58.
人混みの中心には、がたがた震える男が居た。
あたしのレイピアを盗み出した男だ。その手には、盗み出したレイピアが・・・無かった。
「えっ?まさか・・・」
その男の手には、あたしのレイピアは無かった。ついさっきまで、確かに持っていたはずだ・・・。
なぜ?どこにいったの?周りを見回したけど、どこにも見当たらなかった。
やられた・・・奴の目的はあたしのレイピアだったのだ。
「あいつは、奴に操られてレイピアを盗み出したのだろうな。さて、どうするかな」
お頭は頭をぼりぼり掻きながら、苦い顔をしている。
「当然、レイピアで何かをする気なんだろうなぁ。ねぇ、竜さん。レイピアの気配って探れないかなぁ?」
竜氏は目をぱちくりさせている。
「ほっほっほっ、さすがに私も万能ではございません。鞘に収まっておりますと、探知は無理で御座います」
「だよねぇ、奴が行動を起こすのを待つしかないかぁ。でも、どんな行動を起こすんだろ?」
すかさずメアリーさんが突っ込んで来た。
「決まってるでしょ?100%嫌がらせよ!どこかの都市に仕掛けるのは目に見えているわよ」
「問題は、どの都市か?ですな」
冷静にブライアン・ロジャース大佐が会話に入って来た。
「貴殿のお国の都市である可能性も無視はできませんな」
お頭の軍師であるオグマさんは、被害の拡大を示唆してきた。
「我が帝国に・・・ですか?」
ロジャース大佐は当然の事だが、驚愕の表情だった。
「ええ、帝都の避難で混乱している今、仕掛けるチャンスなのではないでしょうか?」
「むむむ・・・否定できませんな、確かに今やられたら大混乱だ」
「しかしなぁ、お前と居ると次々に問題が起こるんだよなぁ。何でだろうな?やはり、不幸体質なのかな」
そう言ってお頭はあたしを横目で見る。
「あたしのせい?あたしのせいなの?」
あたしは、お頭のごつい顔を下から睨んだ。
お頭は直ぐに、にやにやしながらそっぽを向いた。
そこで、兄様が周りを見回しながら、話し出した。
「今、ここで言い合いしていても仕方がない。まずは要塞内の守りを固めよう。さらにサリチアの復興にも注意を払う。事が起きた時の為に、即応出来る部隊の編成も急がせよう。出来る事をやって事態に備えようじゃないか」
その場に集まった兵士達は、兄様の発言を聞いてそれぞれの持ち場に帰って行った。
その場には兄様とあたし達だけがその場に残った。
「我々はこの地で復興に当たる事にする。君達は君達の使命を果たしてくれ、我々に出来る事があれば、全面的に支援するので何でも言ってくれ」
有難い申し出だった。
「有難うございます、兄様。あたし達も頑張ります」
それだけ言うと兄様は戻って行った。
あたし達は、心から納得した訳ではなかったものの、一連の騒動は一区切りがついたので当面する事がなかった。なのでニヴルヘイム要塞に留まるかベルクヴェルクのシュトラウス情報調査室に戻るかして、情報収集に専念する事で意見が一致した。
話し合いの結果、動きたくない派が多数を占めたので、ここ、ニヴルヘイム要塞に留まり情報収集に務める事にした。
「さて、奴はどこに剣を持ち込むつもりなんだろうな」
あたし達が会議室に使っている一室で、今後の話し合いをしていた。
そんな中、難しい顔のお頭がそう呟いた。
「一番怪しいのは、王都・・・ですよねぇ」
あたしは無難に答えた。
「そうだな、王都が一番怪しいな。次に怪しいのはパレス・ブラン・・・かな」
お頭の返事にみんなは一様に頷いた。だれも異論は無い様だった。
話し合いで、重点警戒地点が二か所に絞れたのだが、なんの解決にもならなかった。
なぜなら、一度あの巨人が現れてしまえば、現状ではなすすべもないのだから、出現する場所が特定できても、意味がなかった。
まだ手元にあのレイピアがあれば対応のしようもあるのだが、今は手元に無いので対応する術が無いので、出来る事は、領民を安全な場所に避難させる事だけだった。
すなわち、巨人出現の報を受けて現場に駆けつけても、何も対応策がなく完全に手詰まり状態なのだ。
当然、王都とパレス・ブランには現状を通知し、巨人が現れた際には、速やかに避難する様に警告は出してある。
まあ、気休めに過ぎないんだけど。
「どうした?ぼーっとして」
不意にお頭に声を掛けられて、我に返った。周りを見回すと、会議室にはお頭とアウラ以外は居なかった。
