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閃炎輝術師ルーチェ - Flame Shiner Luce -  作者: すこみ
第11章 魔王軍総攻撃 - great fierce battle -
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669 ◆星輝士様の職務質問

 石を持ってゆっくりと背後から近づく。

 そいつが気づいて振り向いた瞬間、一気に駆ける!


「テメ――」

「おらっ!」


 あたしはそいつの顔面に思いっきり石を叩きつけてやった。

 鼻の骨が砕ける小気味の良い感触が手に伝わる。


「ぐえっ」


 はっ、ざまあ!

 蛙の潰れたような声を出すチンピラ。

 でもこんなもんじゃ、あたしの怒りは収まんないからな?


「おらっ! おらおらっ!」


 そのままチンピラの後ろ髪を引っ掴んで、何度も頭を殴打する。

 途中で反撃をしようなんて気にならないほど徹底的に痛めつける。


「な、なんだこのアマ!」

「頭おかしいんじゃねえのか!?」

「おいコラァ! いい加減にしやがれっ!」


 呆気にとられていた他のチンピラたちが、あたしを止めようと襲いかかってくる。


「せいっ!」

「あぎゅあぶっ!?」

「あっ……」


 掴んでいたチンピラA(仮)の頭を盾にして攻撃をガード。

 仲間を殴ってしまいうろたえるチンピラB(仮)。

 その顔面めがけて石を投げつける!


「ぎゃっ……おっ?!」


 仰け反ったところで、思いっきり股間を蹴り上げてやった。

 悶絶するBに気を失ったAの身体をぶつけ、二人まとめて地面に転がす。


「さ、まだやる?」


 あたしは手を払いながら、残ったチンピラたちを見回した。


 大人数相手にケンカをするときの戦法その一。

 とにかくまず、こっちのアブナさを見せつけてビビらせる。

 運が良ければそれで引いてくれる事もあるから、手加減は一切無用だ。


 逆上された時の報復はシャレにならないから、あまりお勧めはできない戦法なんだけど。


「おう、姉ちゃん」


 そして、チンピラのボスは冷静だった。

 懐から取り出したタバコに火をつけ、低い声で凄んで来る。


「さすがにこいつは冗談じゃ済ませられんわ。アンタ、やっちまったなあ。今日を限りに二度とこの街でゆっくり眠ることはできないと――」

「おらぁっ!」

「へぼぶ!?」


 大人数相手にケンカをする時の定石その二。

 とにかくまず、敵のリーダーをぶっ潰す。


 あたしは光の棒でボスの横っ面を思いっきり引っぱたいた。

 言葉で脅しゃ相手がビビると思ってるアホ男が。

 そんなん怖くもなんともねーし。

 こちとらドラゴン相手に本気の殺し合いも経験しとんじゃボケが!


「次はどいつよ?」


 テンション上がってきたわ。

 こうなったらまとめて叩きのめしてやろうかしら。

 まあ、こいつらがこれでビビらないほど、頭の悪い集団だったらの話だけど。


「ふっざけんなコラーッ!」

「おい、誰かアジト行って援軍呼んで来いや!」

「このアマ拉致って埋めるぞ! バラッバラに刻んでやるァ!」


 頭の悪い集団だったわ。


「じょーとー。かかってこいや!」


 あたしは指を立てて挑発をした。

 その直後、何か光るものが飛んできた。


「っ!?」


 あたしはとっさにそれを光の棒で打ち払った。

 頭に血が上っていたチンピラたちは避けられずまともに食らってしまう。


「ぐわあっ!?」

「痛ぇっ! な、なんだ……?」


 チンピラたちの身体に突き刺さったもの。

 それは明らかに輝術で作られた氷の矢だった。


「だめですよー、街中でケンカなんて☆」


 通路の向こう側に誰かが立っていた。


 派手な格好をした女。

 明らかに染めた感じのカラフルな髪。

 頬とフリフリ服の至る所に星マークを付けている。


「悪い子は星帝十三輝士シュテルンリッター三番星のフリィがお仕置きです☆」




   ※


 シュテルンなんとか……

 ってこの国の偉い輝士だっけ?

