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閃炎輝術師ルーチェ - Flame Shiner Luce -  作者: すこみ
第6章 最強の輝攻戦士 - full moon of the crimson -
311/800

311 おくすり

「おいおい、すげーじゃん」

「あいつ……これまで実力を隠してたのか」

「あの男も相当なものだな。これは簡単には決着がつかないだろう」


 試合を見ている観客みんなが驚いていた。

 ううん、正直言って私も驚いてる。


 カーディの戦い方は三回戦までとは明らかに違ってた。

 激しい動きと攻めでジュストくんを翻弄する。

 もちろん輝攻戦士化なんてしていない。


 剣術の技量は互角。

 どっちかって言うと、ややジュストくんの方が上だと思う。

 けれど、いつも決まって攻撃が当たりそうになると、カーディは音速亡霊ソニックゴーストでかわしてしまう。


 不自然じゃないよう、移動距離は一歩だけ後ろに下がる程度。

 それでも、確実に決まったはずの攻撃が避けられる。

 あれじゃ攻撃を当てるのは絶対に無理だ。


 このままじゃジュストくんに勝ち目はない。

 そのうち疲れが溜まって、防戦一方になってしまう。


 ところが。


「……少しずつ、ジュストが押し始めてきましたね」


 フレスさんが呟いた。

 言われてみればその通り。

 少しずつだけど、攻撃が当たりそうになってきている。


 あ、今のは惜しかった!

