9.
昼食を賭けた剣の勝負が始まって十分。
シャルロッテは、地べたに這いつくばっていた。
一回も剣を入れる事が出来なく、逆に剣を いや、木の枝を食らって四回目の四つん這いに甘んじていた。
「く くそう・・・こんなばかな。あたしが一方的にやられるなんて」
メアリーの方はというと、息も乱れておらず平然としている。力の差は歴然であった。
「どう?見習いさん。まだやる?」
「くうう・・・」
シャルロッテは、両手で土を握りしめたまま口もきけない有様だった。
「じゃあ、お昼ご飯よろしくね。アナスタシア様も食べるんだから、食べられる物をよろしくね」
そう言うと、建物の方に歩き出したが思い出した様に振り返った。
「ああ、言い忘れてたけどね。あなた、聖騎士の階級について理解してる?」
「階級・・・?」
「そう、階級。聖騎士団では家柄よりも階級の方が優先されるのは知ってるわね。私は各地を転々としていて王都勤めしてないから、あなたは知らなかったのでしょうけど、これでも聖騎士団特務部隊第三中隊長、階級は中尉よ。あなたは見習い、あなたと私の立場の違い理解出来たかしら?侯爵家のお嬢さん」
「な なんでそんな人が?」
「それだけ、この任務が重要だと認識しなさい。後、私たちはあくまでもアナスタシア様に対しては使用人として接する事となるので余計な事は話さない様に。いいわね」
階級を持ち出されたら、良いも悪いも無い。納得しようがしまいが、無条件で承服しかなかった。
あたしは、よろよろと立ち上がり敬礼をした。
「承知しました。以後指示に従います」
「敬礼も無し!誰かに見られたらどうするの?」
そう言うと、再び建物の方に歩き出した。
「ううんんん、なんか悔しい」
しかし、こればっかりはどうしようもなかった。
建物に入って行く黄色いツインテールを黙って見送るしかなかった。
建物に入ろうとしたメアリーは、ぎょっとして足を止めた。
そこには見習い娘の執事が静かに佇んでいたからだ。
全く気配が感じられなかった。
「私に気配を感じさせないとは、あなた何者?只の執事ではないわね」
「失礼を承知でお伺いします。あなた様は、もしかして聖騎士団開闢以来最高の剣士と言われたエルンスト・ガトー殿のお身内なのではないでしょうか?」
私の質問をスルーして質問して来たか。
「爺様を知って居るのか?」
お?常に無表情かと思っていたが、驚きの表情も出来るのか。
「おお、エルンスト殿のお孫様でありましたか。すると、疾風迅雷のメアリーアン殿ですな。私はお爺様の元で日陰の生活をしていた者であります。今は老いさらばえた只の爺で御座います。お時間を取らせてしまいましたな、申し訳ありませんでした。では、失礼致します」
言いたい事を言うとさっさと建物の中に入って行ってしまった。
「本当に年寄りはマイペースだな。しかし、爺様の部下が生き残っていたとはな。ふふ、道理で気配を消せるわけだ」
あの爺様が居るのなら、ここの守りも安心だ。問題はあの小娘だが、ま、なるようになるだろうて。
私は建物の中には入らず、畑のアナスタシア様の元へ行く事にした。
あたしは、両手を握りしめてじっと足元を見ていた。
頭の中が真っ白で、何も考えられず、只足元を見つめていた。
どの位そうしていたのだろうか、ふいに声を掛けられた。
「お嬢様、お昼の用意を致しませんともうじきお昼で御座います」
声を掛けて来たのはジェイだった。
「アナスタシア様をお待たせしてはいけないのでは?」
相変わらずのんびりとした口調だ。一体生まれてから慌てた事があるのだろうか?
