表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
閃炎輝術師ルーチェ - Flame Shiner Luce -  作者: すこみ
第8章 異界突入 - battle of another world -
499/800

499 会議室へ

 どのくらい眠ってたんだろう。

 気がつけば窓の向こうは真っ暗だ。

 カーテンを開けて夜空を見上げれば星が瞬いている。


 先生に運ばれて闘技場を出た後。

 侍女さんたちが駆けつけ、私を移動式ベッドに寝かせてくれた。

 車輪の着いたベッドで運ばれる時の振動が心地よくて、いつの間にか眠っちゃったんだ。


 この部屋に着いた時に一度目が覚めて、自力で備え付けのベッドに移動した。

 けど、疲れていたのか、すぐにまた意識が途絶えてしまった。

 それからずっと寝てたみたい。


 ベッドから起きる。

 なんかひらひらのネグリジェを着てた。

 寝てる間に誰かが着替えさせてくれたのかな?


 私の術師服は畳んで机の上に置いてあった。

 洗濯してくれたみたい、ふかふかの良い匂いがする。

 そう言えば気にしてなかったけど、たぶん血まみれだったよね。


 屈伸運動。

 うん、体力は戻ってるっぽい。

 少なくとも歩くくらいは何も問題なし。


 とりあえず術師服に着替えて部屋を出る。

 だだっ広い廊下には誰もいなかった。


 どうしよう。

 たしか、会議室に来いとか言ってた様な気がする。

 でもお城の中とかそんなに詳しくないし、どこにあるんだろ?


 とにかく人を探して手当たり次第に聞いてみよう。

 迷ってるって言えば勝手に歩き回っても怒られないよね。


 適当にうろうろしていると、見回り中の兵士さんと出会った。


「あの、なんとか会議室ってどこにありますか」

「リュミエール様ですね。案内させて戴きます」


 とっても話が早くて助かりました。

 中央古代語の偽名はどうも慣れないけど。


「その会議室では何をやってるんですか?」

「中央塔の大会議室では現在、各国の要人が集まって反攻作戦についての話し合いをしております。大賢者様はもちろんのこと、ご一緒に異界へ向かうメンバーの方々も揃っているでしょう」


 私も最初から出席すべきだったんだけど、その辺は先生が上手くごまかしてくれたみたい。


「かなり寝ちゃってたけど、会議が終わるまでに間に合うかな……」

「心配せずとも、そう簡単には終わりませんよ。なにせ各国の利害が衝突する場なのですから」


 私の独り言を聞いた兵士さんが苦笑いしながら説明してくれる。


 人類の存亡をかけた大規模作戦。

 とは言え、大国の人が第一に考えることは同じ。

 まず何を置いても、自分たちの国の利益なんだって。


 五英雄が現代の伝説になった例を出すまでもなく、この作戦に参加したメンバーは、人類を救った新たな救世主になる。


 争いが終わった後は、どの国も周りと比べて少しでも優位に立つことを望んでいる。

 だから会議が紛糾するのは予想通りらしい。


「世界の危機にはみんなで力を合わせて頑張るべきだと思うんですけど」

「国家とはそういうものなのですよ」


 実際に戦う私たちは、エヴィルに負けないよう全力を尽くすだけなんだけどね。

 なんか嫌だなあ、上の方の偉い人たちにそういう思惑があるのって。


「この角を曲がったところが大会議室です」


 兵士さんについて廊下の角を曲がる。

 そこにはとても大きな両開きの赤い戸があった。

 その戸に寄り掛かって退屈そうに座っている人がいる。

 ヴォルさんだ。


「なにやってるんですか?」

「あ。ルーちゃん、お帰り」


 星帝十三輝士シュテルンリッターの一番星、ヴォルモーントさん。

 生まれつき並の輝攻戦士を遙かに超える力を持つ、最強の輝攻戦士。

 戦場では燃えるような輝力を纏い、真っ赤な髪を振り乱して、獅子奮迅の大活躍をする。


 その戦闘力はグレイロード先生にも匹敵するって言われるほど。

 当然、反攻作戦のメンバーには真っ先に選ばれている。

 なので、会議にも出席しているはずなんだけど……


「オッサン共がギャーギャー喚いてさ、ちっとも話がまとまりゃしないのよ。アタシもいい加減にキレそうになっちゃって。とりあえず無意味に引っかき回すハゲをぶん殴ろうとしたら、しばらく出番はないから外で頭を冷やしてこいって、グレイロードに追い出された」


