52 副旅団長vs魔王
一同が居るのは50km四方はある正方形の模擬戦闘室だ。他兵士も模擬戦闘まで見学に来ている
魔王「まずは副旅団長からだ。掛かってきな」
副旅団長「はい!」
瞬間、副旅団長が背後に約1000本程の巨大な鉄剣を再現する。
副旅団長「くっ!」
魔王「フェイントか?狙いがバレバレだ!」
副旅団長の顔から網目状の斬撃跡が見え鮮血が舞う。魔王に斬られたのだ。指摘された通り鉄剣は見掛け倒しで副旅団長の周りにはいくつかの罠が仕掛けられている。鉄剣を相手に視認させて投擲を読み接近してきた所を罠で攻撃する腹積もりだったが看破された。
魔王「罠を張るなら数を作れ。その程度では足らん」
副旅団長「まだです!グラリバースト!」
罠をそのまま起動させ模擬戦闘室が異様な音と黒の爆発に包まれる。「グラリバースト」とはブラックホールが生成される際に恒星が無数にぶつかり合う事で発生する爆発現象の事だ。物質の原子構造を跳ねのける性質を持っている。だがこの程度では魔王に傷を付ける事は出来ない。近付かれた距離を離すのが狙いだ。
魔王「ほう?権能を成長させたか」
副旅団長「訓練は欠かしてませんから!」
魔王「これではただの爆発現象だ。ふざけてんのか!?」
副旅団長「・・・!?消された!でも!」
黒が消え1本の巨大な鉄剣が現れる。グラリバーストで視界を塞ぎ次の攻撃手段を用意したのだ。副旅団長は鉄と空を司る神。そして、空は天でもあり宙でもある。訓練により成長した権能は宇宙空間に存在する全てを再現可能な域まで達していた。
副旅団長「練り上げろ私!限界を超えろ!あの者を破滅で埋めれる剣を!」
魔王「剣が本命か。いいだろう、避けずに全て受けてやる。来い!」
副旅団長「内側には重力崩壊、中側は核融合で補強、表側はビッグバン。術式は連続掃射、冠するは「超界始滅現象剣」!ハアァ!」
一本の巨大な鉄剣が赤黒く変色すると同時に形を縮めていく。その柄を副旅団長が握り魔王の頭蓋へ襲いかかる。接触した瞬間、宇宙の全てを破滅させる白の爆発が模擬戦闘室を覆った。
副旅団長「くっ!ビクともしない!?」
魔王「もう終わりか?」
副旅団長「まだです!術式起動!」
副旅団長が術式を起動しマシンガンで掃射するが如く白が連続爆発を見せる。身体限界まで連続爆発を止めないつもりだ。
副旅団長「あああぁぁぁぁぁ!」
魔王「気合は充分だが隙だらけだ!」
副旅団長「ぐぅぅ!死んでもやめるかああぁぁ!」
副旅団長の腹が抉れた。風系統の魔法が腹を貫通し血液が大量に流れ出て向こう側の景色を覗かせている。「超界始滅現象剣」に全力を注いでいるため回復に割くリソース源が無い。それでも副旅団長の目は死なず全力をこの攻撃に賭ける覚悟を決めた。
魔王「爆発の規模が少しづつ成長しているな。その調子で限界を超えろ!」
副旅団長「くっ、ぐううぅぅああああ!」
魔王「還れ」
副旅団長「!?」
白の爆発が反射され副旅団長の体内で爆ぜた。内臓が燃え尽き眼球から白の破滅が吹き出し副旅団長は体組織を崩される。
副旅団長「この程度でやめるかぁぁ!ぐうぅらあぁぁぁぁああ!」
魔王「副旅団長、そのまま聞け。爆発にしっかりと意識を向け権能へ融合させろ。性質の深淵を覗き意志へ染み込ませろ」
副旅団長「・・・!?はい!」
副旅団長は新たな力に覚醒しつつあった。宇宙の始まりであるビッグバン、恒星の終わりである重力崩壊、始まりと終わりである矛盾が上手く融合する事で「無限に成長する破滅の爆発」という技を概念へ昇華させ、さらには権能として得る可能性が生まれていた。その可能性を一瞬で見抜き魔王は指摘を行ったのだ。
魔王「その調子だ。段々と爆発音が無に近づいてきたな」
副旅団長「くぅぅぅぅぅううう!」
魔王「そうだそれでいい。物理現象から概念へ置き換えろ」
副旅団長「こ、こんな感じぃ!?」
魔王「ダメだ!爆発に気を取られすぎだ!発生源の性質に意識を向けろ!」
けたたましい轟音が徐々に小さくなり爆発のみが連射される。副旅団長は既に満身創痍だ。眼球の水分が全て蒸発し内臓が焼き焦げ全身が激痛に苛まれている。それでも気合のみで魔王を凌駕せんと鉄剣を頭蓋へ挑み続け限界を超えようと感覚を研ぎ澄ます。その光景を旅団長や梵創者、他兵士達が見学していた。特にこの世界を何度も無に帰す破滅の爆発を見た梵創者は驚きと恐怖を露わにしていた。
梵創者「アワワワワワワワワ!」
旅団長「ご安心下さい。模擬戦闘室は頑丈な作りになっていますから。この程度では傷も付きません」
梵創者「デモデモ!爆発が段々とツヨク恐ろしい物に・・・!」
ツキナ「確かにあれは凄まじいっすね。爆発から新しい何か、いや始まりそのものが生まれようとしてるっす。空を超え、天を超え、宙の限界を超えようと頑張ってるっす」
旅団長「うかうかしてると私は追い越されますね」
その時、副旅団長の動きが止まった。爆発の白が無に代わり音も消え振動のみが伝わる。
魔王「物にしたな。だが意識を失って爆発のみを臨界させてるな。連発速度と爆発範囲もどんどん上昇している。おい!回復してやるから目を覚ませ!」
副旅団長「・・・!?あれ?」
魔王「目が覚めたか?取り敢えずこの剣を私の頭から離して爆発も止めろ」
副旅団長「は、はい!」
魔王「権能が成長してるはずだ。使ってみな」
副旅団長「・・・これは」
魔王「宙の枠組みを超え始まりの全てを司る様に成長したな。おめでとう、鉄と始まりの女神よ」
副旅団長「ありがとうございました!魔王様!でも女神って柄じゃないですよ」
魔王「そうか?まぁ権能の域は出ないから所詮はその程度だがな」
副旅団長「手厳しいですね・・・」
魔王「当たり前だ。副旅団長、今お前に出来る事は新しい己を生み出すことだ」
副旅団長「新しい己?」
魔王「既存の力の限界を超え権能と融合させろ。そしてどの世界にも存在しない自分だけの攻撃現象を生み出せ。それがお前という鉄を練り鍛えるだろう」
副旅団長「自分だけの攻撃現象・・・ですか」
魔王「例えば始まりを鉄に含ませ概念を物理化したりな」
副旅団長「・・・!?感謝致します!」




