168 親友への手紙2
ナータへ、お元気ですか?
今日はこの前の侯爵さまの館の一件の続きを話すね。
ゴーレムを倒した後、私たちは駆けつける輝士団の足音を聞いて急いで館から逃げ出しました。
気絶したダイやレギリオさんを連れて逃げるのは大変だったけど、ビッツさんの誘導やフレスさんの目くらましもあって上手く脱出することに成功。
たくさんの古代神器を放っておくのはもったいないと思ったけれど、ドロボウをして捕まるのも嫌だったので、結局はそのままにしておきました。
たぶん王国に没収されただろうとビッツさんは言っています。
悪いことに使われるよりはその方がいいよね?
事件の首謀者の侯爵さまはいつの間にか姿を消してしまったみたい。
護衛の二人は厳しい事情聴取を受けるみたいで、これからかなり大変そう。
フォーマーの人たちも一緒に捕まっちゃったけど操られてたって証拠もあるし、すぐに解放されると思います。
あ、それからテオロちゃんだけど、なぜか事件解決後は大人しくなっちゃった。
レギリオさんと一緒に町に戻ることにしたみたいです。
どんな心境の変化があったかは知らないけど、やっぱり子どもが一人で旅をするなんて危ないよね。
そんなわけで、私たちは今日も旅を続けています。
※
「おいルー子、そろそろメシにするってさ」
ナータへの手紙を書き終えた私は馬車の外から呼ぶダイの声に応えた。
「わかった。すぐに行くよ」
「食ったら今夜は夜通し駆けるらしいぜ。あと一山越えればシュタール帝国に入るんだとさ」
「えーっ、じゃあしっかり体力つけとかないと」
ダイと一緒に森の中の広場へ移動すると、ジュストくんとビッツさんが大きな猪を捌いていた。
横ではフレスさんが一人でかまどの準備をしていたので私はそれを手伝うことにする。
「フレスさん、おつかれさま」
「はい、おつかれさまです」
「ジュストくんたちも食料調達ありがとう」
早速、全員で調理の準備に取り掛かる。
こんな生活にもすっかり慣れて、フィリア市で暮らしていたことはずっと昔のことのよう。
でも私は忘れてない。
出すあてのない手紙を書いては故郷のことを思い出す。
ナータ、約束覚えてるからね。
まだ私たちの旅はしばらく続くけど、絶対に無事に帰るよ。
世界を救う旅なんて大げさかもしれないけど、私は今の仲間たちのことも大好きだから。
「みんな、今日も元気に頑張ろう!」
私が張り切って声をかける。
仲間たちはそれぞれの言葉を返してくれる。
「うん、頑張ろう」
「そうだな」
「オマエに言われるまでもねー」
「ルーチェさんはいつも元気いっぱいですね」
もう少し、帰るのは先になるかもしれません。




