・・・ハァ・・・!?」
魔王「・・・」
旅団長「立ち上がった!?」
魔王は既に死んでいる。尚も肉体が立ち上がった。この事実に旅団長は驚愕し、見学していた一同も驚きを隠せない。
旅団長「シンだのにタチあがった・・・イミガ分からない・・・」
副旅団長「身体能力は普通の人間ですよね?ツキナ様は何かご存知ですか?」
ツキナ「あれは『起志生叛法』っていう身体操作技術っす。意志を強固に保つことで死にながら身体を動かす事が出来るんすよ」
梵創者「どういうゲンリ?イヤ、まさか!?意志だけでボクを騙しているノカ!?」
ツキナ「気付いたっすね。極限まで意志を固める事で死という理の適用を凌駕するんす。欠点は今みたいに世界管理者に気付かれる事っすね。まぁ気付かれた所で死なないのでどうする事も出来ないっすけど」
梵創者「ただの人間がここまで到達するの!?魔力も何もモッてないのに!?スゴい。スゴいスゴいスゴい!」
副旅団長「これが最強の人間、という事ですか」
ツキナ「そういう事っすね!」
魔王はゆっくりと身体を起こし武術の構えを取る。気配も無い。殺気も無い。指で軽く押せば倒れそうなか弱い人間。だがその姿に旅団長は戦慄を覚えた。死を超越した最強の人間が目の前に立ち塞がっている。そう、あの『蓋世の魔王』がこれで終わるはずがない。警戒しろ、体勢を整えろ!その予感が旅団長の本能へ訴えかけてくる。
魔王「に・・・んげん・・・の底力を・・・見せてやる。良く学ぶがいい」
旅団長「消えた!?ぐっ・・・!」
魔王「反応が遅い!それでも天使か!?」
この間0秒以下。武術により時間を超えて攻撃をされたのだ。旅団長は既に千回以上も攻撃されている。全身に攻撃跡が見られ血だらけになっていた。
旅団長「セレー!パーま・・・ぐううぅぅ!」
魔王「遅い遅い!速度上げてくぞ!」
魔王の攻撃は止まらない。一発一発攻撃を打ち込む度に速さが増している。1秒に百発。1秒に千発。1秒に1万発。1秒に1億発。1秒に1兆発。早く速く迅く!この世界の速度領域外へ脱出し時間を超越して拳を叩き込む。
旅団長「セレー!セレー!セーぐぅっ!」
魔王「そらどうした!肉体が削れて殴る場所が無くなってきてるぞ!」
旅団長「パーマラ・ズバースト56億門、ファイア!」
魔王「流し、転換し、打つ!」
旅団長「ここだ!」
旅団長は全魔力を込めた「パーマラ・ズバースト」を囮にカウンターを狙った。玉砕覚悟の一発だ。攻撃が真面に当たらないならせめて一発叩き込む。魔王に対して少しでも近付こうと魂を込めた一撃を準備する。魔王が放った拳に対して魔力で練り上げた槍を直撃させた。
魔王「ほう?」
旅団長「私にはこれしかない!これしかないんだ!地力で押してやるううぅぅぅ!」
魔王「その覚悟、王として応えよう。来い!」
旅団長「らあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
旅団長が魂の慟哭を挙げ魔王の拳に槍を押し込む。だがビクともしない。なぜなら「パーマラ・ズバースト」で魔力の大部分を使用し力が殆ど残されていないからだ。更に全身から血が噴き出し肉が削れ片目は完全に潰れている。それでも気合で槍を押し込んでいく。
魔王「いいぞ。少しずつ魔力が上昇しているな。その調子で限界を超えろ」
旅団長「ぐぅあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
魔王「む、拳に転換した力が無くなってきたか」
旅団長「押せおせおせおせおせえぇぇぇぇぇぇ!」
魔王「その押し込む力を吸収し、自重に加え、脚を軸にし、拳から放つ!」
旅団長「・・・!?」
魔王「旅団長、今説明した通りにお前も身体を使ってみろ。力は緩めるなよ?」
旅団長「ぐうううぅぅぅあああぁぁ!は、はいぃ!」
魔王「いいぞ、力が増したな。だがまだ甘い。腰をもっと捻ろ!左脚を12時の方向へ伸ばせ!」
旅団長「こ、こんな感じですかあぁぁぁぁぁ!?」
魔王「そうだ!後は力の流れを自重で感じろ!倍にして私へ放て!」
旅団長「ぐうううぅぅぅはああぁぁぁぁ!」
魔王「いいぞ呑み込みが早いな。だがまだ足りん!はぁっ!」
旅団長「・・・!?」
槍が折れた。だが即座に旅団長は槍を作り再度打ち込みに行く。すると旅団長本人も驚愕に満ちた。魔王の拳と接触した瞬間、鼓膜を破る程の轟音が響いた。模擬戦闘室に振動が響き渡り宇宙船が微細な揺れを見せた。見学に来ていたツキナと梵創者だけがこの一撃の威力を詳細に把握した。この一撃は世界の理を貫く寸前まで到達し、その影響で空間が歪んだのだ。
