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082:魔王は語る

「初めまして。私の名はラムダ。君たちが魔王と呼んでいる者だ」


 そう言うと目の前の相手は不敵な笑みを浮かべた。


『ま……魔王って奴は、玉座で脚を組みながら偉そうにしてたり、四天王を送り込んできたりするもんだと思ってたけど自ら勇者をお迎えとは。ウチの世界の魔王は随分と慈悲深いんだね?』


 エクレールが警戒したまま挑発的な言葉を投げかけた。


「私は好物から先に食べる派でね。あまり待つのは好きじゃないんだ」


 ラムダは、作り笑顔のまま手をこちらに向けてきた。


『っ!?』


「deepsleep...」


 ドサッ……


 魔王が不思議な呪文を唱えると、チアがその場に倒れた。


「おい! チアっ!! てめぇ、よくも……」


 フォスタがチアを抱き上げながら魔王を睨み付ける。


「別に殺しちゃいないさ。ちょっと眠ってもらっただけさ」


 あっけらかんと言い放つと、歩いてこちらに近づいて来た。


「それに、ここから先の話は部外者に聞かせるのは酷だと思うからね」


 こいつは何を言っている……?


「さっきの子を除けば、今ここに居るのは妖精が3匹、渡り人が4人、そして……久しぶりじゃないか、女神様」


 作り笑顔だった表情が突然冷淡な顔に変わり、ラピスを鋭い目で見つめる魔王。


『……6年ぶりですね。本来ならば私一人で全て解決しなければならないのですが。この世界のことわりでは難しくて、こんなにも時間が経ってしまいました』


 そう言うとラピスは溜息を吐いた。


「お前達は何を言っている? 女神とは一体……。それに、渡り人が4人って……」


 困惑しながら言葉を投げかけたが、魔王は鼻で笑った。


「私も渡り人だからな。厳密には、渡り人の……生き残りさ」


『「生き残り……?」』


 魔王の発言に対し、自分とエクレールの呟きが重なった。



………

……



 この世界はとても退屈だった。


 何故か始めから国境が決められていて、それを広げようと思う者は一人も居なかった。

 誰も他国を侵略しようと思わなかったのか、行動できないように何者かが仕組んでいるのか……。


 庶民はそれでも幸せに暮らしていたが、各国の王族や貴族達はそんな代わり映えのない毎日に飽き飽きしていた。


 しかしある時、妖精族が『summon』という不思議な魔法を発見した。

 その魔法を唱えると虫や魚などの小型の生物を呼び出す事が出来たため、初めは食料生産用の魔法かと思われていたのだが、貢ぎ物を捧げながら用いることで効果が増大する事が判明。


 例えば、樹齢百年の樹木を媒介にすると大型の動物が召喚されたり、宝石を媒介にすれば滅多に見られない貴重な昆虫を呼び出すことも出来たりと、その賭博的な効果が妖精達の心を鷲掴みにするのにそう時間はかからなかった。


 妖精達も人間と同じように退屈な日常に飽き飽きしていたのだろう。

 研究に没頭する様は、それはもう凄まじかった。


 そして、そんな行き過ぎた研究の果てに、貢ぎ物として『自らの生涯』をかけた妖精が現れた。

 妖精が自らの生涯を対価として捧げた際、召喚されたのは「人間」だった。


 当初は言語が通じない、どこから来たのかも分からないなど問題続きだったが、意思疎通の為に国交のあった人間族の協力を得ながら翻訳技術も高めて行くことに成功。

 すると、summonで呼び出された対象者は、この世界の者とはリソース構造が全く違う、別世界からやってきた人間だと判明した。


『別の世界から人間を呼び出すことが出来たからと言って、何だというのか?』


『その為に妖精の生涯を捧げるなど、馬鹿げている!』


 妖精族の元老院からはそんな反対意見も出てきたが、妖精族のおさである大妖精は、各国の国王へひとつの提案をした。


『呼び出した者同士を競わせてみませんか?』


 これが全てのはじまりだった。



 レヴィート、ライン、ワラント、プライアの4つの国に妖精が一匹ずつ派遣されると、まずはそれぞれの国が4人の戦士を召喚した。


「元の世界に帰りたかったら自分以外の相手を倒せ。もし最後まで生き残ることが出来れば褒美を授けよう」


 いきなり人攫いにあったと思いきや、そんな事を言われるのだから、異世界の戦士達は皆、憤慨した。

 だが、半強制的に戦いの場に放り込まれた戦士達は、結局嫌々ながら戦わざるを得なかった。


 そして、他の戦士達を倒して勝ち残った一人には褒美を授け、約束通り元の世界に返してやった。

 このデスゲームを隠蔽するために、全ての記憶を消してから……。



 そんな狂気のゲームが繰り返される中、プライア国にひとりの戦士が召喚された。

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