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聖女様は疫病神?  作者: 黒みゆき
128/187

128.

大変お待たせ致しました。コロナの高熱も収まり、残るは味覚異常のみとなりました。

さあ、がんばって執筆をと思っておりましたが、コロナの影響で喘息が誘発されてしまい、一日中咳が止まりません。

そんな中での執筆でしたので、思う様に筆が進まず、短くなってしまい大変申し訳なく思っております。

今後も喘息の治療を頑張りますので、今しばらくは暖かく見守って頂けますと幸いです。


 いつもと変わらず、ニコニコと微笑んでいる、好々爺然としたその姿は、紛うことなき竜さんだった。

 ゆっくりと近づいて来るにつれてその優しい眼差しに胸が一杯になった。

 五十年経ったとは思えない位全く何も変わっていなかったのだ。


「シャルロッテ殿、ご無沙汰をしております」

 そう言うと、ゆっくりと腰を深く折ってまるで執事の様に挨拶をしてくる。

 その低く落ち着いた声に、心が落ち着く感じがするのは以前と同じだった。

「竜さんも、お元気そうで本当に良かったです」


「さあ、御二人とも立ち話もなんですので、席にお座り下さい」

 アナ様の声掛けで一旦席に着くことになった竜さん。ほんと何にも変わって居ない様だった。

 元々高齢だったって事もあるのだろうけど。


「我々は長命種ですからね、五十年くらいではそんなに変わらないのですよ。ほっほっほっ」

 久々に考えを読まれてしまった。


 全員が席に着いたところで、竜さんが静かに状況の説明を始めた。


「最初に、謝罪を申し入れます。此度の大災害は全て我が主、竜王の失態が始まりとなって居りますれば、まずは謝罪を申し上げます」

 いきなりの謝罪にあたしはあっけに取られてしまった。


「竜のおじさま?確か竜王様はこの大地を統べておいでと伺いましたが?」

 アドが遠慮なく質問をぶち込んでくる。

「はい、その通りで御座います。この世界は八柱の神々によって運営されておりまして、竜王様もその一柱なのです」

「なるほど・・・。ですが、その様なお立場の神とも言われるお方が、この様な未曽有の大惨事を起こすなどとは、考えにくいと思うのですが?」

「ははは、可愛いお顔で、実に痛い所を突いてこられますな。そう、仰られる通り、通常でしたらこの様な事態は有り得ないのです」

「では・・・」

「はい、今回の背景には、この世界の運営に携わっていた魔族の意志が強く関わり過ぎたのです」


 ちょっと、なにそれ?なんで世界の運営に魔族なんて参加させるのよ、有り得ないんじゃない?

 あたしが心の中で憤慨していると、アドは冷静にツッコミを入れる。


「先程、八柱の神々と仰られましたよね?ひょっとして、神と魔族って、これといった線引きがないと言う事ですの?私達は、神は天界に、魔族は地の底と住み分けている認識でしたが、そもそもそこから間違っていたと?」

「ありていに申し上げれば、そう言う事になりますな」

「なるほど・・・そうなのですね。わかりました。ではお話を進めて頂けますでしょうか?」


「承知致しました。ええ、そうですね、まず大陸が沈んでしまうきっかけとなった大火山活動の所からお話ししましょう」

 竜さんは、静かに全員を見渡すと、ふたたび話しを始めた。

「竜王様の最大のお仕事は竜脈の整備となります。竜脈の整備は竜王様をもってしましても身を削る程の大変な仕事なのです。そんな中、竜脈のエネルギーを無断に使われ、北部地方に大火山活動を誘発されてしまったのです」


「ああ、あの大惨事になった奴ね」

 さすがのあたしでも、あの時の記憶はまざまざと残っている。

「ええ、さすがにあそこまで竜脈を滅茶苦茶にされると、竜王様といえど簡単には修復出来るはずもなく、その後は竜脈の整備に専念する事になりました。それも、できうる限り短時間で修復しないと地上が大惨事になってしまうという縛りもあった為、竜王様も大変だったので御座います」

 みんな、うんうんと頷いている。


「竜王様のご不幸は、その隙を突かれてしまった事です。竜王様と言えども万能では御座いません。大陸の崩壊をお知りになったとき、大陸の存続と民の存続、究極の選択だったと思われます」

「それで、転移を?」

 アナ様達にとっては既に周知の事なので、平然と聞かれていた様だったが、初めて事の真実を聞かされたあたし達は、どんなリアクションをしていいか分らず、ただただ呆然としてしまった。

 竜さんは、仕事の一部であるかの様に淡々と報告を続けている。


「はい、竜脈をずたずたにされ、これ以上あの大陸の維持は不可能であると感じられた竜王様は、人族の種の保存を最優先に考えられ、新天地である新大陸の作製に取り掛かられました」

「それが、ここなのね」

「はい、ただ地盤を固定するだけでも物凄い労力を消費してしまいます上、そこに住み着く生物の固定までは到底間に合いませんでした」

「それで、ここには生き物が極端に、と言うかほとんど居なかったのかぁ」

「その通りで御座います。中途半端で大変心苦しいのではありますが、皆様のお力で旧大陸から運び込まれるのが最も早いのではないかと存じます」


 うむぅ~、簡単に運び込めと言うが、いったいどうやって・・・・あ、そうか・・・

 自分の手を見つめながら考えているとハッと思う所があり、勢いよく竜さんを見上げた。


 だが、竜さんにはあたしの考えなど全てお見通しだった。

「これは人族存亡の危機であるとお考え下さい。神々は人族には戦う牙も空を飛ぶ翼も身を護る鎧も与えませんでしたが、代わりに協調性と知恵を与えました。それをどう使うかはみなさん次第なのです。私はこの新大陸においては、たんなる管理者に過ぎません。アナスタスア殿と一緒に居て、最悪の事態にのみ力をお貸しします。授かった能力をフルに使い、事態を乗り越えていかれる事を心より望みます」


 それだけ言うと、竜さんは黙ってしまった。

 そんな・・・最悪じゃない、勝手にやれだなんて・・・。


 だが、そう思っていたのはあたしだけみたいだった。

「姐さん、良かったですね。自由にやってもいいそうですよ?変に制限かけられるよりよっぱどやり易いと思いますよ?」

 ニコニコとアドラーはそう言って来た。

「そうですよ。ここはお嬢の独壇場って事でしょう?型にはまった世界よりも自由奔放に一から出来るこんな世界こそが、お嬢の能力を十分に発揮出来る世界なんじゃないですか?」

 アウラもノリノリだ。

 あたしって、そんなに野生児なん?そんなに型にはまっていないん?


 その時、室内に笑い声が響き渡った。

 声の主はマーガレットさんだった。黄色のツインテールを揺らしながら大笑いをしている。

「ハハハハハ、お前の仲間はちゃんとお前の事を理解しているではないか。いつまでここでうだうだしているつもりだ?さっさと行動に移す時じゃないんか?バックアップはしてやる。さっさと腰を上げんか!」


 思わずアナ様の事を見ると穏やかに微笑んでおられた。

「一緒に行動出来なくてもうしわけありません。人手が足りなく十分なお手伝いが出来なくて心苦しいのですが、宜しくお願いします。我がパレス・ブランはシャルロッテ殿を全面的に支持いたします」

 そう仰られると、静かに立ち上がりそっとその頭を垂れられた。


 あたし達は、慌てて立ち上がりアナ様に対して頭を下げる事しか出来なかった。


 こうして、あたし達はゆっくりと休養を取る事も無く、ふたたび得体の知れない大地に旅立って行く事になった。

 やはり、あたしの不幸体質のせいなのだろうか?


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