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聖女様は疫病神?  作者: 黒みゆき
21/187

21.

   ◆◆◆◆◆ 絶望のムスケル ◆◆◆◆◆

「うーむ、聞きしに勝る   だな」

 俺は、後ろを振り返りながら、ひとりごちた。


 あれは、帝国遠征でククルカン要塞に居た時だった。要塞司令官のハインの奴から我が王都がクーデターによって占拠されたって聞かされ、大急ぎで全軍を率いてベルクヴェルクの宿営地に帰って来てほっと一息ついた時だったな。

 俺達はここで体制を立て直して、王都奪還の準備をしていたんだが、イルクートからこちらに向かって敵が進撃して来るという情報を得たので俺は百名程の手勢を連れて出発しようとしたんだが、ふと修道院に入って行くうだつの上がらなそうな男が目に入ったので、みんなが準備をしている間に修道院に寄る事にした。

 ん?修道院に近づくと窓から外を見ている奴が居る。

 あれは、確かイシワータ商会の小僧か。何をしているんだ?

  そっと修道院に近づきドアを開けた。が、全くこちらに気が付かない。そっと近づき声を掛ける。

「おい」

「!!!!!!!!!!!!!!」


 おもしろい。ビックリした猫みたいに飛び上がって驚いている。

「お前、こんな所で何している?」

 おい、なんでそんなに怖がってる?何が怖い?

「あ かお」

「俺の顔かいっ!」

 お、怒鳴ったらまたびびってる。ま、いいか。

 その時だった。なにげに視線を窓に向けた時、修道院の陰からこそこそと這い出て来た人影・・・。

 あれは・・・腰をかがめてへっぴり腰で歩いて行く姿・・・アナスタシアの嬢ちゃんか?なにしてるんだ?

 どうやら、みんなの視線をかわして、、、、逃げ出すつもりか?   へっぴり腰で

 俺は丘の斜面を埋め尽くしたテントの脇をこそこそと歩いて行く聖女の嬢ちゃんを眺めながら、どうしたもんかと考えを巡らしていた。

 とりあえず、後を付けてみるか。

「おい、アナスタシア様はこれからイルクートに向かうからとみんなに伝えておいてくれ、いいな」

 そう小僧に伝言を頼むと、俺は修道院から駆け出して行った。まさか、こんな簡単な伝言が伝わらないとは夢にも思わなかったのだが。


 修道院を飛び出した俺は、アナスタシアの嬢ちゃんの後を追った。

 ちょっと見渡したら、腰を曲げてひょこひょこと物陰を歩く姿が直ぐに見つかった。

 それにしても、周りの兵達が誰も気付いていないのが不思議だ。完全に気配を消しているみたいだな。聖女やっているより、忍びやる方が向いているんじゃないのか?

 ひょこひょこ歩いているその脇では何百人もの兵がテントを張ったり荷物を広げたりしているのだが、彼らの目に丘を降りる少女は全く映っていない様で反応する人は皆無だった。

 まるで特殊訓練を受けたスペシャリストの様だった。へっぴり腰はいただけないが・・・


 やれやれ、いったいどうなってやがんだ・・・


 大急ぎで後を追ったが、当然ながら近くに居た兵士達は、何があったんだとばかりにこっちを見て居る。

 そうだよなぁ、気が付かない訳ないんだけどなぁ。気配が無いってヒトじゃあないんか?


 そのまま、一定の距離を置いて後をつけてみたが、丘を降りる迄とうとう誰も気が付く事は無なかった。優に数百人単位で気が付くチャンスがあったはずなのにだ。

 聖女というスキルのせいなんだろうか?便利なものだ。


 感心している間に、丘を降りて街道に歩き出したアナスタシアの嬢ちゃんはなにやら周りを見回している。

 ふむ、そりゃあそうだよな、着の身着のままで出て来たんだから、どこに行くにしても足が無いんだろう。

 さて、そろそろ捕獲するか。

 

