第1部 転生のアメリカ編 VOL38「ショービジネスの国アメリカ」(1990年)
転生のアメリカ編 VOL38ー
「ショービジネスの国アメリカ」
ニューヨーク 1990年3月
ー前回からの続きー
ネコの着ぐるみを着てド派手なメイクを
した人がステージの袖から1人、いや1匹、
また1匹と出てくる。
全部で15匹くらいだろうか、
それぞれ体の色や模様が違っていて、
白、グレー、茶、黒、シマシマなど
バラエティに富んでいる。
おおーーっ、これがかの有名な
ロングランヒット「キャッツ」かあ。
でも残念ながらやっぱり英語のセリフが
全く聴き取れない。
ネコの世界を表わしているということ以外
さっぱりわからない。
うーーーん、ハッキリ言って退屈だ。
皆が笑っていても俺には意味がわからないから
口惜しい。
やっぱり言葉がわからないと
楽しめないのかなあ?
それともやっぱりミュージカルが
俺には合わんのかも。
ひときわデカく、ボロい装いの
長老ボスネコみたいなやつが
スポットライトを浴びて歌い出す。
「メーモリー、
ほにゃらーりらメーモリー、、、、」
この歌はさすがに俺でも
何度も聞いたことがある。
長老ネコの歌唱力は主役だけあって
さすが上手い!
あれ?ステージの下の方で誰かが
動いてることに気付く。
よく見ると半地下で正装をした
クラシックバンドが演奏をしている
ではないかっ。
生演奏かあ。さすがやなー。
(日本ではほとんどないと思う。
でも2010年頃?から映画館で
有名映画作品+オーケストラ生演奏の
上演は始まってきている。)
ネコ達は個性的だ。
2匹で体を逆さまにして抱き合った姿勢で
ステージの端から端まで側転をしたり、
見事なバレエを披露するネコが
片脚でくるくるくるくる、、、、。
40回くらい!回ると客席からは
惜しみない拍手が送られる。
メスネコにはコケティッシュなのもいれば、
ネコのくせに妙に体の線や動きが
悩ましいやつもいる。
いかんいかん!ネコに欲情したら
ケダモノになってしまう。
ネコの忍び足やダンスなど、その動きに
ピッタリ合わせた生バンドの効果も絶妙だ。
段々ほんとにこんな世界が
ここにあるような気になってくる。
休憩ー。
ロビーに出るとまた大勢の人がコーヒーなどを
飲みながらワイワイ賑やかに話している。
明るい照明の中で頭が現実に戻る。
皆平和で楽しそうだ。
ニューヨークのひとはこうして
世界で認められるミュージカルの頂点の作品を
ちょっと贅沢な映画館程度の感覚で
気軽に楽しめるんやなあ。
ラスベガスでも同じく、アメリカでは
ゴージャスな舞台装置やトップレベルの
アーティストが演じてる立派なショーで
ありながらとにかく安くてほんとに羨ましい。
敷居を高く感じてしまう日本のミュージカル、
バレエ、クラシックコンサートなどの
料金とはまったく比べ物にならない。
こうしてクオリティの高いアートに
馴染みやすいという環境が
自然に民衆の感性を磨き、ショーや音楽などに
関わっていくひとたちの裾野の数の多さ、
厚み、そしてその中から昇っていく者の
レベルの高さを造り上げているように思う。
アートとは贅沢な娯楽ではなく、
誰もが感性に身を委ねる身近な機会
となるものであってほしい。
ロビーにブザーの音が響く。
さあ、後半が始まるぞっ。
(いよいよ最終話「魂を揺さぶるショー」に続く)