金の斧銀の斧 (もうひとつの昔話23)
正直なきこりの男がおりました。
ある日。
男は斧で木を切っていたのですが、つい手を滑らせてしまい、そばにあった池の中に大事な斧を落としてしまいました。
斧がないと仕事ができません。
男はこまってしまいました。
と、そこへ。
池の中から神様があらわれ、ピカピカに光る金の斧を男に見せました。
「オマエが落としたのは、この斧か?」
「いいえ、ちがいます。わたしが落としたのは、そのような立派な斧ではありません」
「では、この斧か?」
神様は銀の斧を見せました。
「いいえ、そのようなきれいな斧でもありません」
「では、この斧か?」
神様が次に見せたのは古い鉄の斧でした。
「はい、その斧です。拾ってくださってありがとうございます」
「オマエは正直な男だな」
神様はたいそう感心して、古い鉄の斧といっしょに金の斧も銀の斧も与えました。
その話を聞いた隣の家の男。
ならば自分もと、長年連れ添った古女房を連れて池へと出かけました。
「えいっ!」
男は古女房を池に投げ入れました。
と、そこへ。
池の中から神様があらわれ、とても美しい女を男に見せました。
「オマエが落としたのは、この女か?」
「いいえ、ちがいます。わたしが落としたのは、そのような美しい女ではありません」
「では、この女か?」
神様は若い女を見せました。
「いいえ、そのような若い女でもありません」
「では、この女か?」
神様が次に見せたのは、男が長年連れ添った古女房でした。
「はい、その女です。拾ってくださってありがとうございます」
「オマエは正直な男だな」
神様は古女房は池に残して、美しい女と若い女を与えました。
その話を聞いた正直なきこりの男。
ならば自分もと、長年連れ添った古女房を連れて池へと出かけました。
「えいっ!」
男は古女房を池に投げ入れました。
と、そこへ。
池の中から神様があらわれ、隣の家の男の古女房を見せました。
「オマエが落としたのは、この女か?」
「いいえ、ちがいます。わたしが落としたのは、その女ではありません」
「では、この女か?」
神様が次に見せたのは、男が長年連れ添った古女房でした。
「はい、その女です。拾ってくださってありがとうございます」
「すまんのう。この池には、もうこんな女しか残っておらんのだ」
神様はそう言って、男の古女房と隣の家の男の古女房をくれたのでした。