083:リリーとの出会い
目の前の男は、玉座の上から私を見下ろしていた。
「ここはどこだ……?」
私が声をかけると、すぐに口を開いた。
「ここはプライアの国。そして私は国王アルフ。お前は我が国の戦士として呼ばれたのだ」
「戦士……?」
この私が戦士とは、まったくもって意味が分からない。
国王の説明を聞いたところ、どうやら「自分と同じように呼ばれた奴が他に三人居て、元の国に戻りたければ全員を倒せ」だそうで、いきなり人をさらっておいてデスゲームをやれとは、無茶苦茶にも程がある。
「今回は我が国のコロシアムが決闘の会場でな。これは、連敗が続いている我が国の名誉に関わる問題なのだ」
「………」
無茶苦茶な言い分を言い放つ国王を無言で睨んでいると、何かが頭の近くに飛んできた。
『うーん、ずいぶんと無口な方ですねー』
「レイアっ!?」
『誰ですかそれ……。私は妖精リリー、アナタの監視……じゃなくて、パートナーです』
人違いだったか……というか小さい、とてつもなく小さい。
背丈が、手のひらに乗るくらいの大きさしかない。
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『なるほど、幼馴染みの方と私がそっくりだったのですね。それはさぞ綺麗な方だったのでしょう』
「ああ、驚かせてすまなかった。確かにレイアは美し……ん? 今、何かおかしくなかったか?」
リリーは「いいえ、別におかしくありませんよ?」などと言いながら微笑んでいる。
なんだか釈然としないなぁ。
「名乗るのが遅れてしまったな。私の名前はラムダだ」
『うんうん、ラムダさん、ラムダさん。よし、覚えましたっ』
リリーは頭を縦にコクコクと振った。
「だが、どうして君は私に付いてくるんだ?」
『さっきパートナーって言いましたよね? そういう決まりなのですよ』
リリーが溜息を吐きながら答えた。
「決まりなのは分かったが、何故そんな溜息を……?」
『召喚された戦士が死ぬと、私も死んでしまいますから』
「なんだとっ!? それはどういう意味だっ!」
『言葉通りですよ。お偉いさん達が暇潰しのために私を生け贄にラムダさんを呼び出した。助かるにはラムダさんに生還してもらわなければならない、ただそれだけです』
私だけでなく、この妖精の娘まで生け贄にするとは、この世界の連中は一体どれだけ下劣なのだ。
いや、それを言うと自分の元居た世界だって……。
「全く、どの世界もお偉いさんは共通してクソッタレばかりだ」
『随分と私怨がこもったお言葉ですね……』
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異世界生活二日目。
リリーと一緒に、城の中にある訓練場へやってきた。
『決闘まであと三十日! しっかりを準備をすることが大切ですっ』
「ずいぶんとやる気だなー」
『命がかかってますからっ!』
口調は丁寧だが、その目に宿る闘志はまるで戦士のようだ。
「それにしても、どうしてそんなに先なんだろうな? 呼んですぐ戦わせても良いだろうに」
『言われてみれば確かに……。妖精との連携も大切になってくるので、その準備期間なのかもしれませんね』
……あれ?
「そういえば、このまま私が試合を拒否して逃げたらどうなるんだ?」
『不戦敗扱いになって、私は消滅。ラムダさんは死んじゃいますね』
「逃げ道までしっかり塞ぐとは、まさに鬼畜の所行だな……」
二人で顔を見合わせて溜息を吐いた。
『ところで、ラムダさんはどんな特技があるのですか?』
「特技ねぇ。この世界で出来るかは知らんが……」
剣術訓練用の巻き藁に向かって手をかざし、オーソドックスな炎魔法を使ってみた。
「炎の槍よ、敵を貫け!!」
チュドーンッ!
巻き藁が丸太ごと吹き飛んだ。
「おー、この世界はマナの量が凄いなー。こんな威力になっちゃうのかー」
そう言いながら振り返ると……
「……… ・◇・ ………」
リリーの顔が、豆鉄砲くらったボウルオウルみたいになってる!!
「お、おいっ。どうしたっ!?」
『く、クルッポー……じゃなくてっ!!』
と思ったら、今度はブルブルと震えだした。
『アナタいったい何者ですかっ! なんで人間が魔法使ってるんですかぁっ!!』
「???」
一体、リリーは何を言っているんだ?
「まれに使えない無能者は居るけど、普通は使えるだろう?」
私の返事を聞いたリリーは、そのまま口をパクパクしている。
『ふっ…ふふっ……ふふふっ!』
突然リリーが気持ち悪い笑みを浮かべた。
『この勝負、勝ったどおおおおおぉぉぉぉ!!!』
今回、名前の出た「ボウルオウル」は、だるぉさん作『無能でも異能が使えたら問題ないだろ?』からお借りしました。
http://ncode.syosetu.com/n2039dw/
クルッポー