 俺はなるべく気配を消しながら、姿勢を低くして丘を一気に駆け下り  ようとしたら、何かに蹴躓けつまづいて前のめりに転がってしまった。

 視界の中で空と地面がぐるぐると回転して、気が付いたら空を見上げて地面に大の字になって転がっていた。

「いってえぇぇ」

 やっちまったかあぁぁ。


「あの 大丈夫ですか?」

 ふと、頭の上から声が降って来た。

「ん?」

 見上げると、心配そうな顔の聖女様が見下ろしていた。

「ありゃあ、見つかっちまったか。カッコ悪いったらないぜ。へへへ」

 照れ隠しで頭をぼりぼりと搔きながら立ち上がると、聖女様はその小さな両手を胸の前で組んで心配そうに見上げて来るのだが、その立ち居振る舞いには流石の俺も思わず赤面しちまって、反射的に後ろを振り返ってしまった。

 丘の上の方を見上げると、蹴躓いた所であろう場所の地面が大きく抉られていて新鮮な土が見えている。あそこで蹴躓いたのか、三十メートルは転がったわけだな。

 そりゃあ、どんなとろい奴でも気が付くわな。我ながら何やってるんだか、だな。

「へへへ」


「あのお、本当にお身体は大丈夫なのでしょうか?」

 自分の世界に浸って居たら後ろから心配そうに声を掛けられてしまった。おっといけねえ、そうだった。

 俺は振り返ると精一杯の笑顔で聖女の嬢ちゃんに答えた。

「ははは、大丈夫、大丈夫、死んだって死にやぁしませんって。この通りぴんぴんしてまさあ。体が丈夫なだけが取柄なんでね」

 そう言うと、ウインク(自称)も付けた。

 びくっと反射的に後退ったようだったが、気にしない事にする。いつもの事だからな。

「そ それならば良かったです。あ、あの、わたくし急ぎの用が御座いますので、これにて失礼致します」

 そう言うと、体を翻して再び街道の方に歩いて行こうとする。

「まあ待ちなさいって。そんなに急いでどちらに行かれるんですかい?それも歩きで」

 あ、動きが止まった。

「俺もこれから出掛けるんですがねぇ、イルクートの方へ。それも歩きよりも早い馬車で」

 くるっとこちらに振り返ったその目は、うるうると、そして胸の前で握りしめたその可憐な両の拳と合わさって、『必殺!おねだりの型!!』的な雰囲気を醸し出している。

 この必殺の型を無視できる人は居ないだろう、いや魔物ですら従うであろうと俺は確信している。

「あ あのお」

「ご一緒しますか?豪華な馬車は用意出来ませんが」

 こくこくこくこく

 ああ、ああ、そんなに首を激しく振ったらもげてしまいますぜ。

 そんな事を思っていると、がらがらと二台の馬車がこちらに近づいて来るのが見えた。おそらく、察した配下が大至急手配したのだろう。部下との意思の疎通は大事だな。

 接近して来る先頭の馬車の御者台では、薄いブルーの髪をなびかせた青年が手を振っている。

「お頭ーっ!取り急ぎこれしか手配出来なかったので勘弁してくださーい!」

 奴は俺の三本ある右腕の一人だ。若いのにいつも卒なく補佐をしてくれる頼もしい奴だ。

「フェーイ、上出来だ!しかし、良くわかったな」

「へへ、お頭の考える事なんてお見通しですよ」

「おいおい、俺は単細胞だって言うのか!?」

「うーん、ある意味 そうかも(笑)」

 フェイにヘッドロックをかけばがら聖女の嬢ちゃんの方に向き直ると、、、おいおい、目と口が全開になってますぜ、嬢ちゃんよ。

「お世辞にも聖女の嬢ちゃんには相応しい物ではないが、歩くよりは早いですぜ。これで我慢してやってくれや」

「いいえいいえ、わたくしには勿体ない位の馬車です。フェイさん?でしたかしら。本当に有難うございます、急な手配大変でしたでしょうね、心よりお礼申し上げます」

 この馬鹿丁寧なお礼プラスふかぶかーと頭を下げられたフェイは、完全にノックアウト、あなたの心臓をくださいと言われたら、きっと自ら取り出して捧げるだろう(笑)

