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閃炎輝術師ルーチェ - Flame Shiner Luce -  作者: すこみ
第10章 最後の休息/第三の世界 - looking for my friend -
624/800

624 宝の地図

 私に向かってくる山賊たち。

 彼らの動きが一斉にスローになる。


 うーん、そう簡単に改心するとは思わなかったけど……

 まさか火傷を治す前に全員で攻撃してくるとはね。


防陣翠蝶弾ジャーダファルハ


 翠色の蝶をひとつ目の前に浮かべる。

 それは私の周囲を包む半透明の球体になった。


「死にやがれ!」


 幅広片刃の剣を思いっきり振り下ろす山賊たち。

 その攻撃はすべて翠色の防御壁に阻まれる。


「無駄だよ。ねえ、嘘をつくにしても、もっと――」

「死ね! 死にやがれぇ!」

「山賊を舐めんなよクソアマぁ!」

「小賢しい防御の術なんぞ、かち割ってやるよぉ!」

「あの、話を――」


 がきんがきんがきんがきんがきんがきん。


 うるさい!

 絶対に割れっこないんだから、さっさと諦めてよ!


 こいつらに何を言っても意味がなさそう。

 とりあえず、山賊たちが疲れるまで放っておくことにする。

 彼らは剣を振り下ろしながら、口々に好き勝手なことを言い放っていた。


「遊びで山賊やってんじゃねえんだよ!」

「オレらが今までに何人殺したと思ってんだ!? あぁ!?」

「テメエもすぐ外に転がってる白骨どもの仲間入りにしてやんよ!」

「今さらビビっても遅えぞ! こいつが割れた時がテメエの最後だからなぁ!」

「謝っても許さねえッ! 死刑確定ッ!」


 はあ、もういいよ。

 好きなだけやっててください。


「この馬鹿女、こいつが割れたらどうするよ?」

「そうだな……あの時の女みたいに、吊して薄切りにするってのはどうだ?」

「ああ、一〇人くらいのガキを引き連れてた、馬鹿な女な!」

「ぎゃはは! あん時は傑作だったな! 子どもたちには手を出すな~、とか、泣き叫んでよ!」

「あー、はいはい、あの馬鹿女ね。目の前で一匹ずつガキを殺してやった時の顔、いま思い出しても笑えてくるぜ!」

「いいねえ、それで行こうぜ!」


 私は自分を守っていた翠の球体を消した。

 途端、彼らの剣が私の身体をざくざくと斬りつける。


「おいおい、いきなり割れてんじゃねえよ!?」

「クソッ、勢い余ってやっちまったじゃねえか!」


 肉が裂け、骨が断ち割られ、血飛沫を飛び散らせながら、私は彼らに問いかける。


「ねえ、いま何て言った?」

「あ? なんだこの女、まだ生きて――」


 ごめん、スーちゃん。

 やっぱり私が間違ってたよ。


 こいつら、問答無用でころさなきゃいけない、人間のくずだ。


閃熱白蝶弾ビアンファルハ


 十七つの白い蝶を山賊たちの眼前に展開。

 それをノータイムで閃熱フラル化させ、彼らの顔面を撃つ。

 私を斬りつけていたやつ、周りでニヤニヤしてたやつ、全員まとめて。


 彼らは声を上げることなく、頭部を失って壊れた人形のように倒れた。




   ※


「ねえ」


 私は生き残っているふたりの山賊の片方、両腕を火傷して地面に蹲っていたやつに話しかける。


「ひ、ひいっ!?」

「あなたも子どもたちをころしたの?」

「たすけっ、助けてくれ! なんでもするから!」


 半分炭化した腕を振りながら、彼は必死に命乞いをする。


「答えて」

「殺さないで! オレはまだ死にたくねえ!」

「もう一回言うよ? 質問に答えて」

「助けてくれよ、お願いだから――」

閃熱白蝶弾ビアンファルハ

「ぐぺっ」


 話の通じない人って嫌だよね。

 私は喉に風穴を開けて絶命した山賊を放って残った最後の山賊を見た。

 ボウガンで私を狙っていた、加速弾で壁に叩きつけられて気絶しているやつだ。


「ねえ、スーちゃん」

「なんだ」

「あいつさ、目が覚めてこの状況を見たら、反省して改心すると思う?」

「それはないな」


 私の質問にスーちゃんは間を置かずハッキリと答えた。


「仲間が死んだ程度で心を入れ替えるようなやつなら最初から山賊になんか落ちないよ」

「だよね」


