19.
「はいいいいいいいっ!?」
「只今、最新の情報が入って参りました」
一瞬にして室内は凍り付いた。
「確実なの?確実にここに?」
「えーとですね、イルクートから出て来たのは歩兵を中心に五百。街道を東進しているので、ベルクヴェルクの鉱山の確保が目的だと思われます」
「で、ここに達するのは?」
「明後日の、、、、夕方以降ですかね」
もしかして、チャンス?
「お頭ぁ」
「全員捕虜にしろ! だろ?」
そう言ってにやっと笑ったお頭は、ちょっとカッコ良かった。言ってあげないけど。
「うん、出来る?」
「誰に物言ってるんだ?任せろっ!」
そう言うとお頭は部屋を出て行った。
彼らを捕虜にすれば、その制服が使える。堂々とイルクートに入れるかもしれない。
等と考えていたら、お頭がドアから顔を出した。
「ダイナマイト一本使うぞ。効果を試して来る」
そう言うと、再び姿を消した。返事も聞かずに。
ま、お頭に任せておけば大丈夫でしょう。その間にディアブロの木の搬入準備をしなくちゃね。
あたしは、今回の作戦の指揮を任せる人を探しに再び地上に出た。屋敷の中庭は兵士と物資で溢れ、更に、入りきれなかった兵士達が道を挟んだ丘の斜面一杯にテントを張って準備に余念がなかった。そのテント村はアナスタシア様の修道院近く迄続いていた。
そんな兵士達の間を歩き回って、やっととある人物の姿を見付けた。
「ブライアン中佐ぁ!」
あたしは手を振りながら駆け寄った。
そう、ククルカン要塞で知り合った、ブライアン・ロジャース中佐だった。
「これはシャルロッテ殿、いかがいたしましたかな?」
「今、イルクート兵の制服を仕入れに行ってるのだけど、制服の用意が出来たら、イルクート侵入の指揮を執って貰えないかしら?」
「自分がですか?喜んでやらせて頂きましょう。で、兵力はいかほどで?」
「五百名」
「五百名ですってっ!?そんな無茶な!いくら何でも、そんな兵力での攻城戦など聞いた事があるません。戦って死ねと?」
「ちっ、ちっ、ちっ、攻略しろっていう訳じゃないのよ。ただ、お荷物を届けに行って欲しいだけなのよ」
「お荷物ですか?」
「そう、荷馬車十台分の薪をイクルート内の駐屯地までね」
「それで、イルクート兵の制服ですか?イルクート兵に化けて潜入せよと?」
「うんうん」
「そんな子供だましの作戦、成功するとお思いですか?そもそも、目的は何なのですか?そんな危険に見合う成果が見込めるのですか? あ、申し訳ありません、兵は死ねと言われたら疑問を抱かず死ぬものでした。余計な口を挟んでしまい申し訳御座いません。了解しました、さっそく人選を行います。みごと死んで参りますのでご安心下さい、でわっ」
「あ!待って、待って!なにか誤解をしている様だけど・・・」
「ご か い ですか?なにがです?わずか五百名で敵の本拠地に潜入しろと言うのは、死んで来いと言う事以外に何があるのでしょうか?大丈夫、兵士になった時点で覚悟は出来ております。見事散って参りますればご心配くださりますな」
「違う、違うっ、帝国ではそうなのかも知れないけれど、あたしの所では違うわ。あたしの所での基本命令そして最重要命令は 死ぬな よ」
「はっ?」
「そもそも、死を前提にした命令など出しませんし、許しません。もちろん、任務は死に物狂いで遂行して貰いますが、任務を果たしたらどんな事をしても帰って来るべし!帰って来て、初めて任務の完了なの。おかわり?」
「おかわり ですか?」
「あ、違う違う、 お わ か り ? よ」
「わかったかどうかと言われたら、どちらかと言うと理解不能 かと。我々は命令とあれば疑問を挟まず死ねと教育されてきましたので・・・。ましてや、生きて帰れなどとは。兵役が終わった時に生きて居れば幸運なんだな位にしか思って来ませんでしたので」
「なーんだか、悲しい国なのね、帝国って。そんなんじゃ生きている楽しみないじゃん」