随分と長い時間あっちの世界にトリップしていたみたいだった。
せっかくだから、トリップ中に思い付いた事を聞いて見た。
「ねえ、お頭。アダマンタイトで剣を造ったら、あのレイピアの代わりにならないかな?」
又、変な事思いつきやがって、って顔でお頭があたしを見ている。
「又、変な事思いつきやがって。代わりになるかどうかははっきり言ってわからん。だがな、言えるのは剣の力と言うよりも剣を扱う者の力量が物を言うと思うぞ」
「扱う者の力量かぁ、痛い所を突いて来るなぁ。でも、そうなんだろうなぁ。力量なんて、全くないからなぁ」
「ま、そう悲観したものでもないぞ。お前もそれなりの力量は身に付き始めているからな。ただ、制御しきれていないってだけだ」
「そうかな・・・へへへ」
思い掛けず、お頭に褒められて照れてしまった。
「だが、案外いい考えかもしれんな。思い切って剣を造りに行くか?ベルクヴェルクの工房によ。お前ならアダマンタイトの使用許可が降りるだろうしな」
「ほんとおっ!?なら、兄様にお願いして来る~」
あたしは、言うが早く会議室から飛び出して、司令部のある棟を目指して駆け出した。
あたしは兄様の元へ着くと、興奮も冷めやらないまま、アダマンタイトの件をまくし立てた。
兄様はあたしの意向を全面的に支持してくれて、アダマンタイトの使用許可も書いてくれた。
基本、アダマンタイトは国の許可無しでの使用は出来ない。全て国の厳重な管理下に置かれているからだ。
許可を出せるのは、基本王族と国政の中心に居る者だけだった。特例として、非常時には将軍職は自分の判断で許可を出す事が許されていた。
さらに、ベルクヴェルクにある国営の武器工房の使用許可も貰えたので、国内トップの匠により最優先で造って貰える事になった。
兄様からは、悔いを残さない様に精一杯やれとはっぱを掛けられたのだった。
みんなの所に戻ると、お頭を中心に出発の準備が進められていた。
「おう、戻ったか。許可は貰えたのか?こっちは同行するメンバーの人選が終わっているぞ。今、馬車の手配をしている所だ」
お頭、はやっ。
みんな、退屈していたんだろう、みるみる支度が整った。
それから、一時間後には一行はニヴルヘイム要塞を出発したのだった。
メンバーは、あたしと、ジョンG、タレス少尉。タレス軍曹は昇格して少尉になっていた。アウラ、竜氏だった。
あたし達は二台の馬車に分乗して、勿論、周囲には『うさぎ』のメンバーが数名、付かず離れず警戒に付いて来てくれている。
ベルクヴェルク迄の道のりは何度も往復したので、慣れたもんだった。
街道からは火山灰がほぼ取り除かれ、旅人の数もかなり戻って来ていた。
災害復旧の為の資材、食料、を満載してサリチアも向かう馬車の列に何度も出くわした。
徐々にではあるが、復興しているんだなと胸が熱くなったものだった。
と同時に、ひとつの懸念も沸き上がった。
この満載の食料、はたして山賊が手をこまねいて見ているのだろうか?いや、そんな事はあるまい、こんないい獲物見逃すはずがない。
あたしは、早速ニヴルヘイム要塞にハトを飛ばして、街道の警戒をする部隊の派遣を要請したのだが、帰って来た返事は・・・。
「ははははははは」
だった。
とっくに、警戒部隊を編制して街道を巡回しているそうだ。お頭達が要塞に残ったのも、街道警備をする為だったらしい。
なーんだ、あたしだけが空回りしてたのかぁ、なんか複雑な気分だった。
警戒が出ているのなら、あたし達はのんびり旅を楽しめばいいんだね。
そう思うと気分が軽くなるのを感じた。
それから平和な旅は進み、三日目の夜を迎えた。
その夜は、街道沿いの公共宿営地で一泊だった。
ミーチ・ノエキと呼ばれるその宿営地には自前の井戸も完備しており、便利な場所として多くの旅人で賑わっていた。
護衛の面々も少し離れた場所で各々食事の支度をしているはずだ。
夕食の支度はジョンGことジェイとタレスがメインで行っていたので、やる事の無いあたしは焚火の火の番をしていた。
ぼーっと新たな薪をくべていると、ふと人の気配がした。
俯いて薪をくべているあたしの視線の端に可愛い足が映ったのだ。
ゆっくりと顔を上げると、そこには目鼻立ちのはっきりとした小柄な女の子が立って居た。
栗色の巻き毛の可愛い女の子だった。年の頃はあたしより二つ三つ下だろうか?
