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097:ビジネスマンの魂、百まで

 翌朝、宿を出発した俺たちはプライア城へ向かった。


『ようこそプライア城へ。君達、何かご用かな?』


 狼型モンスターっぽい門番が丁寧な口調で話しかけてきたのを見て、セフィルが紋章を掲げながら応える。


「突然申し訳ない。俺はレヴィート国第二王子のセフィルという者だが……」


 そう言いながらセフィルの出した紋章を見て、門番さんはびっくり仰天してしまった。

 ……そりゃ、隣国の王子がいきなりアポ無しで飛び込んで来たのだから当然だろう。


「たたたた、確かにこれはレヴィート王家の紋章! すぐに御案内致しますっ!」


 バタバタと狼男さんが走って行ってしまった。


『ドッキリ成功ねっ!』


「いや、別にドッキリを狙ってたわけでは無いのだがなぁ……」





『娘を救ってくれて……本当にありがとう』


 俺たち前で、超○界村のラスボスっぽい鬼のような見た目のごっつい方が深々と頭を下げていた。


「国王様! そんな、頭をお上げくださいっ」


 セフィルがTPOを弁えながらプライア国王に声をかけたが、国王は敢えてそのまま首を左右に振った。


『今は、娘を救ってもらった父として感謝させてくれ……。本来、君達がここに来る義務は無かったのだから……』


「義務は無かった……?」


 俺の言葉に国王は深く溜め息を吐いた。


『随分と昔の話さ。かつて魔王が人間族が我々に逆らえないよう呪いをかけた上で、先祖達が人里で破壊の限りを尽くしたんだよ』


 ……まあ、プライア国に暮らすモンスターたちはもともと魔王の家来だったみたいだし、そりゃ人里を襲うくらいのコトは当然してきただろう。

 プライア国王の口ぶりからすると、国王自身は魔王の命令で何かをしたことは無いようだ。


『だが、魔王は勇者と女神によって倒され、死を覚悟した者達に女神がかけた言葉は……剣を収めて、静かに暮らしなさいという慈愛の言葉だったそうだ。だからこそ、我らは生かしてもらっているだけでも十分だというのに……』


 国王の言葉に、謁見の間がしんと静まり返った。

 それにしても、女神様が魔王戦に参加してたというのは初耳だ。

 そんな偉人(偉神?)が今やブティックのアルバイトをやってると知ったら、この国王様はどう思うだろうか……。


 ただ、ひとつ気になるコトがある。


「姫様の病状を、誰がどうやって人間に知らせたんですか?」


 そう、決まった時期にしか船が行き来してないうえ、モンスターの出国を禁じているプライア国において、どうやって情報を伝達しているのかが謎なのだ。


『いやはや、子供だと思って侮っていたよ。さすが良いところに気づいたね』


 そう言いながら国王がぶつぶつと呟いてから、目の前に手を広げて魔法を発動した。


『video-conference』

 

 すると、空中に『call..』というメッセージが表示された後、見覚えのあるイケメン男性の姿が表示された。


「なっ! 親父っ!!!」


 突然の出来事にセフィルがうっかり素で喋ってしまい、国王二人が苦笑した。


『この通り、君のところの息子君のおかげでウチの娘の命が救われたよ。本当に感謝する』


「なあに、こちらとしても特効薬ルナピースの有効性が人間以外に確認出来ただけでも助かる。協力感謝するよ」


 国王二人が昔馴染みのようにやたら親しげに話している姿を見て、ロザリィが腕を組んだままニヤリと笑った。


『この二人、たぶん子供の頃から遠隔会話でやり取りしてるわね。video-conferenceは妖精魔法sorrowful-visionをベースにしてるみたいだけど、プライア国王は誰からそんな魔法を教わったのかしら?』


 ロザリィの言葉に、国王二人の目が点になる。


『君の国の子供は凄いんだな……』


「いや、私も驚いているよ……」


 仰天する国王二人を見て、ロザリィは両手を腰に当てて、エッヘン! のポーズをしている。

 全くコイツは……。


 それはさておき、国王が二人揃ってることだし、せっかくなので俺の意見も伝えてみよう。


「それだけ国王同士が仲良いのに、国交が全くないのは何故です?」


 俺の疑問に、まずはセフィル父が口を開いた。


「私は全く問題無いと思っているのだが……」


 おや?

 となるとプライア王国側の都合か。


『……かの戦からまだ70年程度しか経っておらん。舌の根も乾かぬうちに、我々は平和を愛しますだのを言うのは気が引けてなぁ』


 プライア国王は腕を組んだままウーン……と唸っている。

 えーっと、これはもしかして……。


「あの……たぶん、その当時のコトを知る人間って、ほとんど亡くなってると思うんですけど……?」


『っ!?』


 プライア国王の寿命は、たぶん人間よりずっと長く、その基準で月日を捉えているのだろう。

 モンスターにも人間と同程度に短命な者も居るとしても、国王に対してそこまで国民ひとりひとりの平均寿命を全て把握しろというのは酷な話だ。

 例えるならば、グローバル企業の会長に対して、海外のド田舎に居る末端社員の家族構成を把握しろと言うようなものなわけで、そりゃ無理がある。


 久々に俺の中にビジネスのアイデアが浮かんだ。

 このチャンス、生かさない手は無いっ!


「ひとつ僕に良いアイデアがあります」

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