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087:魔王との闘い!

 魔王は周りを見渡した後、私を見ながらニヤリと笑った。


『多勢に無勢! 貴様はこの状況で我にどう立ち向かおうと言うのだ?』


 どう立ち向かうか……。


「どうでもいいさ……。ここで逃げたところで、何か起こるわけでもないしな」


 そう言いながら、鞄の中からドス黒い色の宝玉を取り出した。


『ほう、我に力を返して命乞いでもするつもりか? それも一興だな!』


「寝言は寝て言え、ボケナスが」


『なんだとっ!』


 右手で宝玉を握りしめ、左手を自分の胸に手を当て、詠唱を始めた。


『むっ! 何だその呪文は……!!』


 リリーから継承したスキルの中に、とあるワードを見つけた。

 全ての始まりでもあり、この悲劇の原因でもあるひとつの魔法……。


 これで何が起こるかは分からないけど、やらず負けよりはマシだ。

 もうどうにでもなっちまえ、クソッタレが!



「summon!!」



 本来は別世界にターゲットを定めて使うことで、媒介の価値に適した生物を召喚する魔法らしい。


 だが、今やったのは「封印された魔王の力と自分の魂」を対価に「自分を召喚」だ。


 これで、私が魂奪われただけで終わったらそれまでの話。

 もしスキル暴走でこのクソッタレどもを巻き込んで島ごと吹っ飛んでくれるなら、それもそれで良し!


 そして私は暗闇に飲み込まれた。



 次に気づくと、同じ場所に立っていた。


 右手にあった魔王の力を封印した宝玉は消滅しているので、不発ではないようだ。

 自分の手足を見てみたが、特に外見的な変化は見られない。


「つまんねぇな……」


『ふははっ、ははははははは!! 驚かせおってっ!! あれだけ大見得を切っておいて、期待外れにも程があるわ!』


 私の周りを数え切れないほど大量の魔物が囲んでいる。


『だが、よくも私の力を……許さぬぞ……。もう余興には飽きた。お前達、その小娘を好きに喰らうがよい』


 魔王が命令を下すと、一斉に魔物達が襲って……来ない。


『……どうした?』


 魔物達が魔王と私を交互に見ながら、震えている。


『こ、攻撃……出来ません……』

『攻撃しようにも、そういう考えに至らないのですっ!!』


『なんだとっ!?』


 魔物が私を攻撃出来ないのは、私は魔物に対して上位の存在であるという事。

 魔物達にとって上位の存在とはつまり、魔王の事……。


 私が、魔王と同じ存在……?


 まさか……。

 自分の右手をまじまじと見つめて、それから手を伸ばして魔法を唱えてみた。


「闇の炎よ……」


 放たれた漆黒の炎が、目の前の魔王を包んだ。


『ガアアアアアアアアアァァァッッ!!!』


 なるほど、そういう事か……。

 summonは召喚魔法などではなく、呼び出したい相手を「対価を支払って、任意の場所に再構成する魔法」なのだ。


 私の価値を遥かに上回る対価を支払って再構成したのだから、そのオーバー分が能力として追加されていると考えられる。

 つまり、今の私は魔導士ラムダであり、妖精リリーであり、魔王でもある。


『貴様ァ! おのれおのれおのれえええっ!! よくも私の力をォォォヲヲッッ!』


 魔王……いや、見た目だけ魔王だった残りカスが燃えながら飛びかかってきたが、右手一本で軽く受け止めた。

 こんな弱っちい奴に私は苦戦していたのか……。


「冷気よ、魂まで凍れ!」


 先程まで燃えていた残りカスが、そのまま巨大な氷像になった。


「くたばれ、このクソ野郎……!」


 リリー……行くよ?

 

 私は右手で握り拳を作り、魔法の詠唱を完了させた。



『「グラヴィティ!!」』



 拳に漆黒のオーラをまといながら氷像を殴りつけると、氷の欠片がキラキラと輝きながら飛散していった。



……

………



~~



「かくして私は新たな魔王として残った魔物達を統率し、プライア国を支配しましたとさ、めでたしめでたし」


 魔王ラムダが長い長い話を語り終わった……。


『あのさー?』


 エクレールが微妙に不機嫌な顔で魔王の前まで飛んでいった。


「なんだい? 質問かな?」


『長っっっっいよ!!! キミ、もうちょっと聞き手の事を考えたらっ!?』


 まあ、それは全くもって同意見だ。


「いやいや、そこの無関係なお嬢さんにこんな長くて暗い話は可哀想だと思ってな。その辺を考慮して眠らせてあげたのだから、その配慮に免じて許しておくれよ」


 最初と同じく、作り笑顔のまま接してくる魔王。

 しかし、何だか想像していた魔王とは随分と雰囲気が違うな……。


 戦闘意欲が薄れていく最中、ラピスがゆっくりとラムダに近づいて行った。


『ラムダさん……』


「やあ創造神ラフィート様、貴女まで私に質問かな?」


『もうこんな事、やめませんか?』


「っ!!」


 先程まで違って、怒りの表情でラピスを睨み付けるラムダ。


「そういえばアンタは人様の心が読めるんだったな! じゃあ私の狙いも気づいてるワケだ?」


『……はい』


 ラピスは辛そうに返事をした。


「じゃあどうする? 今すぐ私をぶっ殺して、元の世界に魂を強制送還するのか? 女神様が人間のために殺生を? 面白いじゃないか、やれるもんならやってみろよ!!」


『それは……出来ません……。でも、こんな事……リリーさんは絶対望んでいません! 彼女は貴女の幸せだけを……!』


「アンタにリリーの何が分かるんだよ! 本当に困ってた時に見殺しにしたくせに、偉そうな事を言うんじゃねえっ!!!」


 ラムダはそう言うと、そのままラピスを突き飛ばした。


「きゃぅっ」

「ラピスっ!!」


 慌てて皆で駆け寄り、抱き起こす。


「てめぇ、女だと思って、こっちが下手に出てりゃ良い気になりやがって……!」


 フォスタが殴りかかろうとして飛びかかったが……


「ボトム」


「ぐああああぁああっ!!」


 地面に叩きつけられて、身動きが取れなくなってしまった。


「それでは、これから私の計画を、渡り人の勇者諸君にお伝えしよう!」


 ラムダは不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。


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