あたしの事をじっと見下ろしている。なんだろう?あたしに何か用があるのか?
その後も一言も発せずじっと見下ろしてくる。
とっても居心地が悪かった。
「あの、何か用、、、かな?」
値踏みをする様な視線であたしを見下ろす少女に、あたしは声を掛けた。
だが、少女は黙ってあたしを見下ろしたままだった。
うーん、この状況、どうしたらいいんだろう。
困っていたら、ふいに声を掛けられた。
「ここ 座って かまわへん?」
自分に掛けられた事にハッと気が付いたあたしは、「どうぞ」と答えた。
座ってからも、その少女は黙ってあたしの事を見つめるだけだった。
なんなんだろう、この子。何で黙ったままなの?何がしたいんだろう?
焚火越しに見える少女は、年齢不詳にも見えた。
相変わらず黙ってあたしの事を見つめて居るのだが、意味が分からない。
「おや、お客様ですかな?」
大きな鍋を両手で持ったジェイがゆっくりと歩いて来て、焚火に鍋を設置した。
「食事をご一緒なさりますので?」
にこにこと少女に尋ねる。
「召使いが居るなんて、あんた良い所のお姫様なんかい?」
「さあ、どうかしらねぇ」
あたしは、思う所があって、当たり障りない程度に答えた。
そりゃあそうだろう。こんなキャンプの場で、あたしの出自に興味を示すなんて怪しさ満載でしょう。さすがに鈍いあたしでも、お金目当て?って思うわよね。
「お一人様でしたら、余裕はございますが、あちらの方々の分まではありませんな」
「えっ?」
あちらの?ジェイの視線の先を見ると、そこにはこちらを窺っているまだ幼い少女が数人おり、あたし達の注目を浴びてわたわたとしている。
どういう事?と少女を見ると、さっと視線を逸らした。
「そ それじゃあ、そういう事で・・・」
と言うと、立ち上がって駆け出して行った。
「なんだったの?あれ」
走り去って行く少女の後ろ姿を呆然と見送っていると、竜氏がやって来た。
「あの者からは異能の波動は感じられません。おそらく只の小物でしょう。夜盗の類ではないでしょうか?今、アウラ嬢が後を追ってます」
竜氏の話しようだと、異能者でなければ脅威ではありえないと言わんばかりっだった。確かにそうではあるのだけどね。
多くの護衛を連れている大型のキャラバンが大勢を占める中、あたし達の様な小規模の旅行者は絶好のカモに映ったのだろう、金を持って居るか確認の為に接触して来たと思われた。
襲って来るとしたら、明日ここを出発してからだろう。
という事で、今夜はゆっくりと休む事にした。
レイピアが無くなったので、枕元には代用の剣を置いてある。
この剣は、一見立派な剣に見えるのだが、鞘から抜くと刀身が木で出来ている。木と言っても、世界樹の様に特殊な物では無く、その辺に転がって居る普通の木を削って作ったものだ。
そんな物、実戦では何の役にも立たないと思われがちなのだが、実は上手に気を纏わせると鉄よりも硬くなるのだそうだ。その練習を兼ねてこの木の剣を持って来て居るのだった。
横になってうとうとしていると、夜半過ぎにアウラが帰って来た。
その気配で起き出すと、申し訳なさそうに近寄って来た。
「起こしてしまいましたか、申し訳ありません」
ほとんど物音はしないのだが、最近はその気配が少しわかる様になって来た様だ。少しは成長したのだろうか?
