第19話 リドル 02
誰がリドルかと考えても「これだ!」という人物は浮かんでこない。誰もリドルっぽくないというのが正直なところだ。
でも、奴は言った……彼らの中にリドルがいると……
――こういうときは消去法だ。
とりあえず絶対に違うと言える人物を候補から外していくことにする。
まず最初に、真部が言っていた「リドルは何年も前からゲームをやっている」というところから推理してみると、乾祥子と逢坂大和はリドルではないとみていいだろう。
乾はゲーム内で自分が17だと明言していたし、事前に生野の資料を見ているので間違いない。逢坂に至っては乾よりさらに年齢が下だ。
インターネットで見た7年前の書き込み。あれが最初のゲームだと仮定したとして、乾は10歳、逢坂はさらに幼い頃からゲームをやっていたことになる。まさか10歳にも満たない内から、イカれたゲームをやっているとは到底思えない。
それからもうひとり尾乃道健史だ。生野の資料に尾乃道の年齢は21と書かれていた。だから同じ理由で、尾乃道も除外だ。
残り3人――
梓が亡くなった事件――爆発事件。真部の言う通りあれがリドルによって引き起こされたものなら、リドルは爆発物を使ったということだ。つまりリドルは爆弾に関する知識を持っているということになる。
小寺厳はゲーム内でパソコンの使い方を知らないというような発言をしていた。そんな奴に爆弾を使って人を殺すことが可能だとは思えないからこいつも除外していいだろう。
残るは今城淳と角田友貴だ。はっきり言えば、どっちがリドルでもおかしくはない。
だが、この2人は答えを間違えた最初の4人の中に入っている。今城に至っては答えそのものが間違っていた。角田の答えは、真部が用意した複数の答えの中の1つだ。そういう観点で言えば角田のほうがリドルっぽいと言えるのだが……引っ掛かるのは、ゲーム中の逢坂の発言だ。
逢坂は、ゲームの最後にこんなような事を言っていた。
『この中にリドルがいて、ボロを出さないために早めに脱落した可能性がある』
もちろん、実際にイミテイションゲームをやっていたのはオレたちであってリドルじゃない。
だがもしも、紛れ込んだリドルが絶対に死なないということを知っていた場合は話が違ってくる。
今城のように、わざとかすりもしない答えを入力して脱落してしまうという芸当をやってのけている可能性もあるんだ……
「くそっ!」
答えが出なくてイライラして両手で頭を掻きむしる。
頭上のデジタルカウンターを確認すると、まだ5分ちょっとしか経ってなかった。
――そういや、なんか言ってたっけ?
答えを2度見ているだったか……たしかにオレは、リアルタイムで1回、さっきの録画で1回、合計2回ゲームを見ていたことになる。
映像の中に答えがある……映像の中に……
なんとなく部屋をぐるりと見回してみた。
――さっきも思ったが、この部屋で寝てたはずの6人ってどうなったんだろう?
映像の最後のシーンを思い返してみる。
――あれ?
そこで、オレは自分が置かれているこの状況がおかしいことに気が付いた。
それは、リドルはどうやってオレをここに連れてきたのか、ということだった。
ゲームが終わったときのことを思い出してみる――
あのとき、生野が部屋を出ていってから、しばらくしてオレは扉を開けた。部屋を出る直前に見たカメラの映像には眠っている6人が、確実に映っていた。
あの状態で6人の中の誰かが、生野にバレず、真部にも気づかれず、部屋で寝ている奴を全員外に出してオレをここに連れてくるなんてできるのか?
そもそも、あのとき眠っていた6人に犯行は不可能なんじゃないか……?
ってことはつまり――
「なんだよ……そういうことだったのかよ……」
そうだ……《《彼女》》にならすべての犯行が可能だ……
正確には彼女にしかできないんだ……
一緒にゲームの準備をした仲間だと思って除外していたが、彼女も立派なゲームの参加者だ。
決まりだった……リドルの正体は――
生野だ――
そういえば、リドルは最初にこう言っていた。「オレたちが潜り込む隙を作った」と。
……それはつまり、リドルは自らの意思でこのゲームに参加したってことじゃないか。イミテイションゲームに参加した7人の中で、6人は真部が適当に選んだ。もし、この6人の中にリドルがいるなら、潜り込むという言い方はおかしい。
ただ、生野だけが最初からゲームに参加することが決まっていた。ほかの6人が誰になったとしてもそれは変わらない。しかも、生野は自ら名乗りを上げてこのゲームに参加していたじゃないか。
ゲームの準備をしているとき生野はオレに言った。
疑え……と。
――あれって、こういうことだったんだな……
オレはパソコンに『生野恵』と入力した。
大きく深呼吸をする。仰ぐついでにデジタルカウンターに目を遣ると、残りは20分以上あった。
結果的に、いとも容易い勝利となった。
オレはそのままエンターキーを押した――
しかし……
期待とは反対に、パソコンが発した音はイミテイションゲームで何度も聞いた、あのエラー音だった……




