第1部 転生のアメリカ編 VOL37「サブウェイ井戸端会議」(1990年)
ー転生のアメリカ編 VOL37ー
「サブウェイ井戸端会議」
ニューヨーク 1990年3月
ー前回からの続きー
けっこう混んでる車内でつり革を掴んで
立つ俺の前に座っているおばちゃんに
声をかけてみる。
「すみません。
初めてミュージカルを観ようと
思うんですけど、ボクには英語の聴き取りが
難しいんです。
ストーリーがよくわからなくても
ダンスや歌で楽しめる
いいものを知りませんか?」
おばちゃんは
「そうねえ、、、
マイフェアレディはどうかしらねえ。」
と言う。
その横に座ってる別のおばちゃんが
「コーラスラインもいいわよ。」
と言う。
俺の横に立ってるニイチャンは
「キャッツがグーだぜ。」
と言う。
おっちゃんは
「イトコがシンギングインザレイン
がいいって言うとったぞ。」
と言う。
「私は観たことがないけど隣の奥さんが
言うには、、、、」
それまでは静かな車内だったのにこれを機に
知らない者同士5、6人でワイワイガヤガヤ
あれがいい、これがいいと大騒ぎになる。
アンタらもしかしてみーんな
知り合いとちゃうの??
すぐ話題に入ってくるんやねえ。
オモシロイ。
大阪の御堂筋線では考えられへん。
収穫アリ!やったなー。
結局キャッツに決めた。
みなさん、ありがとう。
タイムズスクウェアに行く。
イエローキャブにドでかい派手なカンバン、
電飾。
SONYなど日本の会社のものも
いくつかある。
おおーっ!ここも映画やニュースで
何度も見た風景やなあ。
ここにあるチケットブースで午後3時から、
その日に上演される有名作品のチケットの
売れ残りをなんと半額+2ドル('90当時)
で販売しているのだ。
すーごい行列やなあ!
なんてこった!
群集と行列がダイキライな俺は
メゲかけるけど仕方なく並ぶ。
風がピューピュー吹いてかなり寒い。
今まで廻ってきた暖かかった街と大違いだ。
(サンフランシスコだけは寒かったけど)
前後の人と話したりして結局
なんと2時間近く!もかかって
やっとキャッツのチケットを手に入れる。
あーしんどお!さぶかったあー!
値段は忘れたけど20ドルも
かからなかったように思う。
超一流のショーというのに
日本では考えられない安さだっ!
(ここと全く同じシステムで、
ワールドトレードセンターの
チケットブースでは10分も並ばずに
買えることを後で知る。
チクショウ!
この後2回NYに行ってそこで買った。
でもワールドトレードセンターは
もうなくなってしまった。
何回も通ったあの立派なツインタワーが
崩壊した時はすごいショックで
寂しく感じた。
現在そのチケットブースがどこかに移動して
営業しているのかどうかは知らない。)
夕方ー。
天下のブロードウェイの劇場に行くのに
ボロいジーンズにジージャンでは
周りの人に不快感を与えるかと思って、
日本から持ってきた白シャツ、
黒ジャケット、革靴で向かう。
これで今日は俺もジェントルマンじゃあん。
むふふう。
チケットを示すと係員が席に案内してくれる。
右の端の方だけど真ん中より少し後ろくらい。
そんなに大きな劇場じゃないから
ここで十分よく見える。
ロビーに行くとシックに決めた中年夫婦や
普段着の家族連れ、いろんな人が立って
コーヒーを飲んだりしてワイワイ楽しそうに
開演を待っている。
これがブロードウェイミュージカルを
観るひと達の空間かあ。
ゆったりした余裕を楽しむのも
素敵な時間なんだな。
おっ、そろそろ始まるぞっ。
(次回「ショービジネスの国アメリカ」続く)