「生きている楽しみ ですか。兵役に取られて以来考えた事もありません。逃げ帰ってきたら家族が酷い目に遭うので、家族を守る為には勝つか死ぬかしかないのです」
「殺伐とした国なのね。いいわ、ここではここのやり方に従って頂戴。無駄に死ぬ事は厳禁よ。部下にも徹底させてね」
「はぁ」
「作戦遂行にあたっては、頭をフルに使って死力を尽くして頂戴。でも、もし無理だと判断したら帰って来て頂戴。無駄に兵を死なさないで。作戦の成功は現場の兵の手柄。作戦の失敗は、命令した作戦指導部の責任。そう思っているから」
「おかしな事を仰る指揮官殿だ。その様な事を仰る指揮官は初めてです。普通、作戦が失敗すれば、お前達のせいだ!責任を取って死んで来い!で、指揮官は逃げるものではないのですか?」
「ふふふ、じゃあこれからは認識を新たにしてね。あたし達には聖女様のご加護があるから最後には必ず勝つの。だからみんなは死力を尽くして頂戴」
「はあ、了解しました」
なんか、狐につままれた様な情けない顔をしている。頭の中、混乱しているのだろうなぁ。今までは死んで来い、一辺倒だったのに、こんどは死ぬなだから無理もないけどねぇ。
「大丈夫、デビット・フォスターさんに別動隊を指揮してサポートして貰うから万が一の時は安全に撤退出来ます」
「デビットさんが参加なされるのですか!?それは心強い」
「うん、今イルクートから敵が寄せて来ているの。そいつらを片づけたら出発よ。あなた方は、十台の薪を積んだ荷馬車を護衛してイルクートに入り、街西部にある駐屯地に届けるだけの任務よ。もしできるのなら、薪は燃やして来て欲しいのだけれどね。無理のない範囲でお願いするわ」
「はっ、この一命に代えましても・・・」
「だからぁ、代えたらだめだって。必ず帰って来るのよ。いい?わかった?」
「はっ!」
なんかおかしいんだけど。たぶん、死んで来いって言われるより緊張してるんじゃないのかな?凄い神妙な顔してるわ。
さて、やる事はやったし、アナスタシア様のご様子でも見て来ようかな。
あたしは、テント群を抜けて緩やかな丘を登って行った。振り返ると地味な色のテントが無数に丘の斜面に張り付いていてある意味見ごたえのある風景と言っても良いだろう。
そんなテント村を横目に山道をゆっくりと登って行き、丘の中腹にある修道院が次第に近くなってきたんだけど、何故だか近くなるにつれ心臓がドキドキして来た。
そして、修道院が目の前に来た時、不安が確信に変わった。
無いのだ。あの、忌まわしい負のスキル、周りを不幸に追い込む負のスキルの発動が無いのだ。まさかっ!!
あたしは、いつしか走り出していた。そして修道院の入り口のドアに取り付き思いっきり開け放った。
「失礼しますっ!アナスタシア様はおいででしょうかっ!!」
入って直ぐの玄関ホールに一人の人影があった。ゆっくりと振り返った人物は・・・・。
イシワータ商会の大先生だった。小さな箱を持ったままこちらを見て、おどおどしている。
「あんた、こんな所で何してるのっ!?」
「ああ・・えと・・立って居ます」
「そんなの見りゃあわかるっ!」
「どあ が 急に開いたから ふ 振り返った」
「だ か らぁぁぁっ!!何やってるのっ!!!」
「立ってる・・・」
むきいいいいいいいいいっ!!!!もう、相手にしてられんっ!
「邪魔だからどいてっ!」
大先生を乱暴に押しのけて、食堂に入ったが人の気配は無かった。
「アナスタシア様ぁ!いらっしゃいますかああぁっ!」
反応がない。お風呂場にもいらっしゃらない。二階に登ってみたが誰も居なかった。窓から丘の南面に広がる畑を見回したが、誰も居なかった。
冷や汗が出て来た。なに?これはどういう事?あたしは階段を一気に飛び降り、まだ立ち尽くしている大先生を突き飛ばしながら表に出た。
修道院の周りを一周してみたが、人っ子一人居なかった。まずい、まずいぞおお、いったい何処に行かれたのだ?
