第1部 転生のアメリカ編 VOL15「オランウータン対ニンゲン!」 (1990年)
ー転生のアメリカ編 VOL15ー
「オランウータン対ニンゲン!」
ラスベガス 1990年3月
ー前回からの続きー
スターダストホテルのショー
「リド.デ.パリ」はいよいよ
クライマックスを迎える。
ここの目玉の見世物はオランウータンと
ニンゲンとのコメディショーである。
ステージの端からお決まりのような
チョビヒゲを付けたオッサンが登場する。
「!!!」
ごく自然に5匹のオランウータンが
その後に続くと会場がどよめく。
彼らは横に一列に並べられた
高さ50センチくらいの台の上に
ササッと上がって観客席の方を向く。
5匹の真ん中にいるヤツがデカイ!!
オッサンが小柄なのかもしれないが
背丈が同じくらいなのだ!
ヤツは台からスルリと降りると
オッサンに近づいてゆく。
オランウータン独特の長あーい腕を伸ばして
オッサンとまさに友達同士のように
馴れ馴れしく肩を組むと、
歯ぐきをむき出して「ウッシッシッシ!」
と笑うのである。
このシーンがホテルの表にデカデカと掲げた
「リド.デ.パリ」のカンバンの
絵になっている。
つられてつい観客も大笑いしてしまう。
マジい!?
中にニンゲンが入ってるんちゃうんかあ!?
もうこの時点ですでに我々全員が
彼らの術中にハマっているのだ。
オッサンがやや威厳を取り戻して
そいつを自分の場所に戻らせる。
彼がオランウータン達に芸をさせようと
ステージの端の方へ何か道具を取りにいく。
反対の端の台に座ってたオランウータンが
タタタッ!と走ってきて、
オッサンの置いていた物を取って
自分の場所に素早く戻る。
ステージ中央に戻ってきたオッサンが
それに気付いて取り戻しにいき叱っていると、
別のオランウータンが
オッサンの後ろから近づき、
片手の中指を立てておシリに突き立てる。
それに合わせて「ドン!」と
生のドラムの音が鳴る。
オッサンは背中を反らして驚く。
会場が大笑いする。
アメリカ人が好きな古典的なネタだ。
そいつを叱ってるとまた別のヤツが
ちょっかいを出すというパターンだが、
それぞれキャラクターが違ってておもしろい。
要所ごとに鳴るドラムの「ドン!」が
うまいアクセントになっている。
そしてその時は来た、、、、、。
繰り返されるオランウータン達のイタズラに
ついに爆発したオッサンは彼らのリーダーの
あのデカイヤツと向かい合い、
ほっぺたになんと平手打ちを食らわせる!
「ドン!」(ドラムの音)
それも生やさしくなくキツく、バシイッ!と。
するとまさか、、、、
ヤツも殴り返したあ!「どん!」
えええーーーっ!!??
オッサンは負けていない!
またも殴る!「ドン!」
ヤツもまたやり返す!「どん!」
タタカイはますますヒートアップしてゆく!!
「ドン!」「どん!」
「ドン!」「どん!」
「ドン!」「どん!」
「ドン!」「どん!」、、、、。
初めて見るオランウータンとニンゲンの
腕を振り回しての激しいどつき合い!!
オッサンの髪は乱れ、観る者は圧倒され、
場内は笑いと驚きの渦に
飲み込まれた、、、、。
この後、鉄棒みたいなもので
リーダーのヤツが連続大車輪を披露し、
最後に5匹揃って二十日ネズミが回す
ホイールを大きくしたようなものに
大の字に掴まってくるくる回って幕が閉じた。
ショーのラストに数回目の美男美女達による
華やかなダンスが繰り広げられて
90分のエネルギーに満ちたステージは
全て終了した。
うーーーん、満足である!!
カクテル2杯付きで20数ドル
(当時4000円弱?)でこの内容はカンゲキだ。
出演者は皆、真剣で生き生きしている。
しかし夜、この光のステージに誇らしげに立つ
彼らの笑顔の向こうには
昼間のたゆまぬ地道な練習と努力の痕跡が
ひしひしと感じられるのだ。
彼らの汗は美しい。