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第1部 転生のアメリカ編 VOL3「キョーフの洗礼」、VOL4「紫色の波」、VOL5「変人さん大集合!!」(1990年)


ー転生のアメリカ編 VOL3ー

「キョーフの洗礼」

ロスアンゼルス 1990年3月


「地球の歩き方」であらかじめ決めていた

ホテルに到着。

チェックインでもことばがよくわからず

おばちゃんにメンドクサそーな顔をされて

ややメゲる。

う〜ん、日本にいるガイジンと話すより

コッチの方が手加減なしの会話で

やっぱりムズカシイ!!


部屋に案内されてベッドの上に

ドサッと寝っころがる。

「ああーーー!

なんとかちゃんとひとりで

ここまで来れたぞお!」

ちょっと休憩して、

サブバッグをしょって外に出る。

もう夕方の4時。

今日は軽く散歩するだけにしよか。

ところがっ!!

海外旅行初日にいきなりこんなオソロシイ目に

遭遇することになるとはっ!!


ホテルから一周1時間か1時間半くらいで

くるっと右回りに歩くことにした。

高層ビルがいっぱい建ち並んでいる。

大阪よりもビルは高いなあ。

でも日曜だからかほとんど人は歩いていない。

リトル東京の南の方へ歩いていくと、

なんか急にあちこちにゴミが落ちてて、

壁はスプレーで落書きだらけで、

時々小便臭い匂いが立ち込める

荒廃とした雰囲気になった。

人通りはぱったり途絶え、

フラフラ歩いてくるヤツは

目がトンでる黒人ばっかりだ。

俺に向かってよろよろと手を差し出し、

「クォ−ター、、、

クォ−ター(25セント)をくれよぉー。」

と声をかけてくる。

「お金ない! ない!」

足早に通り過ぎると

ゾンビ2号、3号、4号が次々と

フラフラ現れて俺に手を差しのべる。

「おかしい!! なんやここは!?

なんであんなヤツらしかおらんねん!?」

まっすぐ行っても曲がっても、

アブナイ雰囲気が濃厚、乙女のピ~ンチ!

あっちの方では若い男2人が叫びながら

ビールビンを壁に投げつけている。

慌ててまた曲がる。

「あかん!!」

初めて味わうホンモノの緊迫感だ!!

だんだん早足になってくる。

もう今さら戻っても遅い。

早くこのエリアを抜けなければ!!


大勢の人間の話し声が聞こえてきて

そこを見ると、道の反対側の広場に

黒人がなんと30人くらい集まっている!!

「ぐええええっ!!!

あれはなんの集団やあ!?」

心臓がバクン!バクン!と暴れる。

でっかいカセットデッキを

ガンガン鳴らしたりしている。

「ゼッタイ目を合わせたらあかんぞお。

黒人って足速いみたいやしなあ。

もしあれが全員でわああーって

追っかけてきたら一体どないなるねん!?」


さらに5分ほど行くと

また同じような集団に遭遇した!

バクン!!バクン!!

不自然なほどの早足でそこを通り過ぎる。

「もうカンベンしてくれええー!!!」

ゾンビどもをかわしつつズンズン進んでいくと

やっと100mほど先に交差点が見えた。

信号待ちの白人の親子が笑って立っている。

車も走っている。

「ああ! 助かったああああああああ!

安全やあ! 文明やあ!」


外国初日で15分ほど(?)の

キョーフの洗礼をクリアした俺は

今まで毎日ぼんやり安全に生きてきて、

ずっと封印されてた危険を感じる

原始本能を今日呼び覚まされた気がした。


「人間もやっぱり動物なのだっ!」


※ホテルの部屋に戻ってきて

「歩き方」を見ると、

リトル東京の南側のエリアは

昼間でもかなり治安が悪いから行くな、

と書いてあった。

推測やけどあとで冷静に考えると

あの集団はホームレスで、

食事配給を受けるために

集まってたんとちゃうかなあと思う。

当時から俺には黒人の友達も数人いたし、

黒人を差別する気はもちろんない。




ー転生のアメリカ編 VOL4ー

「紫色の波」

ロスアンゼルス 1990年3月


「キョーフの洗礼」の翌日、

ダウンタウンをうろつく。

月曜なので今度は店も開いてるし、

ひともいっぱいいて街は活気づいている。

話相手もなく、ひとりでただまわりを見ながら

歩いているだけなのに、

サビシイなんてまったく思わないどころか

興奮してウキウキしてくる。

「すごいなあっ!