そう思ってしまう。
「ん、支度する」
そう言うと、重い足取りで建物の中へと向かった。
「ちなみにお嬢様、何をお作りになりますので?」
思わず立ち止まってしまった。そう何も考えて居なかった。というか、料理なんて作った事が無かった。
何を作ったらいいか皆目見当がつかない。ジェイが作った食事を思い出そうとするが、作り方が分からない。
パンに目玉焼き?目玉焼きもうまく作る自信がないし、そんな物を聖女様にお出しする訳にはいかないだろう事は分かる。
だからと言って、何も作れない。悔しくて俯くと涙が次から次へと流れ出て足元にぽたぽたと落ちる。
「お嬢様、今回は私がお作りします。メアリー様には事情を説明して謝って、次回からは私がお作りしましょう」
「ジェイ、、、ごめん」
「ようございますよ。では早速食事のお支度をしますので、お嬢様はメアリー様に謝りに行ってくださいませ」
「うん」
気は重かったんだけど、メアリーの所へ向かった。確か、畑の方に行ったはず。
重い足取りで、建物をぐるっと回って南側の斜面に回る。が、歩き始めて直ぐだった。
何気に空を見上げたとたん、直撃を受けた。
鳥の糞だった。
しかも、なんだこの量はっ!バケツ一杯はあろうかという量が飛散もせずに塊で落ちて来た、、、、顔めがけて。
敵は空にも居た。あの高さから落として飛散しないで地上に着弾するっていう事は、、、粘性が強いって事だ。飛散しないので悲惨だ。
確か修道院の入り口の脇に井戸があったはず。直ぐに井戸に向かった。
なるほど、この為に井戸が入口の脇にあるのか。
感心しながら桶を井戸の中に落とした。着水する音がしたので引き上げるが手ごたえがない。縄が途中で切れたみたいだった。
メアリーとの試合であらかた気力が刈り取られていたが、この縄が切れた事で残ったわずかな気力も根こそぎ刈り取られてしまった。
全身糞まみれのまま井戸の脇でへたり込んでしまったので、遠くからみたら巨大な糞の塊に見えただろう。
そこに更に着弾。もう、糞を拭う気力も無く、まさに、巨大な糞塊と化していた。
ここから先は記憶がなかった。
「あらっ!大変」
畑仕事から帰って来たこの修道院の主であるアナスタシアが目ざとく糞塊を見付け駆け寄って来た。
「おやおや、このお嬢様は何をやっているんだか・・・」
メアリーは、この巨大な糞の塊を見て、呆れはてて苦笑いをしていた。
「アナ様、ここは私がやりますので、どうか中にお入り下さいませ」
「え?でも、大変ですからわたくしも・・・」
「それにはおよびません。ここはお任せ下さい。さ、中に」
「そうですか?では、申し訳ありませんが、宜しくお願いしますね」
「はい、お任せください」
アナスタシア様は、収穫した野菜を抱えて建物に入っていった。
「さて、この糞の塊 どうするかな」
まずは、水をぶっかけて・・・・と井戸の中を見ると、縄が切れていて底の方で桶がプカプカと浮かんでいた。
「なんとまあ、ここまで不幸になるとはねぇ」
メアリーは、納屋から縄の付いた鉄製の鉤を持って来て、器用に桶の持ち手に付いた縄に引っ掛け、引き上げて縄を再度結んだ。
折よく現れたタレスに水を汲んでぶっかけさせた。
十回以上かけただろうか、やっと全身に付いた糞が綺麗に落ちたので、持って来たタオルを頭からかけてやったが、魂が抜けた様に動かない。
やれやれ、どこまで手の掛かる甘ちゃんだい。
「いつまで、そうやっているんだい。自分の事位自分でやりな。これだから、大切に育てられて来た貴族のお嬢様は駄目なんだよ。王都に連絡して代わりを送って貰うか」
そう言い放つと台所に向かった。どうせ、あんな状態じゃ昼食の準備なんて無理だろうし、糞臭い手で作られた物を食べさせられるのも嫌だしな。