魔王「あと一歩だ。超えてみろ!」
旅団長「ぐああぁぁぁぁぁぁぁは、はいぃぃぃ!」
魔王「その調子だ!感覚を研ぎ澄ませ!」
旅団長「ぐぅぅぅぅ!!」
魔王「まだ足りん!ふっ・・・!」
旅団長の両目が潰れた。槍から伝わる魔力の流れを反射させ旅団長の眼球部分で爆発させたのだ。それだけに留まらず内臓から骨に至る全てを連鎖魔力爆発が襲う。
旅団長「ぐはっ・・・!?負けてたまるかぁぁぁぁぁぁ!」
魔王「よし、魔力がまた上がったな。もう一つだ!はぁっ!」
旅団長「・・・!?ふぅぅぅぅぅぅ!」
槍がまた破壊された。だが旅団長は不屈の心で槍を作成し魔王の拳を貫かんと再度打ち込みに征く。拳と接触した瞬間、雷鳴の如く轟音が響き渡り振動が宇宙船を揺らした。魔王の拳にダメージはない、だが魔王の背後にある模擬戦闘室の壁が大きく削れヒビが入っていた。
魔王「意志で理を超越したか。よくやった」
旅団長「まだだあぁぁぁぁあああああああああああ!」
魔王「いい根性だ。そのまま私を超えてみろ!ふっ!」
旅団長「ぐふぅ!止まるかぁぁぁぁああああああ!」
旅団長の心臓が完全に潰れた。魔力の巡回が途絶え、内臓機能が停止している。生命活動が停止し死へ至ったのだ。それでもなお槍を打ち込む力は緩まない。寧ろ魔力と身体能力が天文学的に上昇し魔王の拳を貫かんと進み続け、模擬戦闘室の壁が貫かれ亀裂が一気に入っていく。この模擬戦闘室は幾つもの結界陣と付与魔法によって強固な作りになっている。破壊するにはこの世界を数億回は滅ぼせる力を与え、同時に張られている魔法陣を打ち破る必要がある。旅団長の力がどれ程成長を成し遂げたかは壁の破壊跡が物語っていた。
旅団長「あああああああああぁぁぁぁ・・・・あ・・・あ・・・・」
魔王「潮時か」
旅団長「・・・っくぅ!」
槍が塵と化し旅団長が力尽きようとした瞬間、片足を突き気合で倒れるのを防いだ。
旅団長「ああぁぁ!ふぅ・・・ふぅ・・・ふぅ・・・!」
魔王「こいつっ!」
旅団長「ぐっ!・・・うぅ・・・!」
旅団長が魔王の腕に噛み付いた。攻撃手段が残されていない旅団長にはこれが精一杯の攻撃であった。絶対に一歩でも近付く、この人に勝ちたい!諦めない気持ちが生み出した心意の行動だ。
旅団長「うぅ・・・ふ・・・う・・・・」
魔王「凄い気合いだよほんと。てか両目が潰れてるのに噛み付いてくるとかホラー映画かよ」
旅団長「・・・」
魔王「離れたか。ふっ!」
魔王が自分の心臓を拳で叩いて蘇生を行った。模擬戦闘室に大きな打音が鳴り響く。
魔王「身体能力指定解放99%。今蘇生してやる」
旅団長「あれ・・・?」
魔王「起きたか?」
旅団長「私は・・・負けたのですね」
魔王「勝ち負けはそんなに気にする必要はないさ。まずは成長した結果を嚙み締めろ。壁を見な、ボロボロだ」
旅団長「あれは・・・私がやったのですか?」
魔王「気付いてなかったのか?お前の意志が私の拳を越えて貫くという結果を投影したのさ。因果を消去し意志のみで理を適合するとは、一つ壁を越えたな」
旅団長「私が理を・・・?」
魔王「よし、もう一度私に打ち込んで来い!さっきの身体の使い方を思い出せ!」
旅団長「はい!せやぁっ!」
魔王の蘇生魔法によって全快した旅団長が槍を作成して腹部に向かって打ち込んだ。瞬間、旅団長はこの世界から姿を消し次元を貫いた。時間を超越した槍が魔王の腹部へ直撃し、その影響で模擬戦闘室全体が大きくひび割れ雷鳴に似た高鳴りが爆音として響き渡った。しかし、なぜか旅団長は槍を打ち込む前の体勢に戻っていた。
魔王「やるじゃないか。模擬戦闘室がバキバキだぞ」
旅団長「あの・・・え?私は槍を本当に打ち込んだのでしょうか?」
魔王「今のは『技滅因覚理合』と呼ばれる身体操作技術だ。旅団長は槍で貫くという結果のみを私に打ち込み槍を構え私に向かうという因果を超越した。魔法を使えば簡単だが、身体操作のみでこれを行うのは中々難しい。成長したな」
旅団長「これが『斬らずに斬る』という事ですか?」
魔王「そういう事だ。まずはその理合を完全に制御しろ。そのままじゃ味方も巻き込む事になるぞ」
旅団長「味方も・・・」
魔王「それが可能になったらまた稽古を付けてやる。気張れよ」
旅団長「感謝致します!魔王様!」