今、俺はテレビや映画でしか知らんかった

アメリカをひとりで歩いてるんや!

知り合いもひとりもおらん。

俺が望めばスタンバイパスで

明日ニューヨークでもラスベガスでも

どこでも行けるぞお!

完全な自由やあ!!」


昼食がてらメキシカンレストランに入る。

直径80cmくらいのでっかいハットを

被って飾りの付いた服で揃えた

ヒゲ男達のバンドが明るい曲を演奏している。

「マルガリータあ! セニョリータあ!

テキーラあ!」

タコスを食べるけど、

残念ながら妙な味で口に合わなかった。

コロナビールを飲んで演奏と雰囲気を楽しむ。


翌日、バスでサンタモニカビーチへ向かう。

方面によってバス停が違うので

地図で調べて行くけど

バス停の場所が変わってしまってて、

ひとに訊いて廻ってナンギする。

「地球の歩き方」はホンマに役立つけど、

情報が古かったり、不正確なことも多い。

やっとバス停にたどり着いてバスに乗り込む。

日本みたいに「次は、、、、」なんて

アナウンスをしてくれないから

地図と窓の外の通りの名前とを

照らし合わせながら現在地を把握するか、

ドライバーに降りたい場所を伝えて

そこに着いたら教えてもらうようにする。


到着ー。

モーテルの部屋を確保して

さっそくビーチを歩く。

ここはたいてい風が強いような感じだ。

真っ青な空に真っ白なカモメが

気持ちよさそうに飛んでいる、

というより風に乗って浮かんでいる。

パームツリーがここにはよく似合う。

広おーいガラガラの駐車場では

ローラーブレード

(’90当時、日本にはまだ入ってきていない)

やスケートボードに乗って、

でっかいウィンドサーフィンの帆を掲げて

けっこうなスピードで滑っている

ひとらを見て驚く。

「ナルホドなあ。」

いつも風が強いこの環境ならではの発想だ。

アメリカ人はなんでも遊びにして、

その内の一部はやがて競技へと発展していく。


夕方近くなって風が冷たくなってきた。

暖かいロスアンゼルスとはいえ

まだ3月下旬だ。

浜辺にはジョギングや散歩するひとが

たまに通るだけになった。

遅い夕暮れ時ー。

あの陽の沈む方に日本がある。

あっちは今、昼過ぎなんやなあ。

ここの夕焼けはなんてキレイなんやろう。

やがて沈もうとする太陽から

こっちへ向かって海の上をゆっくりと

オレンジ色の帯が繋がってくる。

浜辺に膝を抱えて座った俺は

寒さで震えながらもその美しさに惹き込まれ、

ここを去ることができない。


そして俺は見た!!

打ち寄せる波を通して夕陽が染まり、

なんと波自体が「紫色」に見えるのだ!!

