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096:ワンダーモンスターランド

 神都ポートリアを出発してから3日が経ち、俺たちは今……モンスターに囲まれています。

 まさか港に到着すると同時にこんな状況になるだなんて……。


 そして、モンスター集団の先頭に立つ、鎧を着た二足歩行のドラゴンっぽいヤツが、俺たちを見ながら大きな口を開いた。


「ようこそプライア国へっ! お客様を歓迎致しますっ!!」



「しかしまあ、今まで自分が生きてきた世界が狭かったんだなぁって、今更になって実感したよ……」


 中長期滞在用の「人間向けの宿」の部屋で俺が呟くと、他の三人も肯いた。


「海で渡った先にこんな国があるなんてちっとも知らなかったよー」


 おや?


「俺が疎いだけかと思ってたら、エマも知らなかったのか???」


 コクコクと肯くエマに代わり、セフィルが口を開いた。


「プライアとレヴィートは国交が無いし、そもそもウチの国民にはプライアの存在を伝えてないんだよ。それにプライア国のモンスターは島を出てしまうと他のモンスターと見分けが付かないから、国民の安全を守るために出国が禁じられているんだ。南の海を渡れば、野生のモンスターかバンバン襲ってくるような国もあるらしいけど、その国の奴らとプライア国民がバッタリ会おうものなら、いきなり戦闘になりかねないからな」


 なるほどなー……ってアレ?


「それ、他国の船が直接プライア国に偶然着いたらヤバくね?」


「これがまた都合良く島の周りの海流が激しくてな。特定の時期に、それもポートリア港からの往復ルート以外からはまともに島に近づくことも出来ないんだよ。魔王がわざとそれを狙ってプライア国を攻め落としたという説もあるくらいだ」


 うーん、さすが魔王城跡地だけあって、立地条件もしっかりラストダンジョンなんだなぁ。


 道理でやたら波が荒いと思ったよ……。


「だが、俺もモンスターを見るのは生まれて初めてでなっ! すげー楽しみだ!!」


 そう言いながらワクワクしているセフィルが相変わらずお子様で笑ってしまう。

 しかし、別の大陸ではモンスターが襲ってくるとなると、ますます俺の戦力不足が問題になりそうだし、今から筋トレでもしよっかなぁ。


「まあ、この島のモンスターが人畜無害と言うか、観光キャストだと分かっただけでも安心だよ。囲まれた時はさすがに怖かったけど」


 苦笑しながら言う俺に対して、クレアが首を左右に振った。


「大丈夫。あそこに居たモンスターを全部相手にしても、たぶん勝てる」


 さらっと恐ろしいコトを言ってくれた。

 というか、さっきのドラゴン相手に勝てるってマジですか……?


『アンタびびりすぎよ。魔王が暴れてた頃のモンスターなんてとっくに引退してるか天寿を全うしてるでしょうし、戦闘経験あるヤツなんて居ないでしょ。私はさすがにそんな素人相手じゃ負けないわよ』


 ロザリィの説明を聞いてようやく納得できた。

 まあ、さっきの港での歓迎挨拶を見た感じ、戦い慣れしているようには見えなかったもんなぁ……。


「さて、明日は朝から早速プライア城へ行くぞ。さっさとコレを渡さないとなー」


 そう言う俺の手には、かつて必死に追い求めた特効薬ルナピースの入った小瓶が握られていた。


………

……


「えっ、ノーブさんが倒れた!?」


 可憐庭で告げられた言葉に、俺たちは驚愕する。


「どうしてそんなことに……。一体、何があったんですか!?」


 カレンさんは悲しそうに俯くと、ぽつりと呟いた。


「二日酔いです……」


 なんてこったい。


「しかも、既成事実を作ろうとちょっと一服盛ったら、思いの外すごく効いちゃってねぇ」


「アンタって人はアァァッ!!」


 だが、船の出航は明日に迫っている。

 二日酔いでグロッキーなノーブさんを乗せて行こうものなら、間違いなく船上で大災害が起こる。

 というか二次災害で地獄になるだろう。


 そしてノーブさん曰く、彼がプライア国へ行く理由は、リソースリークに倒れた姫を救うためであり、しかもそれは国家機密レベルの話ときたもんで……。

 さすがに二日酔いから回復するまで順延……なんてバカな話は許されないだろう。


「それよりも、ノーブさんはどこですかっ!?」


 カレンさんは気まずそうに奥の部屋を指差した。

 俺は有無を言わさず部屋に飛び込むと、そこには酷い顔色のまま、試験管やらビーカーやらをコポコポやってるノーブさんの姿が!


 もう、突発イベントが多すぎて俺ついていけないよぅ!!!


「よ、よく来てくれたな……。たった今、出来たところさ……」


 そう言いながらノーブさんがヨロヨロと俺に近づいてきた。

 慌てて肩を支えてあげると、俺の左手に小瓶と手紙を渡してきた。


「これはっ……!?」


「前にお前さんのくれた月の石で作った、出来立てホヤホヤと特効薬ルナピースだ。……情けねえ話だが、見ての通り俺はこんな状況だ。頼む、コイツと親書を持って、俺の代わりにプライア城に届けてくれ……」


 そう言い残すと、その場にバタンと倒れてしまった。


「分かりましたノーブさんっ! 貴方の意志は俺が継ぎますっ」


『そのまま安らかに……』


「いや、殺すな殺すなっ!」


 ロザリィとセフィルの漫才を後目しりめに、俺は封書と小瓶を握りしめた。


……

………


 というわけで、ここに居るのはいつもの四人組だけだ。

 当然ながら国家機密を漏らすわけにはいかないので、表向きの宿泊目的は「貴族セフィルが家来を引き連れて卒業旅行」ということにしてある。


『コイツの家来というのが気にくわないけど、まあ身なりだけは一丁前だし仕方ないわね』


「俺は今更気にしないけど、プライア城内で絶対それ言うなよ……?」


 セフィルはロザリィをジト目で睨みながら溜め息を吐いた。

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