あたしの元にやって来ると、片膝を付いて報告を始めた。
「あの者達は、やはり夜盗でしたね。それも、かなりランクの低い」
「あらぁ、そうなの?そもそも、夜盗にランクなんてあるの?」
「どしろうとって事ですよ。つけられていないかの警戒もしないで、いきなりアジトに帰っていますしねぇ。あれじゃあ、すぐに捕まって処刑されるでしょうね」
「あらあら、センスがないのね。だったら真っ当に働けばいいのに」
「人数も、たったの六人しかいません。大所帯の商隊は襲えないでしょうね」
「そんなんだったら、襲うより、こうした宿営地で寝ている間に馬車に忍び込んで食料をくすねる方が成功するんじゃなくて?」
「ですねぇ、見ていて気の毒になる位、全てに渡ってお粗末です。夜盗のレクチャーをしてあげたくなる位ですよお」
「レクチャーしてあげる?」
「いえ、遠慮しておきます。あのセンスの悪さじゃあ、到底一人前の夜盗にはなれないでしょうね。ハッキリ言って向いていないです」
「そうなのね、だったら無視しても大丈夫ね。夜中までありがとう。ゆっくり寝てちょうだい」
「はい、そうさせて頂きます。おやすみなさい」
そう言うと、暗闇に消えて行った。
翌日は、朝からどんよりとした曇り空だった。
大型の商隊は、だいたいが北行き、つまりサリチア方面に向かうのが目的で、あたし達みたいに南に向かう者は僅かだったので、街道は空いていて走り易かった。
あたし達の二台の馬車は、のんびりと旅を続けた。
もうそろそろ太陽が天頂に差し掛かろうかと言う頃、馬車の御者席の竜氏が後ろを振り返って荷台の中のあたしに声を掛けて来た。
「シャルロッテ殿、一定の距離を置いて同行する連中がおりますな、おそらく例の夜盗ではないかと」
「へええ、連中も意外と勤勉なのね。だったら、いつまでも待たせたら気の毒だから、そろそろ襲わせてあげましょうか?」
あたしは、馬車の荷台の全面から顔を出し、竜氏の隣で手綱を取って居るジェイに声を掛ける。
「ジェイ、街道から逸れて、襲いやすい場所、そうねぇ、森の中のちょっとした広場みたいな所を探して馬車を乗り入れてくれる?」
「はい、承知致しました」
竜氏となにやら言葉を交わしながら、馬車は街道を逸れて森の中に入って行く。
ちょっとした広場を見付け、その中央に馬車を停めあたしは飛び降りた。
「あたしもっ」
飛び降りようとしたアウラを片手で制して、あたしは剣、、、に似せた木刀を抜いた。
「今回はかなり格下みたいだから、あたしに任せて。せっかくだから剣の練習台になってもらおうかなぁって」
さあて、どこからくるのかな?
