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閃炎輝術師ルーチェ - Flame Shiner Luce -  作者: すこみ
第11章 魔王軍総攻撃 - great fierce battle -
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665 一番星対策法

「それそれ、あはははーっ!」


 次々と迫り来る氷の矢。

 私は炎の翼を拡げて飛びまわりながら回避する。

 閃熱フラルの翼を使わないのは、可能な限り輝力を節約するためだ。


 もう、あまり輝力に余裕はなくなっている。

 このまま戦い続ければせっかく溜めた輝力もすぐに空になってしまう。


 回避するために飛んでいるだけでも輝力はどんどん減っていく。

 氷の矢を火蝶で相殺したり、輝術中和レジストしたりするのも無駄な消耗だ。

 攻撃が当たってダメージを食らってしまえば治癒術も使わなきゃいけない。


 なので、私は上空で戦うのをやめた。

 とりあえず下に広がる森の中に逃げ込む。


「おや、逃げるのー? 臆病者かなー?」


 挑発的な黒将の言葉は無視。

 逃げながら反撃の手段を考える。


「スーちゃん、私の声が聞こえる!?」


 ――聞こえてるよ。


「よかった。それじゃどうすれば良いと思う?」


 ――正直どうやっても厳しいな。黒将があんな秘策を持っているとは思っていなかった。


 無限の輝力に加えて先生の輝術だもんね。

 ほとんどインチキみたいなもんだよ。


 ――敵に完全回復術がある限り一撃で仕留めなきゃダメだ。けど、今のお前には難しい。


 私の使える輝術で一番威力が高いのは極天戦神魂光核弾ミスルトロフィアだけど、それでもあいつを一撃で倒せるほどの攻撃力はないし、しくじれば消耗も凄まじい。


 ――お手上げ、かな。


「ちょっと、諦めないでよ!」


 ――真面目な話、ここは一旦仕切り直すべきだ。あいつを倒せる仲間を連れて改めて挑まないと。


 将を一撃で倒せる人って言うと……


 ジュストくん!

 そうだ、ビシャスワルトでエビルロードを倒した、あの白い闇の剣なら!


 ――やることは決まったな。とにかくここは逃げ延びるぞ。


 あ、でもヴォルさんたちがまだ向こうで戦ってるよ。


 ――助けるのが無理なら諦めろって言いたいが、聞かないだろうな。


 当たり前です。

 よし、まずはみんなと合流して、


「ばあ!」

「ぎゃーっ!?」


 おもしろ顔をした黒将が逆さま状態で目の前に降ってきた!

 先生の顔でそう言うことするのやめて欲しい!

 

「なーに逃げようとしてるの? 言っておくけど、絶対に逃がさないからね。お嬢様はここでぼくに殺される運命なんだから」

「はぁ、はぁ……」


 とりあえず呼吸を落ち着ける。

 本気で心臓が止まるかと思ったよ。


「それとも、逃げながら仲間が助けに来てくれるのを待ってるの? ざーんねんでした、それは無理でーす。だってぼくは娘達にある命令を出してるからね。どんな命令だと思う? 聞きたい? 聞きたい?」


 なんか勝手にひとりで喋ってるし。

 別に聞きたくないけど、時間稼ぎさせてもらおう。


「聞きたいからゆっくり話して」

「いいでしょう。それはね、『町をみんなで襲え』って命令だよー!」

「……え?」


 私は顔を上げた。

 黒将はくるりと反転して地面に降りる。

 一応、攻撃は警戒しているのか、私から微妙に距離を取りながら。


「ぼくはヒトの弱点をよくわかってるんだよー! 民が襲われてると、みーんな無理してでも助けようとしちゃうんだよね。ほんと意味わかんない。危険を冒して役にも立たない雑魚を助けるなんて、いったい何がしたいんだろうねー?」


 口元を抑えてぷぷぷと嫌らしく笑う。


「ぼくの娘たちが向こうにある町を襲えば、あいつらは必死に追いかけて行くでしょ? お嬢様はきっと大丈夫だって、都合よく勝手に信じ込んでさ。ぼくの娘達はそれほど強くないけど数は多いからね。全部やられるまえに確実に町に大きな被害を出せるよ!」


 そんな黒将を……


「帰ってきた頃にはもうお嬢様は死んじゃってる! 本当に大事なものを判別できない哀れなヒト。ああ、なんで愚かで間抜けな――」

「オラァッ!」

「へぶーっ!?」


 ものすごい勢いで飛んできたヴォルさんが思いっきり後ろから殴りつけた。

 こっちに吹っ飛んできた所をすかさず爆炎黒蝶弾ネロファルハで迎撃。

 爆風をもろに当てて地面に叩きつけた。


「ルーちゃん、無事!?」

「はい……って、ヴォルさんなんでここに!?」


 黒人形たちと戦ってたはずじゃなかったの?


