39 プロローグ 旅立ち
「わわっ、わわわっ」
小刻みに震える操縦桿を抑えるのはかなりの力が必要だった。
体重をかけて体全体で押さえつける。
車体が真っ直ぐになるにつれ震えはなくなっていく。
安定したのを見計らって姿勢を正す。
計器に目をやる余裕ができた。
時計のような二つの表示板がある。
えっと、左側が今の速度で、右側が液体輝力の放出量かな。
左側の針は表示板の五分の一くらいで頭打ちになる。
右側の針は上がりきって今にも振り切りそうだ。
ギアの比率を変えて効率よく動力が伝わるようにしなきゃならないんだっけ。
左手のレバーを引くと途端にやかましかった音が小さくなる。
左足でギアを下から跳ね上げてゆっくりと左手のレバーを戻す。
すると右の針が上昇を開始し、輝動二輪は加速を再会した。
同じ調子でもう一段階歯車のギアを上げる。安定した速度と音量が保たれる
機体が門を抜けた。
途端にこれまで見たことないほど視界が開ける。
緑色に波打つ朝日に淡く照らされた一面の野原。
空には雲ひとつない。
いつの間にか頭上のぶ厚い空の蓋はどこかに流れてしまっていた。
いつも外塀越しに見ていたエスト山脈が麓までしっかりと見える。
初めて見る外の世界はとても雄大で自然と胸が高鳴る。
とうとう私はフィリア市の外に出たんだ。
住み慣れた街を飛び出して大好きな男の人のところへ。
まるで恋愛小説か冒険物語みたい。
胸が高鳴る。
気分が高揚する。
ここはもう街の外。
目の前に広がるのは広大な世界。
さあ行こう、愛するあの人を助ける旅へ。
なんてね。
「よおしがんばるぞー!」
ますは一路、街道の先へ。
大好きな彼に会うために。