 この人の性格を考えたら、何時間も話し合いに耐えられるわけがないよね。

 それにしても私と二歳しか違わないのに先生を呼び捨てとか。

 さすがはヴォルさん、怖いもの知らず。


「参加するつもりならやめた方がいいわよ。それよりアタシと一緒にあっちの部屋で遊びましょうよ」

「え、遠慮しておきます」


 そりゃ、そんなつまらなそうな会議なんか出たくないけど……

 ヴォルさんと二人っきりになるとか、超こわい。

 だってこの人いろんな意味でアブナイし。

 前に不意打ちでキスされたことは忘れてないのよ。


「申し訳ありませんが、リュミエール様を会議の場にお連れするようにとの命令を受けております。どうかご容赦を願えないでしょうか」


 兵士さんが恐る恐るながらヴォルさんに声をかける。

 ナイスフォロー!


「あん?」

「ひっ!」


 と思ったら、ヴォルさんに睨みつけられて、たちまち居竦んでしまった。

 まあ、この人が相手じゃ仕方ないよね。

 私もたぶんビビる。


「ごめんなさい。先生から言われてるんで、とりあえず参加します」

「そ。飽きたらいつでも来ていいからね。そこのアンタ。お腹減ったから何か食べるもの持ってきて」

「え、はっ、た、只今!」


 命令を受けた兵士さんは慌ててどこかへ走って行く。

 ヴォルさんはその場で絨毯の上に寝転がった。

 相変わらずフリーダムな人だなあ。


 廊下の真ん中でゴロゴロしているヴォルさんを横目に重々しい扉を開け、私は大会議室の中へと入って行った。




   ※


「だから、それでは納得できぬと何度も申している!」

「ひっ」


 会議室に入るなり怒声が飛び込んできた。

 思わずその場で身を竦めてしまう。


「あらあらまあまあ」


 そんな私に気づいたのは、高貴そうなドレスを来た貴婦人さま。

 彼女は口元を手で隠して微笑みながら私に近づいてきた。


「最後の英雄様がおいでになりましたわよ。どうぞどうぞ、こちらへお掛けなさいな」


 貴婦人さまに手を引かれ、空いている席に腰掛ける。

 会議室には長いテーブルがあって、それを囲むように二十人ほどの人が座っている。


 ほとんどが立派な服を着た、一見して身分の高いとわかる人ばっかり。

 その全員の視線が私に集中している。

 針のむしろだよう。


 あ、向こうにジュストくんがいる。

 その二つ隣の席にはベラお姉ちゃんもいた。

 あの辺りがたぶんファーゼブル王国の席なんだろうな。

 私もあっちに行きたい。


「ほう、あなたがリュミエール様ですか?」


 誰かがその名前を呼んだ。

 いまの私はセアンス共和国の代表ってことになっている。

 なんとか輝術学校のエリート輝術師リュミエールさんを演じなきゃいけない。


 でも実際、私はそんな立派な輝術学校なんて通ってないから……

 とうぜん誰かフォローしてくれるんでしょうね!?


「気負わないでも大丈夫ですわ」


 隣の貴婦人さまがそっと耳打ちしてくれる。


「大賢者様より話は伺っております。ルーチェ様……でしたわよね? 事情を知らない者の追求はわたくしが責任を持って対処いたします。貴女は安心して座っていて下さいな」

「は、はい。ありがとうございます」


 この人がセアンス共和国の人なんだ。

 よかった、すごく良い人っぽい。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