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099:勇者の名は?

「まあ、これだけ買えば十分かな」


 満足しながらランナードラゴンの背中に装飾品の入った木箱を載せた俺を見て、仲間たちが苦笑している。


「輸出品を買いまくるというから何かと思ったら、まさか装飾品とは……」


「今ごろ本土ではプライアのコトが話題になってるだろうから、それが冷めない内に高額取引が可能な商品から売るってのはビジネスの鉄則なんだよ。しかも俺たちは国交回復の一便目の輸入商だから競争もゼロ。このタイミングに食料品とか日用雑貨を持ち帰るのはナンセンスだ」


 俺の怒濤の説明に、三人は「へぇ~」と言いながら感心している。


「んふふふー、こんなふうにクレアちゃんを助けるためにクリスくんはいっぱい頑張ったんだね~」


 エマがニヤニヤしながら俺とクレアをはやし立てる。


「そういうのはロザリィの役割だから、委員長はセフィルとキャッキャウフフしててくれよ……」


「キャッキャ!? 意味は分からないけど何だか凄く恥ずかしい気がする響きだよっ!」


 まったく……。

 溜め息を吐きながらクレアの方を振り向くと、珍しく顔を真っ赤にして固まっていた。


「どうしたの?」


「改めて思い返すと、照れるから…。うん」


 不思議ちゃんだった少女も、今やコイバナで照れてしまう程度にお年頃になってしまったのだなぁ。

 ……おっと、おっさん臭いコメントをしてしまった。



◇◇



 そして最後に骨董品屋にやってきた。


「やはり異国の芸術品を持ち帰るのも輸入商のお仕事だよ…。うん」


「なんでさっきの私の口調を真似たの?」


 ちょっと語感が気に入ったからです。

 でもそれは答えずにクレアの髪をワシャワシャやってからお店に入った。


『へいらっしゃい! おおぅっ、ついに噂のスーパーボーイがウチの店にもっ!』


「噂のって……」


 呆気に取られる俺を見て、デュラハンな店主さんが脇に頭を抱えたままガハハと豪快に笑った。


『人間の子供4人がひたすらクソ高い品ばっか買い漁ってるって話題になってんぞ! 人間ってのは旅行先でそんなに買い物しまくる生き物なのかい?』


 店主さんの言葉に、仲間3人が俺をジト目で睨む。

 な、なんだよぅ……!


「前居た世界で俺が子供の頃は、海外で芸術品や会社を買い漁るのが流行ってたんだよ!!」


 まあ、幼少の頃の話だし、リアルでは一度もバブルを体験したこと無いから、正直よく分からないんだけどね。


「まあいいや。おっちゃん、この店のオススメを見せてくれっ!」



◇◇



 そして店主さんが俺たちの前に持ってきたのは「巨大な布が被さった超デカい板?」と「細長い木箱」の2点。


「なんすかコレ?」


 つい素で喋ってしまったが、俺の言葉を聞いた店主さんがニヤリと笑った。


『コイツは超レア中のレア品だぜぇ! まずはコレだっ!』


 そう言って木箱を開けると、その中に入っていたのは薄汚れた棒……というか、鞘に入った剣か?


『数十年前に、魔王様と相打ちになった勇者が使っていたと言われる伝説の剣だ!』


「うそくせええええええっ!!!」


 店主さんの言葉に、我慢出来ずに即座に本音が吹き出してしまった。


『ううううう、嘘じゃねえよっ! 俺の爺さんが魔王様の直属の配下で、女神様に諭された現場に居たらしいし、そこで意気投合した勇者の仲間達から賜ったらしいしっ!』


「ますます話が嘘くせぇし、そもそもそんな大切なモンを売りに出していいのかよっ!!」


 俺のツッコミに『うぐっ』とか言いながら店主さんはうなだれた。


『そりゃ今まで非売品だったけどさ、せっかく初めて人間の客が来たんだから、出したくなるってもんよ……』


 うーむ……そう言われると少し困るな。

 でも、だからと言ってこんなボロ刀を勇者の剣だと言って高値で買うほど俺はお人好しではない。


「……ロザリィ、鑑定できる魔法とかある?」


 俺の質問にロザリィは腕を組んで少し難しい顔をした後に、手をポンと打った。


真贋しんがん鑑定は出来ないけど、持ち主を調べる魔法ならあるわね。それが勇者の名前と一致すれば本物でしょ』


「おお、ナイスアイデア! ……ところで魔王と相打ちになった勇者とやらは何て名前なんだ?」


 振り向いて仲間たちに問いかけたものの、俺の疑問に3人とも首を傾げた。


『なんだお前ら、てめぇんとこの勇者様なのに名前も知らねーのか……まあ、おっちゃんが歴史のお勉強をしてやるよ。まず魔王様の名前はラムダ様と言ってな、凄く強力な魔法を自在に使いこなせる絶大な力を持つ、それはとても美しい女性だったそうだ!』


 へぇ、魔王って女だったのか。


『んで、そんな美しの魔王様に敵対した勇者は4人居てな。そいつらは……えーっと……何だっけな』


「「「「おおおおおぃっ!?」」」」


 俺達が一斉に声をハモらせて突っ込んだ。


『っせーな! おっちゃんがガキの頃に学校で習ったきりなんだよ! 思い出すから待ってろっ!!』


 そして腕を組んだままウーンウーン……ちゃーはんおいしい、そとにふぉすた、とか不思議なコトをぶつぶつ呟いている。

 まさか語呂合わせ……???


『思い出せたぜっ! 4人の勇者の名前はそれぞれ、フォスタ、チア、ティーダ、そして魔王様と相打ちになった剣の持ち主の"カトリ"だ!』


 ……ん?


「最後のヤツ、なんて名前だって……?」


『お? カトリだよカトリ。コイツは他の3人をまとめるリーダー役だったらしく、魔法も使えないのに魔王様と相打ちになったらしいし、相当な手練てだれだったんだろうなぁ~』


 その言葉に俺たちは4人とも顔を見合わせた。

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