そもそも、アナ様にそんな物を食べさせる訳にはいけないし。やれやれ、さっさとつくるか。
ん?いい臭いがする。台所に入ると、あの老執事が昼食を作っていた。
ふむ、これが正しい選択なのだろうな。
「おお、メアリー様、色々とお手数をお掛けしまして申し訳ありません」
「いや、、、それはいいのだが、少し不幸に弱過ぎないか?」
言いたい事は山ほどあるが、アナ様がいらっしゃるので言う訳にもいかなかった。
「あら、何のお話しかしら?」
アナ様が会話に入って来た。
このお方も、分っていらっしゃるのか天然なのか、ともかく食えないお方ではある。ここは、誤魔化すに限る。
「いえ、鳥の糞の直撃を受けるなどと、なんて運が悪いのだろうと、そういうお話しでございます」
「そうねぇ、わたくしもこちらに参りましてもうだいぶ経ちますけど、まだその様な経験は御座いませんわねぇ」
そりゃあそうだろう、そんな大それた事をしようものなら、天災級の不幸が待ち受けているのだから。などとは思っていても言えないけど。
「わたしも、その様な経験は御座いませんわ」
「それで、シャルロッテ様は今どうなさっているのでしょうか?」
「糞は落としましたので、じきに着替えてくるでしょう。さ、アナ様は先に食事を召し上がってくださいませ。執事殿が美味しそうな食事を用意してくれています」
「あら、シャルロッテ様が着替えて来られるのを待ちませんか?お一人でお可哀想です」
お優しいのか、お人よしなのか、ご自分のお立場が分かってらっしゃらないのは困りものだ。
「アナ様は私達の主人であります。使用人を待つ必要は御座いません。どうぞ、お先に召し上がって下さいませ」
ぐずぐずしていて、賊の襲撃を受けたらどうなさるおつもりか。身辺警護の身にもなって欲しいものだ。ただでさえお荷物が増えて頭が痛いのに。
「そうですか?」
しゅんとした仕草をしても駄目です。
「そうですよ。執事殿、お願いします」
「アナスタシア様、こちらへどうぞ。簡単な物ですがご用意を致しました」
さすが熟練の執事、そつなくアナ様を案内している。お荷物の中で最も役に立ちそうだ。
「メアリー様は、いかがされますでしょうか?」
「あ?ああ、わたしはこのパンでいい。それよりアナ様を頼む」
「承知致しました。では後ほどアナスタシア様の好き嫌いなど伝授お願い致します」
「ん、承知した。表の警護をして来るから、見習いが来たらさっさと飯を食わしておいてくれるか?」
「はい、行ってらっしゃいませ」
深々と頭を下げる姿、すっかり執事が板に付いているようだ。
爺様の下で働いていたのなら、それなりの手練れだったろうに。歳を取るって事はああいう事なんだな。
テーブルにあったパンを掴んで齧りながら表の警護に就いた。
今日は朝から良く晴れ渡っていて日差しが気持ちいい。視界は全周開けているので接近して来る者の監視は容易いのだが、逆に言えば、どこからでもこちらを監視出来るって事だから、痛し痒しという所だな。
どこから監視されているか分からない上に、とんだお荷物までしょい込んでしまった。王都に戻る事があったら師団長閣下に抗議しなくては。私の部隊だけでは手に余るわよ。
頭から水を何回もかけられてやっと魂が戻って来た。
気が付いたら、ジェイがタオルで体を拭いてくれていた。
「ジェイ、、、あたし、どの位放心していた?」
あたしは、恐る恐る聞いて見た。傍では、タレスも心配そうにしている。
「そんな長い時間では御座いません。さ、お風邪を召されてしまいますれば、中に入ってお着換えを致しましょう」
ジェイに促されて自分にあてがわれた部屋へ行き、着替えを済まして台所へ向かった。
