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閃炎輝術師ルーチェ - Flame Shiner Luce -  作者: すこみ
第4章 鋼の国の吸血鬼 - star knights vs vampire girl -
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177 黒衣の妖将

 私が目を覚ましたのは翌日の朝だった。

 誰かが宿まで運んでくれたのか、ベッドの上で寝ていた。


「大丈夫ですか?」

「うん、なんとか」


 フレスさんが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。

 彼女は昨日の出来事を朝になってから知ったらしい。


 フレスさんに肩を借りて、ザトゥルさんたちが泊まっている宿を訪れた。

 ビッツさんがそっちに運ばれたって聞いたからだ。

 みんながいる部屋に入るなり、ザトゥルさんの苦々しげな声が聞こえてきた。


「完全に意識を消失している。ただ気絶しているだけではないようだ」


 ベッドにはビッツさんが横たわっていた。

 ジュストくんとザトゥルさんが何かを話している。


「元に戻す方法はないんですか?」

「何とも言えんな。しっかりした設備のある場所で調べなくてはわからない」

「ジュストくん、ビッツさんはどうだったの?」

「見ての通りだ、何の反応もない」

「試しに水霊治癒(アク・ヒーリング)もかけてみましたけど、効果はありませんでした」


 フレスさんが悲しそうな顔で言った。

 やっぱり、あれからビッツさんはずっと意識を失ったままのようだ。

 と言っても心臓は動いているし、呼吸もしている。

 ただ、心ここにあらずという感じ。


「昨日のやつがザトゥルさんが聞いていたケイオスなんですか?」

「間違いない。かなりのつわものだった、油断していたら俺でも危なかったかもしれん」


 この国で五指に入るくらい強い輝士でも苦戦するようなケイオス。

 私たち、とんでもない敵と戦っていたんだ……


「しかし残存ケイオスとはな。堂々と人里に姿を現すくらいだから、一筋縄でいく相手ではないだろう」


 外見はどっから見ても普通の女の子。

 でも、中身はとても恐ろしいケイオス。


「そういえばあいつ、自分のことカーディナルって名乗ってました」


 何気なく私は思い出したことを言ってみた。

 ザトゥルさんに思いっきり睨みつけられる。


「なんだと?」


 あ、あれ?

 なにか余計なこと言っちゃった?


「ご、ごめんなさい。名前なんてどうでもいいですよね」

「カーディナルと言ったか。やつがそう名乗ったのか?」


 え、なに?

 名前がどうかしたの?


「あのケイオス、有名なんですか?」


 私が訪ねると、ザトゥルさんは怖い顔のまま低い声で答えた。


「カーディナルとは魔動乱期に七つの国の輝士団を壊滅させた最強のケイオスの名だ。別名を『黒衣の妖将』。やつに倒された輝攻戦士の数は一〇〇を超える」


 輝士団を壊滅!?

 輝攻戦士を一〇〇人以上倒した!?


「魔動乱終盤に五英雄によって打倒されたと聞いていたが、まさか生きていたとはな……」

「五英雄って、あの聖少女様とか大賢者様とかの?」

「ああ」


 そ、そんな伝説クラスの相手と戦ってたの、私たち!?


「けど、そこまで恐ろしい相手とは思えませんでした。確かに僕らはやられてしまいしたが、全く歯が立たなかったわけでもなかった。結局、すぐに撤退してしまいましたし」

「恐らく本調子ではないのだろう」


 そういえば、最後の方は急に調子悪そうにしてたな。

 途中で撤退したのは、力を使い果たしたから?


「どうして今になって現れたんでしょうか。やはり残存エヴィルの活発化と関係が?」

「わからんが、やつが全盛期の力を取り戻せば敵う人間はほとんどいない。それこそ五英雄の大賢者か、星輝士一番星のヴォルモーント殿くらいでなくては」


 大賢者グレイロード様。

 私たちの先生のとんでもない強さは知ってるから、それに匹敵する人が存在するってのが驚き。

 星輝士の一番星ってことは、シュタールで一番強い人ってことだよね。

 いったいどんな人なんだろう。

 それこそ悪魔のように恐ろしい人だったりして……

 ぶるぶる。想像したら怖くなってきた。


「人間から輝力を奪うのは、往年の力を取り戻すためか……」


 ジュストくんが呟く。

 ザトゥルさんはベッドに眠るビッツさんをちらりと見た。


「お前たちは帝都アイゼンへ向かえ。そこでなら彼を治す方法も見つかるかもしれん」


 帝都はこの国の首都で、当然、輝工都市アジール

 なるほど、確かにそこならビッツさんを治す方法も見つかるかも知れない。


「ザトゥルさんはどうするんですか?」

「俺はここに残り、黒衣の妖将を退治する」

「僕たちも手伝いますよ。王子を治すのも大切ですが、あのカーディナルを放っておけば犠牲者がもっと増えるかも知れません。協力して先に退治してしまった方が……」

「ダメだ。足手まといになる」


 ザトゥルさんはジュストくんの提案をばっさり切り捨てた。


「並の残存エヴィルならともかく、経験の少ないお前たちでは、あの黒衣の妖将と戦うには荷が重い。ましてやジュスト、お前は正式な輝攻戦士ですらないではないか」

「う……」


 輝鋼石の洗礼を受けた人と違って、ジュストくんは私がいないと輝攻戦士になれない。

 そういう意味じゃ、彼は正式な輝攻戦士とは呼べないのかも知れない。


「心配しなくても、黒衣の妖将は俺が倒す。お前たちは安心して彼の治療に専念しろ」


 それだけ言うと、ザトゥルさんは部屋を出て行ってしまった。




   ※


「……ちょっと、感じ悪いですね」


 私もフレスさんの言葉には賛成。

 けど、カーディナルに歯が立たなかったのは事実だし。

 ジュストくんはああ言ったけど、私はビッツさんを治す方が先だと思う。


「でも、ジュストもジュストだよ。私たちが優先するのは王子様を治すことでしょう?」

「それは、そうだけど……」


 フレスさんに責められ、ジュストくんは悔しそうな顔で地面を睨んだ。

 正式な輝攻戦士じゃないって言われたのがショックだったのかな。


「どうでもいいけど、話が終わったならさっさと行こうぜ」


 これまで黙って壁際にもたれかかっていたダイが言う。


「行くって、アイゼンへ?」

「決まってんだろ」


 当たり前のことを聞くな、とでも言いたげな表情だ。


「んで、さっさとそいつを治したら、また戻って来るぞ」

「戻って……って、何をしによ」

「決まってんだろ。オマエらが負けたっていうケイオスをぶっ倒しにだよ」

「でも、ザトゥルさんは足手まといになるから来るなって……」

「知るかよ。俺は最強のケイオスってやつと戦ってみたいんだ。昨日は見ることもできなかったしな」


 結局それか!

 けど、それが一番いいかもしれない。

 経験が少ないからこそ、いろんな敵と戦って強くならなくちゃいけないし。

 逃げ回って新代エインシャントに着いても、何も成長してなかったら意味が無いしね。


「ジュストはどうなんだ? あんな風に言われて、素直に引き下がるつもりなのか?」


 ダイは珍しくジュストくんをキツイ目で睨む。

 その視線を受け、ジュストくんはフッと笑った。


「まさか。ちょっと考え事をしてただけだよ。もちろん僕もリベンジには賛成だ」

「それならよし。さっさと行って帰ってくるぞ」


 ダイの言葉に、私たち全員が頷いた。

 とりあえずはビッツさんを治すため、目指すは帝都アイゼン。

 世界最大の輝工都市(アジール)へ。

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