 あー、さすがにちょっとヤバい状況かも。


 あたしは光の棒を柄だけの状態に戻し、素早くズボンのポケットにしまった。

 そして両手を挙げて、抵抗する意思のないことを証明する。


「待って。あたしはこいつらに絡まれて一方的に脅されてたのよ」

「こ、これだけやっておいて何を――へぶっ!」


 かろうじて意識があったチンピラを蹴りつけて黙らせる。


「停めておいたあたしの輝動二輪をこいつらがパクろうとしたの。それを取り返そうとして、ちょっと抵抗しただけ。十分に正当防衛の範疇よね?」

「うーん?」


 頬の星マークに指を当てて笑うフリィとかいう女。

 笑顔なのに目はちっとも笑っていない。


「でも、暴力は暴力ですよね☆」

「だから正当防衛だって。それを言うなら、いきなり街中で輝術をぶっ放すあんたはどうなのよ」

「私は治安を守る輝士ですから☆」


 なんだろう、こいつのうさん臭さは。

 輝士ならなおさら街中で氷矢グラ・ローなんてぶっ放すか?

 ちょっと反応が遅れてたらあたしも巻き込まれてたんだぞ。


 あ、考えたらむかついてきたわ。


「つーかあんた、本当に偉い輝士なの? そんなふざけた格好で?」

「アイドルも兼ねてますから☆」


 わけわかんない。

 けどこいつが相当に強いのは、たぶん間違いない。

 さすがにベラお姉様辺りと比べると劣るけど、そこらのチンピラとは格が違うオーラが漂ってる。


 得体の知れない不気味さは、あのターニャにも近いものがある。


「詳しい話は衛兵詰所で聞きましょう☆ その人達がこの辺りで窃盗を働いている不良集団だってことはこっちでも認識していますから。証言のための参考人として同行してくれます?」

「まあ、それくらいなら……」


 これは下手に断ったりしたら余計に疑われるパターンね。

 相手がただの輝士ならともかく、こいつからは逃げられる気がしない。


「それから……」


 フリィはちらりと輝動二輪の方を見る。


「その機体はこちらで預からせてもらいますね☆」

「は? なんで?」

「失礼ですけど、あなた未成年ですよね? BP750(ベルサリオンペサーレ)なんて高価な輝動二輪をどうやって手に入れたんですか?」

「それは……知り合いにもらったのよ」

「もしかして、道ばたに落ちていたのを拾ってあげた知り合いさんですか☆」


 あ、ヤバい。

 これ完全にあたしが盗んだと疑われてるやつだ。


 時間さえかければ、疑いはたぶん晴らせる。

 フィリア市で知り合いから譲ってもらったってのは事実だし。

 ……まあ、あいつらが持ってきたこの機体が盗品じゃないって保証はないけど。


 それより問題は、この機体にまだウイングユニットが装着されたままってことだ。

 異世界の道具を偉い輝士に調べられたら、きっと面倒なことになる。


「えっと、それは……」

「あら。引き渡しを拒否するんですか?」


 どうしよう、マジで。


「ちょっと待った!」


 頭上から声が降ってきた。

 見上げると三階の窓の所にミサイアがいる。

 彼女はそこから身を乗り出して……飛び降りた!?


「てやっ! ――あっ」


 そのまま両足で地面に……


「ぎゃーっ!?」


 着地できなかった。

 うわあ……


「痛い! 足がすっごく痛いです!」

「当たり前でしょ。いきなり飛び降りるなんて何考えてんのよ……」

「リングがないこと忘れてたんです! あれくらいの衝撃なら耐えられるはずだったんですよ!」

「あらあら、可哀想な子☆」


 同情するような嘲るような声でミサイアに近づくフリィ。

 彼女は足を抱えてぎゃーぎゃー叫んでるミサイアの横にしゃがみ込んだ。


 そして。


水霊治癒アク・ヒーリング


 手をかざし、輝術でミサイアの足を治療する。

 あれ、いまこいつ、輝言の詠唱した?


「おお。痛みが引いていく……」

「顔色も悪いですね――風霊治癒ウェン・ヒーリング


 さらに彼女は別の治癒術を唱える。

 二日酔いで青ざめていたミサイアの顔に赤みが差す。


 治癒術ってだけでも難易度が高いのに、二系統を使いこなすなんて。

 こいつ、やっぱり並の輝術師じゃないわ。


「あ、すごい。気持ち悪いのも治っちゃいました。この世界の魔法ってすごいですね」

()()、ですか……」


 あ、バカミサイア。

 異世界ワードはやめろって言ったのに。

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