紫色の波ー。

見たことのない神秘的な風景。

小学生の時に赤と青の絵の具を混ぜると

紫になるのを知った。

でもこんな形でそれを見れるなんて、、、、。


サーファーでもある画家

クリスチャンラッセン達の絵の波の色が

誇張されたものや妄想ではないことを

俺は知っている。




ー転生のアメリカ編 VOL5ー

「変人さん大集合!!」

ロスアンゼルス 1990年3月


さあ着いたぞ、ベニスビーチ。

ここは大道芸人や個性的なヤツらが集まる所。

頭にジャラジャラ飾りをつけた女、

タトゥーを腕にいっぱい彫ってる男、

かなりアヤシイヤツらが道端に紫の布を広げて

アクセサリーを売ったり買ったりして

たむろっている。

今日も天気がええなあ。

空気がカラッと乾燥してて快適だ。

3月なのに俺もTシャツ、短パンに

サンダルというイデタチである。


浜辺の店で缶ビールを買って

その場でプシュッ!と開けて飲む。

「んぐんぐ、、、、

ぷはあああ!!、、、、ん?」

顔にいっぱいピアスを着けた

ピンクの髪の女やドレッドヘアーの男らが

みんな俺の方をじっと見ている。

眉をしかめてまわりをキョロキョロしながら

「アンタそれはヤバイよお。

こんなとこでビール飲んじゃあ。」

と言う。

ロスアンゼルスでは公共の場で

アルコール飲料を飲むのは

法律に触れるそうだ。

「ええっ!?

でももう開けちゃったし、、、、。」

「んじゃこうやってこの紙袋の中に入れたまま

飲めばわからないよ。」

親切なパンク野郎が俺の手を取って

忠告してくれる。

「でもここはポリスがちょいちょい来るから

早く飲んじまいな。 さあさあ!」

ここに着くなりなんでこんなアヤシイ男女に

公衆道徳を教えられて、

ビールのイッキ飲みをやらされてるのだ俺は?

飲み終わるとみんなニカッと笑って

「Gooーーd!」と親指を立てた。


ローラースケートをレンタルしてうろつく。

ここは浜辺に沿ってローラースケートと

自転車専用の道もつくられている。

なんかウキウキしてくるなあ!

30m置きくらいに大道芸をやっている。

火を吹くヤツ、砕いたガラスの上に寝て

観光客の女のひとに踏んづけられてるヤツ、

自作のテープに合わせて

ブレイクダンスを踊るヤツ、

周りの観光客がどこから来たのかを訊いて

即興でそこにちなんだ歌をラップで歌うヤツ、

自作の木彫りのハープみたいなでかい楽器で

素晴らしい音色を聴かせてくれるヤツ。

みんなこれで食べてるんやろか?

すごく気になる。

なんでって俺もこうして生きていけたらなあ、

って思うから。

外国で大道芸人として食べていけたら

どんなにステキやろう?


このビーチはなかなかオモシロイ。

なぜか本格的な筋トレの設備もある。

金網で囲っただけでもちろん屋根なんてない。

さわやかなお陽さんの下でムキムキ野郎どもが

真剣にトレーニングしている風景は

どこか異様だ。

毎年ここで行われる

「マッスル(筋肉)ベニス」という

筋肉マンコンテストは有名である。

他にスカッシュ、ミニテニス?

(日本にはないと思う)、

バスケットのコート、高鉄棒、吊り輪、

平行棒、ボクシングのパンチングボール、

ブランコなどいろんな遊び道具が

設備されていてすべて無料だ。


「あ〜らこんにちは、奥さあん。」

と挨拶しているオバサンの肩には

何気なく鮮やかな赤のでっかいインコが

乗っかってるけど相手のオバサンは

別に驚くということもない。

空には10m四方くらいもある凧?を

セスナで引っ張ってるのが飛んでいる。

(離着陸は一体どうやるのだ?)

国籍不明(インド?)の

浅黒いオッサンギタリストは有名で

ここでは絵葉書にもなっている。

ローラーブレイドを履いて、

白いターバンに白い上下繋がった服に

濃いヒゲ面。

腰には小型のマーシャルの

電池駆動アンプを付けて、

ディストーションをギンギンに効かせた

ギターの演奏と何語かわからない

フシギなロックソングを披露する。

(後でこのオッサンが映画「007」や

「アサシン」にも出ているのを見て

ビックリ!)


この日、俺は心ゆくまでローラースケートで

フシギビーチをうろついたのであった。


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