前章
「うっ...」
頭を鈍器で殴られたのかのような痛みに襲われた
今は地面に倒れているようだ。気絶でもしてしまったのだろうか
「よいしょっ」
立ち上がり、すぐ近くに落ちていた鞄を拾い上げる
一旦家に帰った方がいいな
そう思い再び道を歩き出そうと辺りを見渡す
しかし、そこには見覚えのある景色はなかった
「えっ、なにこれ」
目の前に広がるのは、鬱蒼と繁る木々と、見たことの無いような草花が生えているのみだった
さっきまでいたビルの立ち並ぶ都会ではなく、テレビでしか見ないような、いわば手付かずの大自然の中に一人突っ立っていた
「えーっと、これはどういうことだろうか」
あまりのリアリティの無さに、混乱してしまう
誰かこれがどういう状況か教えてくれんかな。Google先生なら教えてくれるだろうか...
「あっ、スマホがあるじゃん」
現実逃避の馬鹿げた思考だったが、そのおかげでここから抜け出せるかもしれない方法を見つけることが出来た
電話アプリを選択する。こういう時は誰にかければいいのだろうか。そう考えながらも自然と電話帳の一番上にあった母親を押した
「よしっ、これでどうにかなるかなー」
しかし、その安直な思考はすぐに打ち砕かれてしまった
電話はコールすらならず、代わりに感情のない機械的な女性の声が流れてきたのだった
「あれ、つながらないな」
そのことを少し不思議に思いながらも、次に警察へと電話をかけた
『この電話は、現在電場の届かないとこ...』
これはおかしい。警察だったら絶対にその二択にはならないはずだ。ならどうしてなのだろうか
「ここ圏外じゃん」
今更考えてみたらごく自然の事だった
これで全ては振り出しに戻ってしまったのだ
夢ではないかと思い頬をつねってみるが、鈍い痛みが返ってくるのみ
もしかしてこれは詰んでしまったのか
そのときだった...
ガサゴソ
後ろから草が擦れる音が鳴る
もしかして誰かが助けに来てくれたのだろうか
僅かな希望に縋り、後ろを振り向く。しかし、現実は無常だ
「グルルルル」
そこには純白の毛色をしたオオカミがいた。しかしその狼には1つ問題があった
「なによこれ、大きすぎない」
足から顔までの高さだけで、優に私の身長を超えていたのだ。これはいくらなんでもデカすぎる
逃げるべきなのだろう。しかし、体は命を狙われる恐怖で動かない
「ああっ...」
思わず床に崩れてしまう
も言う、目の前の死から逃げることは出来ない
こんなことだったらもっと親孝行しておくんだった。脳裏に厳しくも優しい母の姿が浮かぶ
「ごめんなさいっ」
涙ながらに今ここにはいない母親に謝った
その間にも狼は歩みを進め、既に息がかかるほどの距離にいる
後は目を閉じてその時を待つだけだ
ゆっくりと目をつぶる
「一刃流星」
凛とした声が響いた
恐る恐る目を開けると、そこには刀を片手に持ち、残心をする青年がいた
17歳ぐらいだろうか。黒髪で、痩せすぎでも太っている訳でもないどこにでも居そうな普通の青年だ。しかし、その瞳は深い海のような濃い青色で、そのせいかどこか冷たい感じがした
「そうだ、あの狼は」
前を振り向くと、血溜まりに伏せる先程の狼がいた
この子がやったのだろうか
すると青年がこちらにむかってきた。その顔には私を怖がらせないためか人の良い笑みが浮かんでいる
「大丈夫ですか?怪我はしていないですか」
先程とは打って変わって優しげな感じがした
「君は一体...」
混乱する頭の中その疑問を呟いた
すると青年は居住まいを正すとどこか誇らし気に、そして僅かに狂おしいまでの狂気を秘めた声でこう答えた
「特捜部、第一班隊長、氷浦 晴真です」
はじめまして、放課後デイスです。
今回は、ツナグモノを読んでいただきありがとうございます
これからも頑張っていきますので続けて読んで頂けたら幸いです
初めてなので誤字脱字や、シンプルに文章が下手かもしれません。生暖かい目で見守っていてください
感想やアンチコメがあったらどんどん書いていただけたらありがたいです
それではまた