落ち着いてみると、何か臭う。二の腕をすんすんしてみると、形容しがたい臭いがする。
やだなぁ、でも今は警護をしなくちゃだから、夜まで我慢しなくちゃ。
台所に着くと、アナスタシア様とジェイが待って居た。
「ひどい目に遭いましたね、まずは食事をなさって下さいな」
アナスタシア様は優しく席へといざなってくれる。
「あの、アナスタシア様はお召し上がりになったのですか?」
「わたくしはお先に頂かせて貰いましたから、安心して召し上がってくださいね」
「さ、お嬢様。暖かいスープで冷えたお身体を暖めてくださいませ」
ジェイは具沢山のスープをサーブしてくれた。
具沢山のスープで、体は温まったが、同時にあまりにも不甲斐ないと言うか、役立たずな自分に対しての怒りも沸いて来て、知らず知らずのうちに涙が溢れてしまった。
アナスタシア様は優しく背中をなぜてくれるが、それが一層情けなさを強調されているみたいで、自分が嫌になった。
そうしている内にドアが開きメアリーが入って来た。
「あら、まだ食べていたの?優雅でいらっしゃるのね。そんなあなたにうってつけの仕事を差し上げるわ。もう直ぐ街から食料を運んで来るイシワータ商会の大先生が来るから、荷受けをあなたに任せるから頼んだわよ。伝票のチェックと受け取りしっかりね」
そして、傍に来てそっと耳打ちする様に囁いた。
「どこから監視されているか分からないんだから、草むしりでもしながら自然な姿で監視もするんだよ」
ぽかんとしていたら、、、
「返事はどうしたんだい?」
また、怒られてしまった。
「はい、直ぐに行きます」
「まったく・・・」
そのまま奥に入ってしまった。
「ごちそうさまでした」
あたしは、そのまま外の監視に就いた。
体が乾いたおかげで日差しを受けて体がぽかぽかして来た。
なだらかな坂を見下ろしながらしゃがんで草むしりをするが、これがなかなかきつい。
時々腰を伸ばしながらの監視となった。
そろそろ来る頃かな、イシワータ商会の定期便とやらが。
落ち着いて冷静に対応しろってどういう意味なんだろうか?
でも、伝票のチェックと品物の受け取りでしょ?そんなの簡単じゃない、
そんなに、あたしは頼りなく見えて・・・・いるんだろうなあ、いきなり糞まみれだったからなぁ。
などとぶつぶつ言いながら草むしりをしていた。
「ん?」
誰かがリアカーを引きながら坂道を登って来た。
あれが、イシワータ商店の大先生?遠目にも見るからに冴えない、ぼさぼさの髪にメガネ。猫背で歩き方も変だ。
いい歳をして、未だに使いっ走りしかさせて貰えないとか。
話をしても何を言ってるのか全然要領を得ないとか、あれじゃあ、店は任せては貰えないだろうと言っていたけど。
ミスは多いし、間違えても謝らない。間違えたらまずは謝罪だろうに、奴は言い訳を始めるとも言ってたな・・・。
その言い訳も、取って付けた様な言い訳で、話せば話す程辻褄が合わなくなって来て毎回自分の首を絞めて終わるって何だろう。子供じゃあるまいしいい大人がそんな事するの?
最初から決め付けてはいけないんだけど、話しているとイライラして来るらしい。わざとやっているのだったら、そうとうの強者だと力説していたな。
ま、こいつは刺客では有り得ない。だが、別の意味で要注意な人物らしいけど、どんなミスをするんだろう。
草むしりをしながら、胡散臭い奴を見る眼つきで睨んでいると、修道院の入り口から十メートルの所でリアカーを停めた。
商品納入なのに、勝手口に持って来ないの?よりによって玄関前?
おまけに、なんでそんな坂道の途中に停めるの?
坂の途中にリアカーを停めて、ひよこひょこと駆け寄って来る。おいっ!リアカー、坂の途中じゃないのかっ!
