第1部 転生のアメリカ編 VOL24「ジャズな夜」 (1990年)
ー転生のアメリカ編 VOL24ー
「ジャズな夜」
ニューオーリンズ 1990年3月
ー前回からの続きー
ミシシッピー川に沿う湿地帯に発展した
この地方はディープサウスと呼ばれ、
アメリカの中でも外国のような
一種独特の雰囲気が漂う。
フレンチクウォーターと呼ばれる
街の中心部の建物からは
フランスの植民地だった頃の歴史的背景が
強く感じられる。
洒落たデザインの2階のテラスの
手摺りの向こうには楽しそうに酒や何かを
飲んではしゃぐ人達の笑顔が見える。
メインストリートである
バーボンストリートにはたくさんの人がいて、
観光客相手の馬車が走っている。
この通りとセントピーターストリートには
ジャズだけでなく、ロックその他の
質の高いライブを安く観れる店が
ずらっと建ち並ぶ。
たいして長くない通りを歩いていく。
オモシロイことになんと左右にたくさんある
ライブハウスのドアは全て半開きになっていて
中の様子はチラッと見えるし、音も聞こえる。
通りにはいろんな楽器の音、歌声、
マイクで話す声、観客の声援、拍手など
いろんな音があふれ返っている。
それぞれのドアの前には
5〜20人くらいの人が露店でたった1ドルで
売っている500mlほどの
プラスティックカップ入りのビールや
この地方の名物カクテル「ハリケーン」を
飲みながら、首を伸ばして中を覗いて
ライブの質の値踏みをしている。
気に入ったバンドだと思うなら中へ入って
座ってゆっくり観ればいいのだ。
入場料はなく、4、5ドルのドリンクを
1杯注文すればOK。
世界的に有名なジャズライブの中心地
というのになあーんて太っ腹な
スタイルなんやろう!!
俺も習って1ドルのビールを飲みながら
あちこちのドアの前で彼らに混じる。
うーーん、いいねえ。ワクワクしてくる。
たまにはジャズもイイ。
さあニューオーリンズの夜が始まったあ!
2、3軒のライブハウスを外から見て廻って
適当な店に入ってジントニックを注文する。
4ドル。
たったこれだけでライヴを楽しめるのか。
ラフなシャツ姿のオジサンのジャズバンドが
演奏している。
ギター、ベース、ドラム、ラッパが2人
という構成だ。
古びた赤茶色のレンガの壁をバックに
シブイ演奏が続く。
メンバーは皆堂々としていて、
曲の合間には軽くジョークを交わし合ったり
リラックスしている。
いかにもライヴ慣れしているみたいだ。
管楽器の音はなんとも味わい深くてイイ。
サックスなんてやってみたい気もする。
(まさかこの時は、半年後に知り合う
イギリス人と無二の親友となり、
20年後に彼と作ったロックバンドで
ハードロックカフェや
インターナショナルバーで
年間60日120ステージ近くのライヴを
こなしていくことになるなんて
想像もできなかった!)
数曲聴いて店を出て、
賑やかな通りを歩いていく。
また別の店に入ってしばらく聴いた後、
通りを折り返す。
「よおーーし、次行ってみよう!」
ゴハンゴハン。
この街にはいくつかの名物の食べ物がある。
まずは牡蠣を食べよう。
すごく安くてウマイという話である。
「地球の歩き方」に載っている
オススメの店がなぜか見つからないので、
ガラス越しに目の前で店員が金属の棒を使って
手際よく貝から牡蠣をジャンジャン
剥がしているのが見える店に入る。
カウンターの足元の床は客が捨てた貝殻や
エビの皮で散らかっている。
よく夜中に行く堺の港の近くの魚市にある
天ぷら屋を思い出すなあ。
「地球の歩き方」で見つけた店ほどは
安くないけれどオイシイ。
半ダース食べる。
スープ類に目がない俺は名物「ガンボスープ」
にトライする。
(この店のはイマイチだったけど、
ここに滞在する間に3軒くらいで食べて
すごくオイシイのにあたって満足!
しかし帰国後も食べたくてレシピを調べたら
なんとキライなトマトをベースに
したものであったことがわかり愕然とする!
何回か食べたのに気付かんとは
ほんまにアホである。)
それにしてもラスベガスの各ホテルが
提供しているビュッフェ
(日本でいうバイキングスタイル)が
すごく安く、質もわりとよかった、
ということもあってかこの街の食事は
すごく高くつくように感じるなあ。
続いてハリケーンも飲む。
辛いもん中毒の俺にはちょっと甘すぎるけど
味はまあまあだ。
でっかいゴブレットに入っていて
これ1杯だけでもけっこう酔ってしまうかも。
「よおーーし、次行ってみよう!」
(「ストリップに気をつけろ!!」に続く)