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084:リリーとの約束

 ご機嫌で鼻歌まで歌ってしまっているリリー。


『渡り人の監視役が命じられた時は本気で最悪だと思いましたけど、今は幸福の絶頂ですよ~♪』


 渡り人というのは、どうやら私のように召喚された人の事らしい。


「んで、なんで私達が勝ったと言い切れるんだ?」


 私が尋ねると、リリーは自慢げにフフンッと言いながら笑顔になった。


『この世界に魔法が使える人間は居ませんし、今までやってきた人間達で魔法を使えた者なんて一人も居ないのです。間違いなくラムダさんは、この世界における最強の人間、つまり無敵ですっ!』


「だったら、同条件で他の三人も魔法が使えるんじゃないのか?」


 ………。


『その時はその時ですっ!』


 この子がパートナーで本当に大丈夫なのだろうか。



「それにしても、島の真ん中に城と城下町か。よく考えると不思議な国だなー」


 私とリリーは一緒に街に繰り出したのだが、この国はなんと城1つ街1つで「国家」らしい。

 私の元々居た世界にも小さな国々は多数あったけど、こんな小さな国は初めて見た。


「周辺国との国交はどうなってるんだろうな?」


『回りの海流が荒くて他の国との行き来が難しいらしいですが、海の下にトンネルを掘る計画はあるみたいですね』


「海の下にトンネル……って、この世界の人間は魔法が使えないって言ってたよな? どう考えても無理だろう」


『私もそう思います』


 だが、例えこの世界の人間が魔法を使えないのだとしても、別の世界から人を召喚できたり、妖精と人間が仲良く交流していたりと、私の元居た世界よりも優れている点はたくさんあるというのに、勿体ない。


 未来のために投資すればいくらでも人々の暮らしは良くなるだろうに、どうしてお偉いさん達がデスゲームに没頭してしまったのか、全く理解できない。


 そんな事を話しながら街を歩いているが……さっきから変な視線を感じる。


「なんでジロジロ見られてるんだろう」


『アレは哀れみの目ですよ……。今までプライア国で召喚されて生き残った戦士は一人も居ませんから』


 なるほどねぇ。


「私の居た世界だと、リリーが街中を飛んだらジロジロ見られるどころか国中大騒ぎだろうなー」


 私がそう言うと、リリーは不思議そうに首を傾げた。


『どうしてですか?』


「人間と妖精の仲がすげー悪いんだよ。勇者プレクス……えーっと、私の世界を救った勇者様が子供の頃にひょんなことから妖精の国を救ったことがあってな。それで勇者一行だけは妖精国と自由に出入りは出来たんだけど」


『へぇ~、世界によって事情が色々あるんですねぇ』


 リリーは感心……というか、好奇心でいっぱいな表情になる。


『他に何かこの世界との違いは?』


「あー……」


 これはしばらく解放してもらえそうにないな。



『すごいすごいすごーい! ラムダの世界には世界征服を企む魔王が居て、モンスターが居て、勇者が居る! そんなエキサイティングな日々を過ごしていたのですねっ!!』


 いやはや、リリーの目がキラキラ輝いている。


「いや、どう考えても平和なのが一番だろう。それに魔王は私達が倒したからなぁ……」


 そう言いながら、鞄の中からドス黒い色のモヤモヤが入った宝玉を取り出した。

 これ、封印された魔王です……。


 魔王の封印に成功し、勇者や仲間達とともに崩れ落ちる城から脱出しながら「うへへへ、これで私も歴史に名を残す英雄だぜぇ~」とか思っていたところ、いきなり暗闇に飲み込まれてデスゲームに参加しろとか言われてしまったのだ。


『まさかラムダさんが魔王を倒した勇者様御一行の大魔法使い様だなんて、ますます勝利が見えてきましたよっ!』


「大魔法使いねぇ……」


 残念ながら、私は魔王を封印する事に成功しただけで、自身の戦闘能力はメンバー最弱だったのだけどね。

 勇者の剣なんて、天にかざすだけで敵全体攻撃&使い放題&私の全魔力を注いだ爆発魔法よりも高威力という、馬鹿馬鹿しくなるような強さだった。


 だが、しばらく考え事をしていたリリーが決心したような顔で、私の正面に飛んできた。


『もしラムダが優勝したら、私も一緒に元の世界へ連れていってください!』


 ……は?


「お前、何言ってんの? そもそも妖精を連れて行く事なんて出来るの???」


『優勝者は、妖精王様にひとつだけ願いが叶えてもらえるのですよ! 是非とも、私を連れて行く事を望んで頂ければと!!』


 リリーの言葉を聞いて、少し考える……


「今までの優勝者って、何を叶えてもらったんだ?」


『うっ! ……金銀財宝や、凄い切れ味の剣を願ったらしいですけど』


 まあ、デスゲームに勝ち抜くような奴らなのだから、それなりの報酬は望むよなぁ。


『じー……』

 うーーむ……。


『じーーーー……』

 ………。


『じいいいいいいいいいぃぃぃぃぃい~~ぃぃ~~~……』

「くっそ! 分かったよ! 連れて行けばいいんだろっ!!」


『本当ですかっ!?』


 本当ですかじゃねーよ、この野郎。


「はいはい、本当ですよ」


『約束ですよっ!?』


「はいはい、約束約束」


『絶対に絶対にぜっt…!』

「うるせえええええええっ!!!」


 改めて思う。


 この子がパートナーで本当に大丈夫なのだろうか……?


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