 ちょっと試してみたい所ではあるが、今は時間が無い。

「さ、聖女の嬢ちゃん、乗っちゃってくれ。俺達が護衛するからよ」

「本当に、何から何まで申し訳ありません」

「いいからいいから、乗って乗って。目立っていけねえや」


 先頭の馬車には、聖女の嬢ちゃんと俺の配下では比較的上品なベルとレイラが乗り込み、目立つといけないので俺は後ろの馬車に隠れ、その周りを『うさぎ』の十人の手練れが囲んで出発準備が完了した。

 そうこうしている間に、イルクートからの敵兵を迎撃する約百名も集まってきたので一緒に行く事にした。ま、言づけしたから大丈夫だろう。たぶん。


 次第に遠ざかって行くベルクヴェルクの街を馬車の中からぼんやりと眺めながらついひとりごちた。

「うーむ、聞きしに勝る   だな」

 シャルロッテの嬢ちゃんと聖女の嬢ちゃん、このふたりと関わるとロクな事が無いと言うか、慌ただしいんだよな。

 気が付くと次々と不幸が押し寄せて来て、振り回されてしまっている。この絶望のムスケルともあろう俺がだ。

 挙句の果てに、一番面つらを合わせたくないハインの野郎に借りまで作る始末だ。

 しかし、あんにゃろ、なんでカーン伯爵のクーデターを俺より早く掴んでいやがった。ゆだんならねぇ奴だぜ。

 おまけに、兵を貸すなんて、奴は慈善家じゃあないはずなんだが、いったい何を考えていやがるんだ。

 あいつは、昔っから澄まして居やがって気に食わなかったが、最近益々嫌味に磨きがかかってきていたぜ。


「なんか、考えてると気が滅入ってくるぜ」

「はっ?お頭、なにか言いました?」

 一緒に乗って居るマシューが俺の独り言に反応して来た。

 こいつは、『うさぎ』の古株の一人で、隻眼のマシューの通り名で知られており、俺の懐刀だ。

「いや、何でもねえ。それより、俺達の動きはきちんとベルクヴェルクに居るトッドの爺いに届いているんだろうな」

「その点は大丈夫ですね。馬車の周りにも何人もの配下が付き従っており、絶えず連絡がついています。」

「ならいい。なんか、あの聖女の嬢ちゃんと居ると想定外の事態が多くて心配なんだよ」

「まさか、、、考え過ぎじゃないっすかね?取り敢えず、もう少し行ったらミードの街です。ここで一泊して、翌日は敵との遭遇となります」

「なぁ、マシュー。イクルート兵の相手、任せてもいいかな?」

「どうせ雑魚ですから大丈夫ですが、お頭は・・・ブラン行きますか?本街道から外れて北街道に向かえば、パレス・ブラン迄一本道ですから」

「すまんな。その代わりにいい土産持たしてやる。十万の兵にも匹敵する物だ」

 床に広げた地図を見つめていたマシューは、意外な事を聞いたとばかりに顔を上げた。

「それは?」

 ニタリと不敵に笑ったムスケルは脇に大事に置いてあったなにやら一抱えもある包みを引き寄せた。

「これだよ、ふふふ」

 その包みをぽんぽんと叩きながら、こんどはニヤリと笑うムスケルに困惑の表情のマシューは一瞬身構えた。

「お頭、顔、顔、ものすごーく悪い顔をしてますぜ」

「そ そうか? いや、しかしな、こいつは国王様ですらこうべを下げる代物しろものだぜ、悪い顔にもなろうってもんだぜ」

「そんなに凄い物なんで?」

「ああ、聞いて驚くなよ。こいつはなあ・・・」

「こいつは?」

 そこまで言うと、腰に付けていた革袋の水を一口飲んで大きく深呼吸をした。

「こいつは   旗だ」

「旗? 旗って・・・旗?あの、ひらひらした 旗?」

 マシューは肩透かしを喰らったとばかりに上半身が前方にこけた。

