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079:チアの挑戦!

 ついに魔王の城へ行くための有力な情報が手に入り、毎日みんな忙しそうにしています。

 渡り人カトリさん、もとい、おにーちゃんのお世話係として派遣された私も、ささやかではありますが頑張っています。


『あれー? チアちゃん、何やってるの?』


「皆さんの荷物の整頓や、汚れた衣服の洗濯をしようかと思いまして。そういえば、エクレールさんは留守番なのですね」


『うん。ちょっと羽が疲れちゃってねぇ。カトリには一人で行ってもらったんだよ』


 そう言いながらうつ伏せになって寝っ転がってしまいました。

 妖精さんは背中に羽があるから、仰向けで寝られなくて大変そうです。


「回復魔法で疲れが取れないのですか?」


『妖精はリソースの結晶みたいなものだからね。人間と違って肉体が無いから、回復魔法は効かないんだ。回復魔法はあくまで体の治癒力を高めるものだからねぇ』


 うーん、よく分かりませんが、やっぱり妖精さんは大変そうです。


『それにしても、キミもなかなかやるねぇ』


「?」


『シルフィが、たまのこしだよー? って言うや否や、ホントに王子様を射止めちゃうんだもの』


「っ!?」


『んで、どうなんだい? 王子様とはどこまで行ったのかねチミ?』


 チミって何だろう……。


「ど、どこまで、とは……」


『男女関係の進展度に決まってるじゃないか。ボクとしては、跡継ぎをつくっちゃうトコまで行ってたら最高なんだけどね』


 キャーーーーーー!

 この妖精さん、可愛い顔してなんてコトを!


「そそそそ、そこまで行ってません! さすがに婚前で、そんなことっ! ダメですっ!」


『……え、マジで?』


 私の言葉を聞いて、エクレールさんがすごくガッカリした顔にっ!?


『この半年間、同じ宿に二人……まあシルフィが居るけど、それは置いといて。二人で寝泊まりしてんのに、まさかの生殺しかい? フォスタが不憫ふびんすぎてボク、次に彼と会った時にどんな顔をすれば良いのか、分からないよ』


 えええええーっ!?


「そ、そんなコト言われても……」


 バサッ!


 エクレールさんの言葉に動揺してしまったため、おにーちゃんの荷物を床に落としてしまった。


『おや?』


 エクレールさんが何かに気づいて、荷物にボフッと飛び込んだ。

 その手に持っているものは……?


『うへへへ~、イイコトを思いついちゃったよっ』


 な、何だか笑い方が危険な感じですっ。


『チアちゃん、仕事着は持ってきてる?』


「あ、はい。粗相があるといけないので、ライン公国の侍女としてお城に出入りする事もあるかと思って……」


『チアちゃん! キミ最高っ!!』


「???」


 なぜか頭を撫でられてしまいました。


『さあ、準備をしようかっ!』



~~



「ただいま~」


 宿に帰ったものの、まだ誰も戻ってきて無いようだ。


「カトリは森を探索するって言ってたっけな……。まあ、エクレールが一緒なら大丈夫か」


 ちなみにシルフィは「ひなたぼっこ、いってくるー」とか言って飛んでいってしまった。

 日焼けしたくないと言ったり、ひなたぼっこすると言ったり、アイツの一貫性の無さは正直よく分からない。



 コンコンコンッ



「あの……フォスタさん……?」



 ノックの音の後にチアの呼びかけが聞こえてきた。


「ああ、おかえりチア。……でも、なんでノックしたんだ? 気にせずに入って来いよ」


 ガチャ……とドアノブが回った音はしたけどドアは開かない。


 なんだかドアがガタガタ揺れているような……。



 はて???


「チア、どうかしt…」

 声をかけようとしたその時、バンッ!と、ドアがいきなり開かれた。


 チアは何故かメイド服を着ていた。

 そういや、チアはカトリの侍女だと言っていたっけ?

 なかなか可愛らしい服装じゃないか。


 だが、何故か頭とお尻に不思議なモノが付いている。

 デザイン的に「ネコ耳と尻尾」だろうか……。

 そういやワラント国は仮装しないと入れないんだったな。


 だが、俺は冷静を装っているものの、これは大変な事になったぞ。

 それはもう大変で、とっても大変だ。

 ああ大変大変……。


「ご…!」

「………」


「ごしゅじんさまっ!」

「っ!?」


「だーいすきっ…ニャン!」

「………」


「………にゃん」

「………」


 俺はベッドから転げ落ちた。


「大丈夫ですか、フォスタさんっ!?」


「ま、待てっ! 近づくなっ!!」


「えっ!? そ、そんなぁ……うぅ、嫌われちゃったのかなぁ」


「あ、ち、違うんだっ! そうじゃなくてっ!!」





「なるほどね、理解したよ……」


 チアを直視しないようにエクレールに向かって話す俺。


『キミのヘタレっぷりを見て、一線を越えない理由がよく分かったよ』

「うるせぇ…」


 まだチアはネコ耳メイドさんのままだ。


 何故だか知らないが、チアのこの格好を見ていると、本能が「もう気にせずやっちまえよ」とか語りかけてくる気がする。

 人類に理性という仕組みを用意してくれた神に感謝しつつも、余計な事しやがってと思ってしまったり、とても矛盾を感じている。


「フォスタさんを困らせてしまって、ごめんなさい……」


 はあああああぁぁぁ! かわいぃぃぃぃ……コホン。


「大丈夫だ。突然の事でビックリしてしまっただけさ」


「でも、こんな驚かせ方は、もう止め……」


 俺はチアの両肩に手を乗せ、首を左右に振った。


「チア……」

「フォスタさん……?」


「二人きりの時は、いつもこの格好でお願いします!」

「えええっ……いつもっ!?」


『あーーー……うん、そういう愛の形もあるよね』

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