第1部 転生のアメリカ編 VO11「憧れのルーレット」 (1990年)
ー転生のアメリカ編 VOL11
「憧れのルーレット」
ラスベガス 1990年3月
はやる気持ちを抑えきれずに
部屋に荷物を置いてモーテルを飛び出す。
周りを見ると広ーい空き地の向こうに
でっかい超豪華ホテルがズラリと並んでいる。
「あっちや!」
サブバッグを背負って走り出す。
真夏のような陽射しだ。
実際にホテル群の前まで来ると
その規模の大きさと豪華さに改めて驚く。
「うわあー、す、すっげえなあ!!!」
中に入ると冷房のせいもあるけど、
車が走ってひとがいっぱい歩いている外とは
まったく違う世界のように感じる。
この街のすべてのホテルの1階は
カジノになっているようだ。
ほのかに黄色い照明、
おびただしい数のスロットマシン、
そしてそこを抜けていくと、、、、
「おおっ!これやあ!」
キレイな緑色のテーブルがズラッと並ぶ。
ブラックジャック、ポーカー、バカラ、
大小、クラップス、そしてルーレット!!
白シャツの上にベストをきちんと着た
ディーラーが各テーブルごとに1人、
ルーレットの客が多い台では2人立っている。
迷わずルーレットの台へ行く。
直径1m、厚さ20cmほどもある
リッパなホイール。
白い玉の直径は2cmくらいある。
子どもの頃、近所のタダオちゃんのウチで
やってたのとはまったくのベツモノだあっ!
テーブルの上には1.5mほどにも渡って
1から36と0、00の数字、赤、黒、
奇数、偶数、数字の前半、後半の
表示などがあり、好きなところに
カジノ専用のチップを賭けるのだ。
(場合によっては現金でもおっけー)
空いてる席に陣取ってまずはディーラーに
現金をチップに換えてもらう。
手始めに100ドル。
100枚の1ドルチップが目の前に置かれる。
おおっ!!ホンモノやあ!
い、いよいよかあ!
いろんな賭け方があるけど
コツがわからないから適当に5ドルくらい
バラバラにチップを張ってみる。
ディーラーが白い玉を
ホイールのレールに沿ってシュッと回す。
10秒、、、、15秒、、、、。
プレイヤー達の熱い視線を浴びて
玉はスムーズに回り続ける。
まだあちこちにチップを張ってるひともいる。
ディーラーが片手をサッと前に上げて
ゆっくり横へ動かす。
「No more bet.」
この宣言の後、
もう決してチップをはることはできない。
玉が数字の書いたスロットの列の上に
落ちて跳ね回る。
カラン、、、カラン、、、
カラララララ、、、、、、
やがて玉が止まった。
「27、Red.」
隣に座る白人のおっちゃんが
小さくガッツポーズを取る。
ディーラーがテーブルに記された
27番のマスの上に高さ7、8cmくらいの
透明の円筒状のガラスのようなものを
トンと立てる。
5人ほどのプレイヤーがテーブルのあちこちに
張った何十枚ものチップは
当たったものを除いて驚くほどあっけなく
ディーラーの手によってサッと取り除かれる。
当てたプレイヤーの前にそれぞれの倍率に
見合ったチップの塊がグイッと差し出される。
ディーラーはすべての払い戻しが終わると
27番の上に置かれたマークを取る。
さあ、次のプレイが始まった。
「Cocktail!」
カクテルガールが露出度の高い
派手なコスチュームで注文を取りに来る。
プレイヤーは酒でもコーヒーでも
何でも無料で飲むことができる。
(礼儀としてチップを1ドルくらいは
渡すことになっている)
酔っ払わない程度に飲みながらプレイする。
ディーラーは数十分ごとに交替し、
周りのプレイヤーも抜けていったり、
入ってきたりするが、
勝ったり負けたりの波を感じながら
俺のプレイは何時間でも延々と続いてゆく。
食事、トイレ以外は中断することなく、
5~10時間くらいは賭け続ける。
日によっては1日トータル15時間以上
プレイすることもある。
カジノは24時間営業、年中無休。
建物の外に出ない限り、
今が朝なのか夜なのかもまったくわからない。
初めて味わう感覚。
ここには時間の概念がほぼ存在しないのだ。