あたしは、頭の中が真っ白になり立ち尽くしていたが、ふいに声を掛けられて我に返った。
「お嬢っ!どうしたの?」
アウラだった。丘を登るあたしを見付けて追って来たらしい。
「アウラっ、良い所にきたわ。アナスタシア様がいらっしゃらないのよっ!大変だわ、どこへ行かれたのかしら?」
「ええぇっっ!!本当ですかぁ?急いで探さないとぉ」
「手分けして探しましょう。アウラは右っ、あたしは左っ、テントを張って居る兵達に片っ端から聞きまくってっ!これだけ居れば誰かは見ているはずだから」
「了解しましたぁ~っ!」
あたし達は、丘の斜面でテントを張って次の作戦に備えている兵達にアナスタシア様を見掛けなかったか聞きまくった。
血相を変えて丘を駆け巡るあたし達を、兵士達は変な物を見る様な眼差しで見ていたが、そんな事を気にしている状況ではなかった。もし、ミッドガルズの生き残りが居て奴らに誘拐でもされていたりしたら、大変な事になってしまうからだ。クーデターの鎮圧どころでは無くなってしまう。
何としても帝国に悟られる前に、事を収めないとならない。
それにしても、アナスタシア様の護衛に就いていたはずのメアリーはどこに行ったんだ。密偵の手配を終えて戻って来ているはずなのに・・・。
それから一時間後、あたしとアウラは修道院に戻って来た。
ふたりで必死に聞きまくってみたが、誰もそのお姿を見て居ないと言う。おかしいだろう、アナスタシア様が動けば目立たないはずはない、必ず誰かが見ているはずだ。
それなのに、何故?こんなに人の目があるのに、何故煙の様に消える事が出来るのだ?有り得んだろう。
急いで次の手を打たないと。次、どうしたらいい?誰も目撃していないのだから、修道院のどこか秘密の部屋にでも隠れているのだろうか?
「アウラ?修道院に、秘密の部屋とか、秘密の抜け道とかってない?」
「うーん、うーん、それは無いと思うんですけど」
「修道院に居ないのなら、どこに出掛けたんだろう?どこにも行く宛はないはずなんだけどなぁ・・・」
あ、そうだ、中央情報処理センターに行けば情報が入って居るかも・・・
「アウラっ、地下に潜るよ。何か情報が届いているかも知れないから」
そう、言うと二人で駆け出してさっきまで居た地下の中央情報処理センターに逆戻りした」
途中、掃除道具のロッカーで蹴躓いて、バケツを頭からかぶったり、雑巾で足を滑らせて二人でもつれて転がったりしながら、地下の中央情報処理センターに辿り着いた。
室内に飛び込むと、みんなが一斉にこちらを見ていた。何と言うか、有り得ない物を見た時の様な表情だった。
「シャルロッテ様、そんなに慌てて、一体どうなさいましたか?」
センター長を始めとして、みんなののほほんとした態度に段々腹が立って来た。
「なんで、みんなそんなに呑気なの?アナスタシア様がしっそうなされたのよっ!何も聞いてないのっ?」
「アナスタシア様が疾走 ですか?」
「そうそう、砂埃をあげて全力疾走で って、なにボケてるのよっ!!走る訳ないでしょう!失踪よ、失踪!!」
「えーっと、アナスタシア様がですか?いったいどちらに失踪なされたので?」
「あのねぇ、何処に行ったか分って居たら失踪とは言わないでしょ!?」
「ごもっともです。しかし、こちらには一切情報が上がって来てはいないのですが。護衛にメアリー様が就いておりませんでしたか?」
「その、メアリーごと居ないのよ。だから、焦っているんじゃないの」
みんな、お互いの顔を見合わせては首を振って居る。お前知ってるか?いいや知らない。 って感じのやり取りをしているのだろう。
「誰か、アナスタシア様関連の情報を持ってはおらんか?どんな些細な物でもよいぞ?」