「そうだ、旗だ。しかしなあ、只の旗ぢゃあねえ、なんと、あのリンデンバーム家の紋章が縫い込められている聖なる御旗みはただ。聖女を表す御旗だぜ。どうだ、驚いたかあ」

 その時のマシューの顔は、翌日顔面が筋肉痛になるのではないかと思われる位に驚愕に彩られていた。常に冷静で、親の死の報を受けた時も取り乱さなかった彼にあるまじき反応だった。

「な・・・なんでそんな物が・・・」

 後の言葉は、出て来なかった。その大きな右手で口から下を覆ったまま硬直してしまった。

「さっき、聖女の嬢ちゃんから借りたんだよ。こいつを前面に押し立てて敵に向かえば奴らだって歯向かえんさ。なんせ、あの聖女様の家紋に剣を向けるって事は、リンデンバーグ家に剣を向けるって事だからな。この国の人間が、ましてや軍隊教育されてきた兵隊がそんな恐れ多い事  出来ると思うか?」

「いや、確かに。我ら盗賊でもあの旗に剣を向けるのには躊躇しますな。しかし、本物なんですか?それ」

「ああ、本人から直接渡されたから本物だ。こいつを使ってイルクートを制圧してくれや。後から嬢ちゃん達が駆けつけて来るから、それまで頑張ればいいさ」

「はあぁ、こんなに重荷を背負った戦いは初めてですぜ」

「はははっ、まあそういうなよ。おめえだから託せるんだからよ」

 そう言うと、肩をばんばん叩くムスケルを見ながら、能天気なんだか、大物なんだか、あるいは只の大バカ者なのかと思うマシューだった。


 翌日、ミードの街で休息と補給をした一行は、イルクートに向けて進発して行った。

 アナスタシアを護衛する別動隊はその少し前に街をこっそりと出て行った。五台の馬車と五十人に膨れ上がった別動隊は、一台十人づつに別れて夜明けの街を夜逃げをする様に出て行ったのだが、不思議な事に『うさぎ』の情報網には四台の馬車と四十名の護衛としか認識されなかった。

 途中、戦乱のどさくさに紛れて荒稼ぎをしようとするチンケな強盗に何度か出くわしたが、巨像が蟻を踏みつぶすが如く蹴散らして、途中の街ドナドナに到着した。


 その夜、宿屋の一室でアナスタシアは食事をしていた。傍には緊張したベルとレイラが従っていた。

 もちろん宿の周りは人知れず厳重な警戒がされていたのは言うまでもない。


 ベルとレイラは二人とも薄緑色の髪の毛を後ろに纏めたアナスタシアよりも少し年上のそばかすの愛らしい少女だった。本人たちは、そばかすが大嫌いであったが、周りからは可愛いと言う意見はあるもののそばかすをマイナスと見る意見は全く無かった。

「ご馳走様でした。旅先にも関わらずこの様な豪華なお食事を用意して頂いて、本当に申し訳ない思いです」

「アナスタシア様に喜んで頂けて幸いに存じます」

「ええと、あなたがレイラさん?」

「いえ、私はベルで御座います。レイラはあちらに御座います」

「本当に、よく似ていらっしゃること」

「はい、ご覧の通り私達は双子なんです。口の脇にホクロが二つあるのがベルです」

「なるほどぉ、そうなのね。今度は間違えない様にしますね」

「「恐れ入ります」」

「お二人はお食事はなされたのですか?」

「いえ、私達は後ほど食べますのでお気になさらないで下さいませ」

「まあ、わたくしだけごめんなさいね」

「いえ、こうしてアナスタシア様にお仕え出来るだけで至上の幸せでございます」

「そんな風に仰って頂いて光栄だわ、有難う御座います。でも、出来ましたらもう少し自然体で接して頂けると嬉しいのだけど・・・」

「そ そんな こうして直接話し掛けるだけでも恐れ多く、これ以上は心臓がもちません。ご勘弁を」

 二人とも、部屋の隅で恐縮しきりだった。

「あら、残念ねぇ」

 

