プロローグ 兄の苦悩
夢を見た。
そう私は夢を見たんだ。
8年前…
「だから言ったんですっ!
エリーゼにはまだ早すぎると!」
俺の妹エリーゼがダンジョンで怪我を負い帰還してきたことを知った俺は、父であるレーテルに猛抗議をした。
「お前はエリーゼのことがわかっていない!
あいつの才能は私が一番知っているのだ。口出しをするなっ!」
「現にエリーゼは身体中を負傷し、命からがらかえってきたんです。
確かに才能があるのは解ります。ですがっ、エリーゼはまだ8歳なんです。ダンジョンに挑むことができるのは若くても12歳だったはずです!」
「才能のないお前には解らぬことだ。12歳のお前はなにをしている?
学園での成績は実技・学科共に常に最下位じゃないか。
エリーゼのことをとやかく言う前に自分の成績のことを考えるんだな。」
そう言われた俺は何も言い返すことができなかった。
俺はなんで生を受けたのだと自問しては答えのだせない毎日を送っていた。
俺の通っている国立ユーテルエム魔剣学園は7歳から12歳までを初等部、13歳から15歳が中等部、16歳から19歳が高等部となっている。
まだ低学年の時は良かった。授業にもついていけたし、クラスメートとの関係も良好だった。
事件は4年生になった時だった。
「◯◯って実技も学科もできなくて、ださくない?」
「私もそう思ってた。あいついらないよね。」
「辞めさせようよ!」
そんな会話をされていたことなど知る由もなかった俺は、その日も学園でいつもと変わらない日常を送っていた。
休み時間
この問題難しいな…。
「シータ、ここの解き方教えくれない?」
「……」
ガタッ!
隣の席に座っている親友のシータに解き方を聞いてみたが彼はなにも言わず席をたち、教室からでていった。
シータどうしたんだろ?体調よくないのかな?
そんな時にクラスメートの女の子から声をかけられた。
「◯◯ちょっといい?」
「なんだい?」
「こっちにきて」
クラスメートに付いていった先には7人程の生徒がおり、その中には先ほど話しかけたシータもいた。
「こんなに集まってどうしたの?」
「お前さ、学園から消えてくれない?邪魔なんだよ!」
「めざわりなの!わかる?消えろ!」
その後、消えろ!消えろ!と罵られた。
急につれてこられ、訳がわからず俺はたちつくすしかなかった。
「シータ…」
みんなに混じって親友のシータも消えろコールをしており、それを見た俺は逃げるようにその場から離れ教室には戻らず、近くの公園にきていた。
「なんで…なんでシータまで…」
その次の日からが、地獄の始まりだった。