センター長のトッド・ウイリアム氏がみんなに聞いて回っているが、誰も情報を持ってはいなかった。
「おかしいですなぁ。不審者が動けば必ずなんらかの足跡を残すのですが・・・。後考えられるのは、内部に誘拐犯が居るケースとアナスタシア様ご本人が動いた場合ですな」
「いやいやいや、いくら何でもそれは考えにくくない?」
「でしたら、否定するだけの根拠をお持ちですか?」
「いや・・・根拠は・・・」
「根拠がないのでしたら、あらゆる可能性を考慮して次の一手を打つべきかと」
うー、確かにセンター長の言う事の方が正しいんだが・・・。
「まず、アナスタシア様の最終目撃情報を確定する所からですな、そこから考えられる全ての対応策を打たなければなりません。それと緘口令を敷かないとなりませんな、敵方にこの情報が漏れると厄介な事になりますので」
そう言うと、テキパキと部下に指示を出し始めたセンター長。一軒気が弱そうな外見だけど、かなりのやり手であり事が見て取れる。
なんか、急にバタバタしたんでさすがに疲れたな、少し水分の補給でも・・・ん?
「お嬢、一息入れられたら?冷たいお茶の用意が出来ていますよ」
こういう時のアウラは、実に有能だわ。
自分の分のお茶もしっかり持っている所を見ると、あたしを口実に自分が飲みたかったのでは?と、思わないでもないが、ま、いいでしょう。
あたしはお茶のカップを持って部屋の片隅に置いてあった椅子に腰かけて、ぼんやりと室内を見回した。
情報調査室って、名前だけ聞くと一日中部屋に籠って椅子に座って書類と睨めっこのイメージだったんだけど、まさに見ると聞くとは大違いだった。
座っている人はほんの一握りで、ほとんどの人は書類の束やメモを持って駆けずり回って居る。各々の役割分担がしっかりできているのだろう、情報が届くと割り振り担当の人が届いた情報を元に何枚かのメモを書き、テーブルに放り投げると別の人がそのメモを受け取り自分の持ち場に走って行く。
すると、すかさず数人の人がそのメモの元に集まり、一言二言言葉を交わすと散って行く。それの繰り返しだった。
何だか分からないけど、すごいなぁと見ていると、戻って来たメモがある人の所に集まって来る事に気が付いた。その人はメモを元になにやら報告書の様なものを仕上げ机の上の赤と青の二つの箱に放り込む。すると赤の箱に書類が入るや否や、その書類はセンター長の元へ届けられる様だ。
あ、センター長が受け取った書類を読み込んでいる。あ、読み終わったのかな?こっちに歩いて来た。
「シャルロッテ様、王都から出撃なされたお兄様の軍がイルクートからの迎撃部隊により挟み撃ちになり退路を断たれたそうに御座います」
「あら、予定通りね」
「はい、お兄様の軍は事前の計画通り、整然とニヴルヘイム要塞に入場なされました」
「後は、マイヤー兄様の腕の見せ所ね」
「はい、帝国軍もアドソン湖の対岸に布陣しつつありサリチアへの攻撃開始ももう間もなくかと」
「ハイデン・ハイン将軍はちゃんと動いてくれた様ね」
「はい、ムスケル様がイルクートからの部隊と接敵するのにはまだ時間がかかります。そうなると忙しくなると思いますので、今の内に休憩なさって下さい。情報が入りましたら、直ぐにお知らせいたします」
「ん、わかった。お言葉に甘えるわ。上のあたしの部屋に居るからよろしく」
「はい、ゆっくりお休み下さいませ」
深々とお辞儀をするセンター長のトッド・ウイリアムを背にあたしはアウラと部屋を辞した。
軽く食事をしてから、自室に帰りベッドに転がって今後の事を色々と考えている内にうたた寝、いや、しっかりと爆睡してしまったみたいで、アウラに起こされた時、既に夜になっていて外はすっかり真っ暗になっていた。