 その頃、俺は一階の食堂で地図と睨めっこをしていた。

 酒を呑みたい所ではあるのだが、任務が任務だから珍しく自重している。

 明日順調ならば、明後日にはパレス・ブランだ。それまでに、イルクートをなんとかしてくれていると横っ腹を突かれなくて済むんだがな。

 マシュー次第だが、ヤツなら大丈夫だ。きっと上手くやったはずだ。

 今頃は、イルクートからの手勢を平らげて、嬢ちゃん達とイルクートに向かって居るはずだ。

 あっちで騒ぎを起こしていてくれれば、こっちもやり易い。

 報告だと、パレス・ブランはみんな避難していて、いまはカーン伯爵の手勢が制圧しているらしいから行ってもしょうがないと思うんだが、自分の目で見んと納得せんだろうな。

 問題は、その後だ。未だ聖女様御一行の避難先がつかめないんだが、どうしたもんだかな。

 報告に時々上がって来る”S要塞”っていう単語が気になる。王族の避難と関係あるのか?

 目の前で地図をガン見している参謀のオグマに聞いて見た。

「S要塞という単語を最近ちらほら耳にするが、正体を知って居るか?」

 ぬうっと顔を上げた男オグマは訝しげにこちらを見つつ頭をボリボリと掻きながらぼそぼそと話し始めた。

「S要塞っすか、確かに最近良く耳にしますな。ですが、どんな情報統制をしているのか、一切正体が知れませんな。ただ、今回のクーデターに備えての施設じゃなかろうかと思えるんですよ。なにせ、こんなに厳重な情報統制は今まで有りませんでしたからね。お頭もそう思っているんじゃないすか?」

「ああ、いともあっさりと王都を放棄したのも気にいらんし、避難したはずの王族やら政府首脳やら、聖女様やらの避難先が未だにわからないのも気にいらん。S要塞とやらに隠れたとしか思えん」

「S要塞っすか?」

「そう考えるのが妥当じゃねえか?」

「ですな。現状で推定出来る場所は、カーン伯爵のクーデターを見越しての設営なら、王都より西の方にあると思われますが、探すとなると広大ですぜ?」

「なあに、探す必要なんてねえぜ。カーンの野郎が王都から敗走すればそれで事足りるさ。その為にもイルクートを完全掌握しねえとな」

「なるほど、確かに王族が捕まったって話は聞きませんからね、きっとS要塞とやらに隠れているんでしょう。それなら心置きなくゴミ掃除が出来るってもんですな」

「そういう事だ。パレス・ブランに行ったら聖女の嬢ちゃんも納得するだろう。イルクート攻略に参加するぞ」


 そして、夜は更けて行ったが、日付が変わってしばらくした頃、マシューからの伝令がやって来た。

 もたらされたのは驚くべき内容だった。

 要約すると、会敵した時、マシュー達は小高い丘の上に御旗を立てて待ち構えていたが、やって来たイルクート兵はリンデンバーム家の紋章が縫い込められている聖なる御旗を見たとたん、次々と武器を置きその場で跪いたそうだ。聖女様に剣は向けられないと全員が投降したばかりか、一日も早く平和を取り戻したいと、我が軍の傘下に進んで入ったのだとか。

 現在は、イルクートを開放すべく一緒に進軍しているとの事だった。

 俺は、言葉も出ず、やはり言葉を失ったオグマとただ顔を見合わせてしばし固まってしまったのだ。

「いやいや、多少は期待してはいたが、まさか全員が寝返った?よっぽど、カーンの野郎は人気がねーんだな」

「この分ですと、イルクートの陥落も時間の問題ですな。こちらも用を済ませたら急いで合流しないといけませんな」

「ちげえねえ これから忙しくなりそうだぜ」



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