声を掛ける間も無かった。
当たり前の様にリアカーは、後ずさりを始めた。
「おいっ!リアカー!」
声を掛けるが・・・
「は?なんでしょうか?」
歩みを停めないで歩いて来る。
「何でしょうじゃないっ、リアカーっ!」
「はっ?リアカーは引いて来ましたが?何か?」
もうこの時点で頭が痛くなった。
その頃には、リアカーはガラガラと音を立てて坂道を下り始めていた。
「後ろを見て見ろ!リアカーどうなっている?」
のぼーと振り返った大先生は、下って行くリアカーに気づいて・・・気づいて ぼーっと見ている。
「追わなくていいの!?」
「ああ」
お前は、言われないと追いかける事も出来ないんかいっ!こんな小娘に言われるなよお。
あーあー言いながら、坂道をよろよろと降りて行く。
あ、転んだ。起き上がった。よろよろ、又転んだ。あれは、アナ様の能力では無い。絶対に違う、うん、断言出来る。あいつがドジなだけだ。
立ち上がって、見下ろすと遥か下方でリアカーが横転している。
あーあ、やっちゃったよ。でも、絶対に助けない。
メアリーさん言ってたから。
(あいつ、過去に二回リアカー暴走させてるんだよ。
最初の時は、可哀想なので坂の下まで走って行ってリアカーを起こしてやって荷物も集めてやったんだが、一言も感謝の言葉は無かった。
ま、感謝して欲しくてやったんじゃないからいいんだけど、問題は二回目だった。
前回みたいにリアカーは坂道を転がって行ったんだけど、奴の態度が問題だった。
数歩歩くと振り返ってこちらを見る。すこし行くと又振り返る。リアカーの所に行っても、ずっとこちらを見ていて起こそうともしない。
そう、あいつは一度助けてやると、それが当たり前だと思う奴なんだよ。
自分がやったミスは学習しないくせに、楽をする事だけは覚えているらしい。なんて都合の良い頭をしているんだ、あいつは。)
って。
今回も、振り向き振り向きだったから間違いないだろうな。
本当に同じミスを繰り返すんだあ、ちょっとびっくり。
無視して草むしりをしながら見ていたら、荷物の箱を高く積んでいた。荷台にスペースは空いているのに一か所に高く積み上げているのだ。
案の定、箱は途中で崩れ落ちた。車止めもせずに箱を拾いに行ったもんだから、又リアカーが坂を転がり落ちて行く。
そして箱を持ったまま、リアカーを追っていく。箱なんか、転がらないんだから置いて行けばいいのに・・・
そんなこんなで、一時間以上もかけてやっと上がって来た。見ているだけで本当に疲れる。
また、坂の途中にリアカーを置こうとしていたので、勝手口に回らせた。
「いったい何やってるの?」
「坂の途中に羊がいたから・・・」
「羊なんて居なかったわよ。それがどう関係しているの?」
「おやっさんが荷物を載せたから崩れて・・・」
「崩れたのは、あなたが変な積み方したせいでしょ?」
「卵全滅じゃないの、どうするの?」
「それは、転がったから・・・」
「伝票は?伝票」
「え?え?転がったから伝票はない・・・」
「はあっ?」
「伝票は、おやっさんくれなかった・・・」
「くれなかったの分って居るのなら、下さいって言うべきでしょ?違うの?」
「無かったら言えって言われなかったから・・・」
「お前は子供かっ!」
脱力していたら、奴はリアカー引いて帰って行った。
今回も謝罪の一言も無かった。アナ様もメアリーも良くこんなのと付き合って来れたもんだ。私には無理だわ。もう血管切れそう。
あたしに奴の担当を任せたのって・・・いじめ?嫌がらせ?ただ単に相手したくないから?
よろよろと裏口の方に向かって歩いて行くと、なかからアナ様が出て来られた。
「あら?イシワータ商店の方がいらした様な気がしたのですが?」
「大先生なら帰って行かれました。又来るでしょう」
もう、来なくていいから。一生来ないでいい。一回相手しただけでもう十分。
ああ、せいせいした。あんなの相手にしてたら、こっちの心が病んでしまうわ。あいつ、ちょっとした精神的破壊工作員だわ。
おそらく、アナ様ならどんなミスをしても怒らないから、奴を送り込んで来ているんだろう事は明らかだな。
その日は、二十二時から二時までの監視を終えてからゆっくり風呂で臭いを落として、風呂でしばらく寝てしまった。
寒くて目が醒めたのでベッドに行って死んだように寝て、起きたら九時過ぎて居てメアリーに嫌味をいわれたが、気力が復活していたので耐えられた。
さあ、今日もめげずに頑張ろうっと。