 それにこいつ、少なくとも私を射ころそうそしたしね。




   ※


 私は山賊のアジトの洞窟から出ると、爆炎黒蝶弾ネロファルハで洞窟の入口を崩しておいた。


 アジトの周りを調べると、山賊たちの言っていたとおり、白骨の山が見つかった。

 中には……明らかに子どもくらいの大きさの骨もある。


 可哀想に、ごめんね……

 私がもっと早く通りかかっていればね……


 私は聖職者さまじゃないけど、せめてこの子たちが安らかに眠れるよう、地面を掘って骨を埋め、石と木の枝で簡単なお墓を作って、うろ覚えで簡単な印を刻んでおいた。


「それじゃ、行こっか」


 お祈りを済ませ、立ち上がる。

 そんな私にスーちゃんが声をかけた。


「おい、大丈夫か?」

「え? 傷ならもう治ってるよ」


 怒りのあまり思わず防御を解除しちゃったけど、あの程度の傷なら即座に治せる。

 服はちょっと破けちゃったままだけど、体には傷一つ残っていないよ。


「そうじゃない。お前、人間を殺すのは初めてだろ。わかってると思うがあいつらはどうしようもないクズだ。気に病む必要は無いからな」


 ああ、そのこと。


「大丈夫、ぜんぜん気にしてないよ」

「……本当か?」

「うん、まったく。ちっとも後悔してないし」


 強がりとかじゃなくて、ほんとにどうでもいい。

 むしろ言われてから初めて気付いたくらいだ。


 エヴィルから人類を守るって決めたけど、それとこれとは別問題。

 悪いやつらを野放しにして善良な人がころされるなんて絶対に間違ってる。

 私が沈んでるよう見えたなら、子どもたちを助けられなかったことに対してだから。


「どこかで聞いた話だけど、魔動乱の頃なんかは山賊とかの悪い人間も凶暴化した獣(イーバレブ)扱いで、冒険者の敵だったんだよね?」

「……まあ、割り切ってるならいいんだ」


 変なスーちゃん。

 この子なりに心配してくれたのかな?


 でも、私だってそんなヤワじゃないよ。

 だってすでにビシャスワルト人を何万()もころしてるし。




   ※


 町に戻って、役場のおじさんに報告する。


「山賊をやっつけてきました」

「は?」


 どうやら私の言葉が半信半疑だったみたいなので、翌日に街の人を何人か連れてアジトの跡地までわざわざ行ってきた。


「貴女は町の恩人だ! ぜひお礼のパーティを開かせてください!」

「そういうのは別にやらなくて良いんで、手紙をちゃんと渡しておいてくださいね。あと、できれば亡くなった子たちのお墓をちゃんとしたのに代えておいてくれると嬉しいです」


 また、一日無駄にしちゃったし。

 そろそろマジメにセアンス共和国へ向かわないと。


「なら、せめてコレをお持ちください」


 役場のおじさんは一枚の古い羊皮紙を差し出してきた。

 どうやら、どこかの地図みたいだけど……


「なんですか、これ?」

「この町に古くから伝わる古地図です。どうやら古代神器のある遺跡の位置を指し示したものらしいのですが、ご覧の通り入口は断崖絶壁の途中にあり、誰も足を踏み入れたことがありません」


 つまり宝の地図かあ。

 ちょっと興味あるけど、今はいらないかな。


「せっかくですけど、そういうのは私――」

「いや、もらっておけ。っていうか行ってみようぜ」


 と思ったら、なぜかスーちゃんが乗り気になった。


「こういうの好きなの?」

「違う。いいか、古代神器や神代の遺跡ってのは、この世界が造られたときに()()()()()()()が意図的に配置したモノなんだ」

「知ってるよ。神話映像で見たからね」


 前の冒険の途中では炎を巻き起こす剣とかも見たことがある。

 確かに、あればあったで便利そうだけど。


「でも、今の私には必要ないでしょ? 絶対に役に立つものが手に入るとも限らないし」

「最後まで聞けって。古代神器の多くは、ミドワルトの技術じゃ絶対に複製できない方法で製作されてて、その製作過程で莫大なSHINE(エネルギー)を込められているんだ。つまり……」


 あ。


「古代神器を使えば、輝力を補給できるかもしれない?」

「その通り」


 と、いうわけで……

 次の目的は急遽、古代遺跡の探索になりました。

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