ベッドの上で起き上がったのはいいが、自分の置かれている状況がいまいち把握できなく、しばらく呆然としていたら、アウラに声を掛けられた。
「お嬢、お頭達が敵と接触したって、今報告が来た」
「へ?・・・敵? う~ん」
「お嬢、頭、働いている?」
「んんんん、起きてるよぉ。起きてるけど、目が開かないだけぇ・・・」
「もうっ、アナスタシア様が・・・うわあぁっ」
いきなり飛び起きたシャルロッテに飛びつかれたアウラはそのまま後ろに倒れ込んで尻餅をついてしまった。
「どこどこどこにいらしたの?帰って来られたのっ?どこ?どこ?」
「お!お嬢っ!!首っ!首絞めないでぇ!苦しいぃっ!!」
「あ、ごめん。で?どこにいらっしゃるの?」
「げほげほっ、もうっ、力加減考えてくださいよぉ」
「だからっ、どこにいらしゃるのよ」
とりあえずシャルロッテの下敷きで首を絞められたままでは話もできないので、必死に抜け出したアウラだった。
「第一報が入ったばかりなので、まだ詳しい事はわかりませんって。どうやら、お頭の所にいらっしゃる雰囲気です」
「雰囲気って何っ!?雰囲気って」
「わかりなせんよお、入って来た情報は、お頭達が敵と接触したって事と、その場にアナスタシア様と思われるお方がいらっしゃったって事だけなんですからぁ、うおっ!!」
いきなり立ち上がったシャルロッテに弾き飛ばされたアウラが体を起こした時にはすでにシャルロッテは廊下を爆走して、階段を落下する様に降りて行く所だった。
地下司令部に駆け込んだシャルロッテはセンター長のトッド・ウイリアムに詰め寄って居た。
「アナスタシア様は?アナスタシア様は、どこっ!!」
「シャルロッテ様、くっ 苦しいですっ、首を絞めないで!」
いきなり駆け込んで来たと思ったら首をぎゅうぎゅう絞められ、たじたじのセンター長だった。
「あ、ごめんなさい」
「今、続報が入った所です。整理しますと、ムスケル様達は敵と接触されました。その後、敵五百名と一緒にイルクートに向かったそうです」
「えっ!?イルクートに?一緒に?戦いになったのではなくて?イルクートには何をしに?」
「共同で、イルクートを開放するのだそうです。その先頭はリンデンバーム家の家紋の入った旗だそうです」
「はいいいぃぃっ!?リンデンバーム家って・・・」
「はい、代々聖女様を輩出なされているリンデンバーム家の事だと思われます。リンデンバーム家の御旗の元にみんなが集結したのではないかと」
「なぜ、そんな旗が?そんな物を勝手に使ったら大変な事になるわよ?」
「どうやら、その御旗の持ち主が一緒にいらっしゃる様です。リンデンバーム家の御旗と豪華な馬車を先頭にと書かれておりますれば」
「ど どういう事?アナスタシア様がいらっしゃるって事なの?」
「さあ、私には解りかねます。この文面からは、アナスタシア様かエレノアがいらっしゃるのではと想像するしかありませんです。如何なされますか?直ぐに全軍で追いかけますか?」
「んーっ。そうねここに居てもしょうがないわ。行くっ!」
決まったらシャルロッテの行動は早かった。全軍を出発させるべく屋敷の一階に上がり玄関ホールを駆け出そうとしたシャルロッテとアウラの前に意外な人物が待ち受けて居た。
シャルロッテは急停止してその二人の前で立ち止まった。
若い方は何度も見た男だったが、もう一人の初老の男は初対面であった。
「シャルロッテ様でしょうか?突然、申し訳御座いません。大急ぎでお知らせしないといけないと思い夜分失礼とは思いましたが、参上した次第に御座います」
「はぁ」
「わたくし・・・」
話を聞いたとたん、シャルロッテは若い方に殴りかかっていた。
「このおっ!スカタンがああぁぁぁぁっ!!!!!!」