 もうちょっと深く斬り込んでれば――


 すごい、彼はこの短時間で……


「合わせてるんだ。カーディが音速亡霊ソニックゴーストを使うタイミングに」


 ステージ周りでズルを防ぐため待機してる輝術師すら騙すカーディの技。

 私が流読みを使って、ようやくうっすらと見えるくらいの一瞬。

 それを、ジュストくんは生身の状態でとらえ始めている。

 普通に戦うだけじゃ絶対に得られない感覚だ。

 そして――


「あっ!」


 観客がざわめく。

 私も思わず腰を浮かした。


 ジュストくんの模造剣が、カーディの右肩にかすった。

 直撃とまではいかなかったけれど、明らかに当たったとわかる。


「バカな、なぜ追い討ちをかけない!」

「今のは一気に畳み掛けるチャンスだった。この機会を逃したのは大きいぞ」


 評論トリオは相変わらず好き勝手なことを言ってる。

 けれど、ジュストくんはこれ以上ないくらいに昂ぶってるのが私にはわかる。


 攻撃が当たった。

 それはつまり、並の輝術師ですらわからないカーディの一瞬の輝力制御を捉えたってことだ。

 その感覚を忘れないうちに、もう一度試したくてたまらない。

 そんな顔をしてる。


 ジュストくんの攻撃。

 カーディは今度も紙一重で避け――

 られなかった。


 今度は完璧に捉えた。

 完全には攻撃を避けきれない。

 さっきより少し大きく後ろに下がった。

 にも関わらず、カーディは武器で防御せざるを得なかった。


 二人の剣が離れる。

 一呼吸置いて、ジュストくんが斬りかかる。

 カーディはそれをまた避けて――


「その試合、待てっ!」


 突然、野太い男の人の声が響いた。

 周りの輝術師たちがステージに上がってくる。


「おまえっ!」


 輝術師の一人がカーディを取り押さえようとする。

 ところが、彼女はふわりと宙に浮かんでそれをすり抜けた。


「輝術の使用を感知した! ナル選手は不正行為につき失格とする!」


 わざとなのか、失敗したのか。

 音速亡霊ソニックゴーストを使った時の輝力が輝術師に感知されてしまったみたい。


「輝術の使用だって?」

「さっぱりわからなかったぞ。いったい、どこで……」


 突然の反則負けに、会場内すべてが騒然とする。

 カーディは空高く舞い上がると、そのままどこかへ飛んでいってしまった。


「ナル選手の反則負けにより、勝者ジュスティツァ選手!」


 司会の声が会場に響く。

 ジュストくんは満足そうな顔をしていた。

 もちろん、それは勝負に勝ったからってわけじゃない。




   ※


「最初は盛り上がったけど、終わってみたらなんだかパッとしない大会だったな」

「準決勝二試合目は輝術師による反則、決勝戦は途中で棄権だもんな」


 不満そうな感想を漏らす評論家トリオ。

 彼らのわきをすり抜け、私とフレスさんは会場の外へ向かった。


 カーディとの修行でジュストくんは何かを掴んだらしい。

 決勝戦には興味ないとばかりに、適当なところで切り上げてしまった。

 二年連続優勝者となったアロール選手は、祝賀会の中心でお酒の一気飲みなんかをしている。


 ジュストくんは下手に優勝して注目を集めるのが嫌だったみたい。

 だけど、本音は早くいつもの訓練に移りたいだけだと思う。

 試合が終わるなり私のところにやってきて輝力を貸してくれって言ってきた。


 輝粒子を纏って輝攻戦士になった彼は、そのまま町の外まで文字通り飛んで行ってしまった。


 本当に、まったく。

 ダイといい、ジュストくんといい……

 男の子たちはいっつも、強くなるのに夢中だね。




   ※


「う」


 宿へと戻る途中のこと。

 突然、左腕に違和感が走った。

 それは次第に痛みへと変わっていく。

 チクリと刺すような刺激から、ズキズキと我慢できないほどに痛くなる。


 や、やばい……

 早くなんとかしないと……

 って、ちょうどいいところに!


「ラインさん!」


 私はちょうど宿に入っていくところだったラインさんを見つけて呼び止めた。

 試合が終わったので、カーディから体の主導権を返してもらったらしい。


「ルーチェさん、どうしたんですか?」

「クスリが切れそうなの」


 ちょうだい、と首をかしげながら両手を差し出して催促する。

 ラインさんは嫌そうな顔をした。


「もうダメですよぉ。あんまり依存しすぎると、本当に感覚がマヒしちゃいますよ」

「だって痛いんだもん。くれなきゃ泣くよ」

「けれど、どこかで我慢しないと一生このままで」

「――いいからはやく」


 みょーん。


「わ、わかりました!」


 ラインさんは慌てて懐から錠剤を二粒取り出す。

 私はそれを受け取って口の中に放り込んだ。

 口内にアクを少量出して一気に飲み込む。


 ごっくん。


 クスリを飲むと、痛みはみるみる引いていく。

 同時にふわーっとわーっとした、ここち良いいい気分ににになななってなる。


 (^p^)


「ルーチェさん!?」

「はい、なんですか?」

「大丈夫ですか!? いま、ものすごい顔してましたよ!?」


 失礼なこと言う人だね。


「ぜんぜん大丈夫ですよ。もうちっとも痛くないです」

「そ、それならいいんですけど……」


 私の身体を気にかけてくれてるのはわかるけど、心配しすぎだよ。


 この間の事件で私はすごい大怪我をしてしまった。

 それはもう半狂乱になるくらい、ものすごく痛かった。


 治療の際、ラインさんは痛み止めのため私に特殊なクスリを使ってくれた。

 おかげさまで怪我は痕も残らず完治したんだけど、たまにこうやって、思い出したように痛みがよみがえってくる。


 そのたび、私はラインさんからこの痛み止めのクスリをもらって服用してる。

 まあ、このクスリって効果が強すぎて、あらゆる痛みを感じなくなっちゃうんだけど。


「非合法のクスリだから、依存しすぎると本当に感覚がマヒしたままになっちゃいますよ」

「だけど、放っておくとめちゃくちゃ痛くなるんですもん」

「手持ちもあと少ししかないんです」

「それじゃ困ります。どっかで売ってないんですか?」

「何しろ非合法ですから……調合はできますが、どこかで材料をそろえないと」

「この町の道具屋さんは?」

「大抵の材料は揃いますけど、跳月草っていう材料だけは、輝工都市アジールの薬草専門店でしか売ってないんですよ」


 そうか。

 じゃあ、一刻も早く輝工都市アジールに行かないと。




   ※


「あのもし、そちらの方……」

「はい?」


 宿に入ろうとしたところで、後ろから声をかけられた。

 曲がった腰、手には杖、やや頭頂が寂しい感じのおじいさんだ。


「何かご用ですか?」

「おんしら、あの試合に出てた青年の仲間かえ?」


 試合に出てた青年って、ジュストくんのことかな?


「はい、私たちの仲間ですよ」

「長年剣術大会を見ておるが、あれほどの使い手は生涯数えるほどしか見たことがない。優勝したアロールは勝たせてもらったようなものじゃな」


 何が言いたいのかよくわからないけど、ジュストくんのことを褒めてくれてるみたい。


「ありがとうございます。あとで本人にも伝えておきますよ」

「ところで、あの青年は輝攻戦士じゃろ。人があんな風に飛ぶところなんぞ始めて見たわい」


 うわ。

 どうやら、ジュストくんに輝力を渡すところを見られていたらしい。


「そ、そうですけど……」


 見られたなら否定しても仕方ない。

 私は頷いた。


「ふむ……おんしらは冒険者かえ?」

「いちおう」

「ってことは、少なからず腕に自信はあるじゃろ。その腕を見込んで頼みがある」


 おじいさんはニヤニヤしながらそんなことを言う。

 なんかまた、面倒くさいことに巻き込まれそうな予感……


「立ち話もなんじゃから、わしの家に来んか。茶と菓子くらいは出すぞ」

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