「ルーちゃんが心配で助けに来たのよ。あの黒いのはベラちゃんに任せてね」

「ベラちゃん!?」


 ちゃん付けで呼ぶほど仲良しになっているとは……

 まさかと思うけどヴォルさん、お姉ちゃんに変なことしてないでしょうね?


 いやいや、それは今はどうでもいい。

 確かに助かったけど、向こうのことも心配だ。


「いくらお姉ちゃんでも、ひとりであの数と戦うのは厳しいと思うよ」

「大丈夫よ。なんかアイツら、ほとんどアタシらを狙ってないみたいだったし。追いかけてやっつけるなら時間さえ掛ければ何とかなるでしょ」

「いやいや、それってたぶん……」

「ははははは! かかったな人類戦士!」


 うつぶせに倒れていた黒将が起き上がってヴォルさんを指さす。

 彼女はうるさそうに顔をしかめた。


「なに、あのグレイロードそっくりのやつ」

「黒将が先生の体を乗っ取ってるみたい。先生と同じ輝術を使うし、無限の輝力を持ってる強敵だよ」

「ふーん。で、何が『かかった』なのよ?」


 黒将は口元を押さえておかしそうに語る。


「ぼくの娘たちには近くの町を襲うように命令してあるのさ。さあ、はやく追いかけないと、罪もない民がたくさん犠牲になっちゃうよー! それともお嬢様を助けるためにそいつらを見捨てる? できないよねー! ぷぷぷ」

「オラァッ!」

「ぷぼーっ!?」


 ヴォルさんは黒将に一足飛びで接近。

 バカみたいに笑っている横っ面を思いっきり蹴り飛ばす。


「なにすんのさ!? ぼくに構ってないで、はやく町の民を助けに行きなよ!」

「いや、町とかどーでもいーし。アタシにとってはルーちゃんの方が大切だから」

「ヴォルさん……」

「あっ、ダメだこいつら。人質作戦が通用しないよ。おまえらそれでもヒトか! 自分さえよければいいのか! この人でなし!」


 さっきも言ったけど、こいつには言われたくない。


「つーか、オマエを倒せばあの黒人形も消えるんでしょ? なら二人で協力してさっさと始末した方が手っ取り早いじゃない。ベラちゃんも時間稼ぎはしてくれるだろうし」

「ぐぬぬ……」


 しかし、過去最悪にヤバい敵なのに、なんだろうこの緊張感のなさは?

 あれがやる気を奪う演技だとしたら相当だけど、たぶん違うんだろうなあ。


「……まあいいや。赤い髪の人類戦士、たしかヴォルモーントとか言ったね?」

「違うわよ」

「違うのー!?」

「ヴォルさん、あまりからかわないであげて」


 話が進まないからさ。

 この隙に逃げるならいいけど、そうもいかない。

 黒人形たちに狙われている町を助けるには、こいつをやっつけるしかない。


 こいつを無視して黒人形を退治したとしても、無限の輝力によってまた新しい黒人形が生み出されるだけだろうし、絶対に邪魔してくる。


 ヴォルさんと二人がかりなら倒すチャンスもあるかもしれない。


「それじゃ、ヴォルモーント。おまえにひとつ言っておくよ」

「気安く名前で呼ばないでくんない?」


 あくまで挑発的な態度を続けるヴォルさん。

 黒将はそれに乗ることなく、ニヤリと口元を歪めた。


「ぼくはね、操っているヒトの生前の記憶も持っているんだ。このグレイロードとかいうヒトの記憶もしっかりと全部頭に入ってるよ」


 先生の……記憶!?

 それは興味あるような――

 じゃなくて、死んだ人から記憶まで奪うなんて許せない!


「あっそ。だから何?」

「こいつの記憶の中にね、こんな情報が残ってたよ。()()()()()()()()()()()()()のための対処法ってやつがさ!」

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