あたしは、わくわくしながら賊の登場を心待ちにした。
待ち人来たれり・・・。
がさがさと下草をかき分ける音と共に、左手の木の陰から賊が現れた。
うん、やはりね。現れたのは昨夜の少女だった。
「いらっしゃ~いw」
あたしは、かる~く挨拶をした。
「あらぁ、驚いとれへんのね。それとも、虚勢を張っておんのかしら?w」
「あなた去勢されているの?お可哀想にw」
「虚勢よっ!虚勢!!」
結構怒りっぽい性格の様だ。加えて、操り易い性格にも思えた。
その後、彼女の仲間も現れてきた。だが、理由はわからないのだが、彼女の仲間は周りを取り囲むでなく、一方向、すなわち全員シャルロッテの正面に現れたのだった。
「一応聞くけど、何の御用かしら?w」
あたしは、わざと煽る様に問い掛けてみたが、案の定簡単に乗って来た。
「この状態で何の用やって?あんたアホか?」
あたしは、ニヤニヤしながら木刀を賊の女に向けた。
「はあああぁ?正気か?なに考えとんねん?そんな木刀で何が出来ると思うとんねん?子供やと思うて馬鹿にしとるんやないやろうな。子供を舐めんなや」
嘲る様に、怒る様にそう言って来た。
「舐めてなんかいないわよ。ただ、あんた達お子ちゃまにはこれで十分かなぁって・・・」
笑いながらそう答えると、益々怒りだした。
「舐めやがって! !後で泣いても許さへん!」
彼女は自分の剣を抜いて威嚇して来た。背後の小娘達も短い剣を抜いて構えている。
ん?この娘の持っている剣、もしかして・・・。
なんて思っていると、いきなり振りかぶり斬りかかって来た。
あらあら、すぐ挑発に乗るのね。
あたしは一歩下がると木刀を正眼に構え、木刀の切っ先に集中した。
「普段通りにすれば大丈夫でございますよ」
後ろから竜氏がアドバイスをくれた。
上段から斬りかかってくる少女を見据えたまま、あたしは木刀に意識を集中し、ジャンプしつつ振り下ろして来る剣に下から合わせていった。
剣と木刀が真っ向からぶつかった瞬間、高い金属音がして辺り一面にその音が広がった。
なんの捻りも無く、真正面から、真っ直ぐに突っ込んで来るなんて、おまけに上段からの降り下ろし、なんの冗談なんだろうかと思った。躱してくれと言わんばかりだった。
今回は敢えて躱さずに受け止めてみたが、どう考えても無謀と言うより他はなかった。
体重が軽いので、剣は軽いし、速度は遅い。この攻撃に何の意味があると言うのだろうか?
軽々と少女の攻撃を受け止めたあたしは、正直ちょっとがっかりした。
そんなあたしとは正反対に、この少女は心底驚いていた。
自分の剣を見つめたまま身じろぎもしないで固まって居る。本気であの攻撃が通用すると思っていた様だった。
彼女の背後のお仲間の少女達からも驚愕の声が上がって居る。
「そんな、、、たかが木刀が姐御の剣を受け止めるなんて・・・」
「なぜ?金属と木、勝負は明らかなのに・・・」
「まさか、魔剣だから負けないのか?」
魔剣なんてあるのか?そもそも魔剣だから負けんって、発想がおやち゛だろうが。
「もう終わりなのかな?もう少し腕を磨いた方がいいわね。今に命を落とすわよ」
剣を力の限り握りしめてぶるぶる震えていて、あたしの声は届いていないっぽいけど、、、、やっぱりそれレイピアよね。それもあたしのと良く似ているわね。やや短いけど。
ん?下を向いたままなにやらぶつぶつ言っている?
すると、剣の切っ先がぼうっと光り出した?
「でたあぁぁっ、姉御の十八番っ!」
「もう、決まりね。跡形も無く消滅するわ」
「姐御を馬鹿にした報いよ」
おお、意気消沈していたと思って居たら、もう勝負がついたかの様に騒ぎ始めたわね、まさかこの娘もあの技を使えるの?まさかね。
振り向いて竜氏を見るが、竜氏は穏やかな顔のまま軽く頷いてくれた。どうやら、大したことはないと言う事なのだろう。
あたしは、正眼に木刀を構えたまま相手の出方を待った。
次第に切っ先の光が強くなってきたが、あたしの心はなぜか冷静だった。
なるほどね、あの光の剣とも言うべきあの技が使えるのなら、子供だけで夜盗も可能だし、妙に落ち着いているのも腑に落ちる。
だけど、どこで手に入れたんだ?あんなものが、そうそう出回るとも思えないんだけど。
物思いに耽けっていると、竜氏から注意勧告をうけた。
「そろそろ来ますぞ。油断無き様にお願いします」
いよいよ来るか。だけど、剣の光り具合がだいぶ弱いんだけど?おまけに不安定に明滅していないか?あんな状態で大丈夫なの?撃てるの?
でも、仲間が盛り上がって居るから大丈夫なのか?ま、迎え撃つ準備は出来ているからいいんだけど。
お、もう撃っちゃうの?まだ十分に気が溜まっていないだろうに。
心配するあたしの思いも知らず、少女の剣から光の奔流が放たれた。
※正確には、光では無く、精神波動なのだが、それでは波動砲になってしまい某アニメと紛らわしいので、ここでは光と表現する。(当社比&諸説あり)